0180 - 百の古里と書く場所
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百古里へ行ってきた。百の古里と書いて「すがり」と読む。
目的は、ここで毎月18日に開催されている「百古里十八市(すがりおはこいち)」という小さな露店イベントを覗くためだ。
住所でいうと静岡県浜松市天竜区。地元(袋井・磐田)からは、ほぼ真っ直ぐと北上すれば辿り着ける場所。分かる人向けに書くと、敷地から獅子ヶ鼻公園へ向かう道に入り(途中で獅子ヶ鼻公園へ上がる右方向には曲がらずに)北へ向けて山中の1本道をひたすら走ればOK。
ルート検索してみると、袋井市の浅羽地区にある会社住所からは約44分と出るが実際はそこまでかからない。袋井や磐田の中心街からならスムーズに走れれば30分ほどで行けるはずだ。
東京暮らしの頃は、23区内の自宅から歩いたり電車に乗ったりしつつ新宿・渋谷・六本木・有楽町・秋葉原など繁華街へ出るだけで1時間ほどかかっていた。郊外へ向けて1時間かけて移動しても、埼玉や神奈川にギリギリ入るくらい。都市部っぽさから抜けることはできなかった。
今は家から車で30分ちょっと走っただけで景色が様変わりし、大自然に囲まれた気分の良い場所へ気軽に遊びに行ける。しかも不便ではない田舎。気分転換として訪れるには素敵すぎる環境が身近にあるのはとても嬉しい。
百古里十八市は、武速神社(たけはやじんじゃ)で行われていた。
↑写真では伝わりにくいかもしれないが、中央奥には高さ40mほどもある「将軍スギ」が真っ直ぐ空に向けてそびえ立っていて圧巻だ。
小さな境内にテントが並んでいる。売られているのは、ワイン、珈琲、野菜、甘酒、お茶、工芸品、おから寿し、米菓子、手芸用品、肉まん。計10店舗ほど。ぐるりと歩いて1分もかからない規模。平日の午前中ということもあってか人の出も少なめ。その分のんびり過ごせる。
甘酒→お茶→おから寿し→珈琲→肉まんといった順番で、おいしいものを次々といただきつつ、各店舗の方々とも自然と世間話に花が咲く。
ちなみに、おから寿しを販売している「淡竹屋(はちくや)」のお嬢さん麻里さんとは、従姉妹を通じて知り合い、仲良くさせてもらっている。その麻里さんがいたので声をかけたところ、一緒に話していたのは、以前から行ってみたかった蕎麦屋「百古里庵」の女将さん。
思いがけずご挨拶させていただく機会に恵まれて驚いたのも束の間、名刺交換したところ、両面印刷の裏面には、これまた行ってみたいと思っていた、トンネル再利用による100%天然環境でワインを保存できる「浜松ワインセラー」が記載されていて更にビックリ。聞けば、夫婦で営んでいるとのこと。
意外なところで情報も人も縁も、どんどん繋がっていくものである。本当にありがたい。
出店していた方々のみならず、珈琲の注文待ちをしている途中では「ここ並んでますか?」と尋ねられたことをきっかけに、近所のフリースクールに通う子ともいろいろ話ができた。元々は県内の他地域に住んでいたのだが、自分がフリースクールに通うことになり家族ごと移住をしてきたのだそうだ。百古里の環境がとても好きとのこと。どんなところが好きなの?と訊いてみたところ「不便でもなく便利すぎることもないところ」と。その気持ち、すごく解るなー。
しばらくしたら、小さな娘を連れた従姉妹も車で登場。淡竹屋の麻里さんを含めて一緒に百古里庵でランチすることになった。
武速神社からは歩いて10分ちょっと。車なら1〜2分の距離にある。年期を感じる風情ある建物が出迎えてくれた。
古民家ほぼそのままな店内。一画には囲炉裏も見える。床が畳で広めな空間の、テーブル&座椅子の席に座ると、芝生の広がる庭が見える。なんとも素晴らしい田舎シチュエーション。
初めて来た客はノーマルな「せいろ」に天ぷらを併せて注文することが多いそうだが、従姉妹が全力でオススメする期間限定メニューの海苔蕎麦を選んでみた。
しばらくして運ばれてきた器の中を見て思わず「おお!」と声が出た。
蕎麦が全く見えないほど、表面を埋め尽くす海苔。たまらない。
つゆに沈む蕎麦を箸ですくい、口に運ぶたびに、海苔の香りが心地よく広がる。こりゃたまらない。
蕎麦は2種類あり、太めな「田舎そば」にしてみたのだが(もう一方は一般的な蕎麦に近い「二八」)、蕎麦自体の香りも良く、海苔との相性も抜群で、こりゃこりゃたまらない。
食べ終わった後もお茶をいただきつつ歓談してのんびりと過ごしたのだが、時計を見ても思いのほか時間は経っていない。体感としては半日以上ゆっくりしたような気分でいたが、実際の滞在はほんの数時間。
「百古里には、独特の時間が流れているんですよ」
淡竹屋の麻里さんがぽそっと言った。
朝、袋井を出発して百古里に到着したのは9時30分頃。十八市と蕎麦を堪能し、再び袋井に帰ってきたのが14時ちょっと前。そこからも、家のことや仕事のこと、友人知人とのやり取りなど、それはそれはいろんなことができた。非日常と日常を見事に両立できた、とても気分の良い1日。
百古里。また1つ新たにお気に入りな場所ができて嬉しい。