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0106 - 年配層が選ぶお店
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地元(静岡県西部地区)の商業施設事情は平成の時代に大きく変容してきた。
1990年代後半から『広い敷地、広い駐車場、横に長く大きい平屋タイプの商業施設』が増えた。食料品を扱う『マックスバリュ』を中心として、靴とか服とか本とかスポーツ用品などのお店が駐車場を囲うように横並びになっている『平面』な造り。駐車場がとにかく広いので満車で入れないということが滅多に無いこともあり、車社会な土地柄との相性も良く「ココに行けば生活に必要なものが揃っていて便利だぞ」とばかりに地元民で賑わった。
2000年代になってからは浜松に『イオン』が立て続けに完成。更に、磐田に『ららぽーと』がオープンしたり、浜北エリアには『サンストリート』や『プレ葉ウォーク』が並び、静岡県西部は日本でも屈指の『立体』な造りの大型商業施設密集エリアと化している。フードコート、アミューズメントスペース、映画館など、買い物以外の施設も充実していて「ココに行けば家族でゆっくり過ごせて楽しいぞ」とばかりに地元民で賑わっている。
余談:ららぽーと磐田のトイレ。戦隊ヒーロー感ある色の並びなので、できれば真ん中を『レッド』にしてほしい
このように、地元には平面的なものから立体的なものまで大型の商業施設が増えた。自分も映画や大型書店を目的に頻繁に大型商業施設を訪れている。ゆったりとしたスペース&幅広い品揃えを楽しめるのは嬉しい限り。学生時代には地元での日常の中でここまでの広さと深さでエンタメに触れることができなかったので感慨深い。
ただ、良いことばかりではない。建物が大きな分、目的があって買い物するだけでも歩く距離は相当なもの。案の定、これが年配層にはしんどいようだ。
祖父や祖母と一緒にららぽーとへ行くことがあっても、駐車場からフロアへ入るなり「私はベンチで待ってるから買い物しておいで」と、初っ端から歩き回ることを拒んでしまう。最近、地元の自治会長さんなど70歳オーバーな人と話す機会が増えているが、やはり口を揃えて「ららぽーとやイオンは疲れるから行かない」と言う。
じゃあ、そんな年配層が好んで買い物に行く場所ってどこだろうと訊いてみると、億劫にならずに行けるのは『コンビニ』だそうで。
たしかにコンビニへ行くと年配層が買い物している姿をよく見かける。駐車場に車を停めたら目の前にお店があり、生活に必要なものが手に入る便利さの最たるカタチ。最近では(地元ならではの特色かもしれないが)野菜が売っていたり、プチ花屋のようなコーナーが設けられている店舗もある。仏壇のある昔ながらな家が多い土地柄なので、ロウソクや線香の品揃えが良いコンビニも見受けられる。目視できる範囲での体感としては惣菜やお酒を買っている率も高い印象。しっかり日常に溶け込んでいる。
昔はミニストップくらいにしか無かった『イートインコーナー』が、最近ではコンビニにあって当たり前になってきた。ちなみに、東京(特にオフィス街)では常に賑わっているが、地元では利用している人をほとんど見かけない。代わりに、駐車場に停めた車の中で食事している光景をよく見かける。場所によっては昼どき12時台には食事している車で駐車場が全て埋まっていることもある。そりゃプライベート空間のほうが落ち着くよね。さすが車社会。
このイートインコーナー。最近ではスーパーにも設置されてる店舗が増えており、コンビニとは打って変わって『年配層の憩いの場』として賑わっていたりする。行けば誰かしら顔見知りがいて、お菓子や飲み物を口にしながら世間話に花を咲かせる場となっている模様。とても良いと思う。
というわけで、現在の地元における年配層の動きを簡単にまとめると
・必要な物を買いに行く「楽=便利」を求めるならコンビニへ
・顔見知りと会って話をしたい「楽=楽しい」を求めるならスーパーへ
この先、世の中的には食料品や日用品なども『買いに行く』ではなく『宅配してもらう』流れは増えていくだろうが、地方の年配層がネットを使って注文してという流れが浸透するまでは(下手すると世代がガッツリ変わるまで)まだ時間を要するだろう。地元で年配層をターゲットにした商売をしたい場合『楽』がキーワードになるのではなかろうか。