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#001 思い出した話~スミさん

前職の先輩に、50歳を目前に控えた、スミさん、と云う職員がいた。

スミ、さん。カタカナで書いてみた。

角・・・これが一番当てはまる、例:角淳一(関西人なら知っているハズ)、角盈男(おじさんたちが知っている元野球選手)etc...。

墨、炭、寿美、須見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

そのスミさんは、鷲見、と書く。

画数が多い、全部で30画ぐらいある。

でも、スミ、の中ではカッコいい、スミ、だと思う。

漢字のカッコいい、鷲見さん。

でも、仕事はなかなかおソマツだった。

トイレが故障していた時、総務部のスミさんに報告し、修繕を頼んだことがある。

2ヶ月経っても修繕はされないまま。

2ヶ月の間、報告した私は、修繕を見届けられないまま、退職日を迎えた。

風のウワサでは、スミさんも、その後、退職したらしい。

だから、まだ、そのトイレは、きっと、壊れたままに違いない。

貴乃花親方ぐらい、ゆっくり歩く、スミさんを、よく目にした。

頼んだ仕事を完了した報告が一向にこない、と後輩がよく嘆いていた。

その後輩が、メモに、スミさんへ、と、カタカナ、でなぐり書きしていたことがある。

たまたま、上司が、そのメモを見つけ、後輩を叱ったらしい。

先輩の名前を、丁寧に、ちゃんと漢字で書きなさい、と。

カッコいい、30画を、ちゃんと書かないとダメだ、と。

後輩がぶつぶつ文句を言っていたのを覚えている。

そんなスミさんも含めて、出張があったとき。

出張先の先方との会食を終えて、ようやく解放された午後10時ごろだった。

達成感にひたる上司のヒトコトで、2軒目のBarへ行った。

カウンターに一列に座って、私の左にスミさんがいた。

カウンターに、小さなお皿に入った、しょっぱいおかき、が出てきた。

とても、しょっぱい。

みんなが、しょっぱい、しょっぱい、と言いながら、手に取っていく。

私に番が回る、たしかに、しょっぱい。

しょっぱい、おかきを、スミさんに勧めた。

中年のスミさんは、いま、塩分を控えてるんや、といって断った。

中年に、塩分過多は禁物らしい。

そこに、カクテルを振り終えたバーテンダーがヒトコト・・・。

ソルティ・ドッグ、でございます。

スミさん、の目の前に、置かれる、ソルティ・ドッグ。

ショートグラスのふちには、びっちりと、スノースタイル、で彩られた、ソルティ・ドッグ。

美味しそうに、グレープフルーツの酸味、と、食塩のハーモニーを味わう、スミさん。

ブルドッグ、のような頬をした、スミさん。

私の記憶は、ここでプツンっ、と切れて、終わり。

私は何を飲んだのだっけ?

自分の飲んだ、お酒を、忘れさせた、左のソルティ・ドッグ。


おやすみ、世界。

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