0256 - 裾野を広げる
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先日「パクリ経済」という本を読んだ。
書籍の内容は、上記Amazon紹介ページにあるこの文言の通り。
「コピーは創造性を殺す」「法律によるコピー規制がイノベーションには欠かせない」―通常はこう考えられている。しかし、コピーは絶対に悪なのだろうか?本書は、創造性がコピーによってむしろ活性化する場合があることを、ファッション、レストラン、アメフト、コメディアン、フォント、データベース産業など米国で一般的にコピーが合法とされている産業の豊富なケーススタディで明らかにする。
例えば、ファッションは、布記事のデザインなど「平面」なものには著作権が認められる。なのでロゴデザインなどは紛らわしければ訴えられる。しかし服のカタチなど「立体」には著作権は認められない。なのでどこかのブランドが出した服がヒットした際に、他のブランドが同様の「カタチの」服を低価格で出したとしても止めることはできない。しかし、低価格帯のブランドが真似ることで一般に広くブーム(流行り廃りの波)が起こり、人々が新しい服を求める「サイクル」が生まれて、ファッション業界全体の経済が活性化する。
料理のレシピも著作権では保護されない。保護されないからこそ自由に料理を作る(生み出す)ことが可能で、新たな調理方法や素材の活かし方が生まれ、人々の「食べる楽しみ」が広がっていく。
メディアのデジタル化が進む前、カセットやビデオなどアナログテープなものはコピーがある程度許容されていた。友達の間で貸し借りする(している)ことが公然の事実として語られても特に問題視されることは無かった。これによって音楽や映画を楽しむ人口は確実に広がっていたはずだ。
大事なことは、お客さんとなる対象の「裾野を広げる」こと。商売としてやる場合に利益は追求して当然だが、コア客の声だけ聞いて目先の利益だけ求めると、長期的にはその商品やジャンルの規模を先細りさせてしまう。
著作権をガチガチに固めれば、その固めた側は一時的に利益を得られるだろう。しかし、新規参入の壁が高くなればなるほどジャンル自体が衰退してしまう。コピーは必ずしも悪でなく、むしろ長期的なジャンルの発展には欠かせない要素だということを、この「パクリ経済」は改めて強く感じさせてくれる本だった。
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