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(11)情報リテラシー論レポート〜苦戦する紙媒体と電子書籍〜
ご機嫌いかがですか。
とうとう雪も降りはじめた最近、冬本番と言わんばかりにぐんぐん気温も下がりつつあり底冷えする毎日に気が滅入ります。
しかしこんな冬の夜長だからこそスマホは少し休ませて、たまにはゆったりとした読書時間を楽しむのもまた乙なものではないでしょうか。
さて本というものは、文字ないし絵が印刷された紙の集合体が一つの辺で綴じられたもの といった質量のある一冊を想像する人が殆どでしょう。
しかし近年では、たくさんの書籍が電子化を果たし、スマホやタブレット、専用のガジェットで読書を嗜む人も増えてきているようです。
現在や今後の動向はどのようなものになっていくのでしょうか。
そもそも
紙媒体とは?
紙媒体は、情報が紙に印刷されたメディアで、チラシ、パンフレット、雑誌、DMなどが代表例です。
Web媒体の台頭で利用頻度は減少していますが、「Web疲れ」の反動や信頼性の高さから再注目される場面も増えています。
紙媒体のメリット
信頼性が高い
情報が精査されており、改ざんが難しいため信頼されやすい。一覧性・視認性が高い
一目で情報を把握しやすい。保管性・再読性が高い
特典や気になる内容は手元に残し、後から見直しやすい。紙ならではの表現が可能
紙の質感や加工(箔押し、ニス加工など)で特別感を演出可能。
紙媒体のデメリット
コスト・時間がかかる
印刷や配布にコストがかかる。修正が難しい
誤植や変更には再印刷が必要。情報量に制限がある
紙面サイズに限りがあるため、情報を厳選する必要がある。
Web媒体のメリット
柔軟な情報修正
公開後でも即時修正が可能。低コストで情報発信
基本的には無料で広範囲に情報を届けられる。商圏の制約がない
世界中に情報発信が可能。効果が可視化できる
数値分析を通じて効果測定・改善が容易。
Web媒体のデメリット
即時効果が得られにくい
他情報と競合し、認知まで時間がかかることも。離脱されやすい
情報が散在しており、他に流れるリスクが高い。
紙媒体とWeb媒体の違い
情報量
紙媒体は制限があり、Webは無制限。視線の動き
紙媒体: 「Z型」(左上→右→左下→右)。
Web媒体: 「F型」(左上→右を繰り返す)。
レイアウト
紙は固定、Webはデバイスに応じた可変デザインが必要。色表現
紙媒体: CMYK(インク)、落ち着いた発色。
Web媒体: RGB(光)、鮮やか。
アナログとデジタル、どちらも一長一短あるのは当然です。
しかし近年の書籍電子化は新聞にまで及び、業界自体にも影響があるようです。
日本新聞協会が発表した2022年10月時点のデータによると、一般紙の総発行部数が約2869万部となり、10年前の2012年の約4372万部から3分の2以下に減少しました。
特に直近5年間で約1000万部が失われ、毎年約200万部のペースで減少しています。このままのペースが続けば、15年後には紙の新聞がほぼ消滅すると予測されています。
背景と原因
高齢化: 新聞購読者の多くは高齢者。若い世代では購読率が極めて低く、ニュースはネットで取得する人が大多数。
デジタル化の遅れ: 海外と比べ、日本の新聞社はデジタルシフトが進んでいない。
紙の弱点: 検索不可、持ち運び不便、制作・配達コストの高さなどが紙の新聞の魅力を低下させている。
しかし新聞はメディアの飽和状態になっている現代でさえ、高い信頼性を有するメディアであるという報告もあります。
日本新聞協会広告委員会が発表した2021年の「新聞オーディエンス調査」によると、新聞は「情報が正確」「信頼性が高い」と評価され、コロナ禍で閲読時間も増加しました。新聞社発の情報に触れる人(新聞オーディエンス)は87.8%で、30代以下も30.2%を占めています。一方、新聞を利用しない「拡張オーディエンス」は24.2%でした。
新聞オーディエンスは環境配慮型商品を選ぶ傾向が強く、企業の社会貢献にも関心が高いとされます。また、新聞は「最新ニュース」「地域情報」「人事情報」などで他媒体を上回る信頼を得ています。インターネットでも、新聞社発の記事を信頼する人が多く、広告評価では「情報が信頼できる」が最も高い評価を受けました。
新聞広告は購買プロセスの「興味・関心」や「比較・検討」段階でも効果を発揮していると分析されています。
海外の動向
ニューヨーク・タイムズは2040年までに印刷を終了する可能性を示唆しており、海外ではすでにデジタル化に注力する動きが進んでいます。
今後の展望
部数のさらなる減少: 今後15年で部数が100万~500万部程度に減少すると予測。
新聞社の生存戦略:
デジタルシフトとサブスクモデルの確立。
事業の多角化。
リストラや倒産、買収の可能性。
求められる対応
新聞業界が生き残るにはDX(デジタルトランスフォーメーション)への積極的な取り組みが必要です。また、記者個人も自身のスキルを磨き、他分野で活用できる能力を身につけることが求められています。
新聞離れは不可逆的な流れとなっていますが、業界全体の改革次第で「ポスト新聞」の時代に新たな道を切り開く可能性があります。
やはりあらゆるものにおいて電子化は避けられない運命なのでしょうか。
このような流れにはやはり情報リテラシー的な観点が欠かせないものとなっています。
電子書籍の普及の変遷を情報リテラシーの観点から見ると、技術革新とユーザーの情報利用能力が相互に影響しながら進化してきたことがわかります。この過程を以下のように段階的に整理して解説します。
1. 初期段階(1990年代後半〜2000年代初頭)
普及の状況
初期の電子書籍は主にPCでの閲覧が中心で、専用端末がまだ普及していなかった。
フォーマットが統一されておらず、PDFや独自形式が混在していた。
情報リテラシーの影響
専門知識の必要性
デバイスやフォーマットに対する知識が必要で、一般利用者には敷居が高かった。限られたアクセス層
技術に精通したユーザーやニッチな市場に限定され、大衆化には至らなかった。
2. 拡大期(2010年代初頭)
普及の状況
Amazon KindleやApple iBooksなどのプラットフォームが登場し、専用端末やアプリが普及。
コンテンツが充実し、一般ユーザーにも使いやすい環境が整備された。
情報リテラシーの影響
ユーザーエクスペリエンスの向上
ユーザーフレンドリーなインターフェースにより、情報リテラシーのハードルが下がった。新しい読書スタイルの学習
紙の書籍と異なる操作方法(例えば、スワイプでページをめくる)を習得する必要があったが、スマートフォンの普及に伴い急速に受け入れられた。情報の非物質化への対応
書籍が物理的な形を持たないことへの認識を広めるリテラシーが必要だった。
3. 成熟期(2015年代以降)
普及の状況
定額読み放題サービス(Kindle Unlimited、Kobo Plusなど)が登場。
タブレットやスマホが普及し、専用端末がなくても利用できる環境に。
自費出版プラットフォームの台頭により、出版のハードルが低下。
情報リテラシーの影響
検索能力の重要性
大量のコンテンツの中から必要な本を見つけるため、検索やフィルタリングのスキルが求められた。情報の信頼性評価
自費出版の増加に伴い、コンテンツの質の見極めが重要になった。著作権意識の高まり
電子書籍のデジタルコピーが容易であるため、著作権に対する知識が必要となった。
4. 現在と未来(2020年代以降)
普及の状況
オーディオブックやインタラクティブブック(音声や動画を含む書籍)の普及。
AIやビッグデータを活用したパーソナライズされた読書体験の提供。
ペーパーライクディスプレイの進化により、紙と電子書籍の境界が曖昧化。
情報リテラシーの影響
新しいメディア形式への対応
音声や動画を含む電子書籍が普及する中で、複合的なメディアリテラシーが必要となる。データプライバシーの意識
読書履歴や嗜好が分析される環境下で、データの利用やプライバシーに対するリテラシーが重要。学習ツールとしての活用
電子書籍が教育に取り入れられることで、学習者がデジタル情報を効率的に活用するスキルが求められる。
情報リテラシーの進化の要点
技術への適応力
デバイスやプラットフォームの進化に対応する能力。情報の信頼性評価
コンテンツの正確性や質を見極める力。検索とナビゲーション
広大なデジタルライブラリの中で効率的に情報を得るスキル。倫理的リテラシー
著作権やプライバシーの理解。
電子書籍の普及を支えたのは技術進化だけでなく、情報リテラシーの向上があったことを理解することが重要です。
ライフスタイルに合わせ紙媒体や電子書籍を使い分けると共に、我々の情報リテラシーの向上も図りたいところです。
参考記事
↓
https://kenbunsya.jp/commusapu/marketing/464/