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フランスで女神様に出会った話

私が渡仏して半年ぐらい経って、フランスの行政機関への提出書類の作成を依頼した在仏日本人の方がいました。

私は原本になる書類を持って、その方の元へ自転車で向かっていました。
当時は行政手続きを手探りで進めていて、セキュの手続きもうまく行かず、精神的に不安と焦りが常にある状態でした。

その頃はパリで自転車に乗り始めて2ヶ月ぐらいだったでしょうか。
ここからは私のルーズさが出てお恥ずかしい話なのですが…
約束の時間ぎりぎりになってしまい、焦って信号無視をして進むと、そこには張り込みをしている警察官達と、同じように信号無視をして呼び止められているパリの自転車ユーザー達が…!

しまった…と思った時にはもう遅く、例に漏れず私も呼び止められて罰金90€を払うことに。
信号無視してごめんなさい…でも90€はかなり痛い…
フランスの警察は容赦ありません。(何より交通違反をした私が悪いのですが…)
私は大人しく警察官の指示にしたがっていましたが、他の違反者達は口々に抗議していて、フランス根性だなあと眺めていました。

ショックを受けつつ罰金を払い警察官に解放されて呆然と向かっている途中、同じく車道を走る車から注意のクラクションを鳴らされ、窓から大声で怒鳴られ。
私の運転が下手なのを反省…
初夏でじんわり暑い中、冷や汗をかきながら踏んだり蹴ったりだと荒んだ悲しい気持ちでやっとその方の元へたどりつきました。

初めてお会いしたその方は、お仕事柄とても事務的なのかなと勝手にイメージして緊張していたのですが、とても和やかで可愛らしい方で、「はじめまして〜」とにこにこ挨拶してくださり、アパートのロビーに座って世間話や私の渡仏のきっかけなど色々な質問をして話を聞いてくださいました。
穏やかで優しい雰囲気のその方と話していると、荒んだ気持ちも少し落ち着いていました。
依頼の書類を預けた帰り際、「今日は暑いので、もし良かったらお水をどうぞ」と言われて渡された紙袋を見ると、中にはお水のボトルと、それ以上にお菓子が沢山入っていました。
恐縮しつつお礼を言って有難く受け取って帰りました。
行きの荒んだ心が嘘のように、帰りは信号もしっかり守りながら、穏やかな気持ちで戻りました。
カラカラに乾いた、生命体のない砂漠に突然現れたオアシスのような、まさにフランスサバイバル生活で出会った女神様でした。

そして後日出来上がった書類を受け取りに行く時、お返しにとボンマルシェで買ったクッキーを持って行きました。
別れ際にお渡しすると、なんと女神様もクッキーを準備されていて、まさかのクッキー交換。お返しのはずだったのに!

それからも数回、書類作成の依頼をすることがあり、そのメールのやりとりやお会いしてお話する度に、綺麗な優しい言葉をかけてくれたり、時には励ましてくれたりと、本当に清らかな方で毎回感動します。

あくまで私の主観ですがフランスでは良くも悪くも人間味が溢れているなと思います。
他人から嫌な気持ちにさせられることも多々ありますが、反対に素晴らしい人間性に触れることもあって、私がフランスが好きな理由の一つです。
フランスでも日本でも、今までのそんな素敵な出会いをこのnoteに書いていけたらなと思います。

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