冷たい氷が解ける時。

特訓


ジオノコ投げを練習するダイチ。
ミオが特訓メニューを考えてくれることに。

「では、あの的をテレゾンビと思ってボールを投げてみてください。」
「ネン・・・リン・・・グッ!」

「距離は足りてるようですが、狙いが定まってないですね。
もっと、狙いを定めて投げてみてください。」

「ちょっと待って・・・もう一時間は続けてるよ・・・ ちょっと休憩させて・・・ください。」

「そうですね。少し休憩しましょうか。」

「あの、ミオさんはテレゾンビと戦ったことあるんですか?」
「・・・皆さんと比べては実戦は少ない方ですが、遭遇することは多いですよ。」
少し間が開いて話す。何か聞いちゃいけなかったかな。

「さて、特訓の続きをしましょうか。」
「は、はい!」
そういえば、特訓するって言ったときに、やけに張り切っていた・・・というかいつもより真剣な顔をしていた・・・。

それからは、ますます特訓は厳しくなっていった。

「っ!!」
「また、外してます!もっと集中して!」
「って言われても・・・!」
「次は、力が入りすぎて曲がってます!!」
「こんなの・・・ついていけないよ・・・」
「もう一度!」
「やぁっ!!」

またしても外す。
「もう一度、やってみますよ。」
「・・・もういいよ。」
「ダイチ?」
「僕には、このメニューは難しいんだ。」
辛さからか涙が止まらない。
「これは、ダイチのポテンシャルからシミュレーションしたプログラムで・・・」
「合っていないんだよ!厳しすぎるんだよ!」
「分かりました。今日は終わりにしましょう。」
「もう、特訓はいいよ。自分で自主練するから。」
「・・・そうですか。 なら最後に一つ。」
「何?」

「勇気と無謀は違います。危ない時は逃げてください。」

「何だよそれ。意味わからない。」

後で、ミオが言ったその言葉の真意を知ることになる。


弱音


ジオワールドに戻るダイチ。

「お疲れ。なんかボロボロだね。」
「アーサー・・・。もう、ヤになっちゃった。ミオさん厳しすぎるよ。」
「確かに、ミオさんっていつも厳しいイメージ。決まりに厳しくて怖い感じ。」
「そうなんだよ。特訓中も怒ってばっかり。」

2人の話を聞く、レイとテッショウ。
「・・・やっぱり、ミオってみんなからそう見られちゃうんだよね。」
「レイさんもそう思った? ミオって悪い奴じゃないんだけどなぁ。」

「あっ、レイさん、テッショウ。」
「何で、俺は呼び捨て? まあ、いいんだけどさ。」
「聞いてください!ミオさん酷いんですよ! 特訓が厳しいんです!怒ってばっかりで!」
「まあまあ。落ち着いて。ミオも悪気があるわけじゃないんだよ。」
「テッショウくんも、いつもミオさんに叱られてばかりじゃない。怒ったりしないの?」
「う~ん・・・ そりゃあ、ちょっとキツイ時もあるけど、昔からの仲だし、ある程度、考えていることは分かるからさ。」
「それに、ミオはね意味なく怒ったりしないよ。相手の事考えてし、ああ見えて面倒見いいから。」
「レイさんまで・・・ そういうなら・・・分かりました。少し冷静になります。」
「まぁ、慣れだよ。言われ続けたら、ミオの事も分かるようになるよ。」
「・・・もう一度、お願いしてみます。」

ネンリングが輝く。
「えっ?」
「もう一度、頑張ろうとする気持ちがエナジーになったんだ。」
「よしっ!じゃあ行ってきます!」
「上手くいくといいね。」
「そうだな。ミオの良いところ、もっと知ってもらいたいな。」


一方、ミオは・・・

「少し、言いすぎてしまいました。これでは、ついていけないですね。」

もう少し、分かりやすくできれば・・・
特訓内容を考え直している時だった。

「っ!? テレゾンビ!? 今はエナジーがない。
逃げないと。」

気がつかれないようにその場を後にする。


「テレゾンビが現れた!?」
「誰かエナジーは持ってる?」
「ボクはまだ。」
「俺たちもまだ溜まっていない。」

どうしよう。このままじゃ・・・!
「とりあえず、ダイチに連絡を取ってみようか。」


テレゾンビとの実戦

テレゾンビから逃げろ

「ミオさん!」
「しっ!ダイチ!隠れて。」
「っ!?」
ダイチは身をかがめる。
「近くにテレゾンビが。」
「それなら、僕エナジー持っているのでジオノコ投げできます!」
「この距離では、当てるのは難しいです。もう少し引き付けて・・・」
「大丈夫です!行きます!」
「待ってください!! ダイチ!」

ダイチは飛び出し、テレゾンビに近づく。
「今だっ! ネン・・・リン・・・g・・・」
背後からもテレゾンビが。
「っ!! ダイチ危ない!!」
ダイチを突き飛ばし、代わりにミオはエナジーを吸われてしまう。
「ミオさん!!」
「・・・だる~ん 力が抜けて動けません・・・ もうダメです・・・」
エナジーを吸われ、いつになく弱気なミオの様子。
「そんな・・・僕が注意を聞かなかったせいだ・・・」

後先考えず、行動して後悔する。
ミオさんが言った通りじゃないか。勇気と無謀は違う。
あれは、僕を心配して言ってくれたんだ。

「っ!エナジーがない今とれる選択は・・・逃げる・・・!」
そう、逃げる。対抗できる手段がない。それならいったん体勢を立て直して・・・

その間にもテレゾンビは、光線で周囲をガラクタに。
途中、つまづいて転んでしまう。

「・・・っ!」
メガネどこかに落とした・・・!?
テレゾンビは、倒れているミオの方に。

「ミオさんっ!」
思わず、テレゾンビに体当たりする。


ジオワールド

「ミオさんがエナジーを吸われて、
ダイチさんがテレゾンビと交戦中のようです。
ただ、ジオノコ投げは失敗してしまったようです。」

「じゃあ、早く逃げないと!」
「ネンリングのゲート機能がうまく作動しないようです。」
「え~っ!?どうするの!!?」

2人を信じるしかないですね。


戦う決意

どうにか引き離し、ミオを守るダイチ。
「・・・ダイチ?」
「ミオさん、さっきはごめんなさい。僕のためにいろいろ準備してくれたのに逃げ出してしまって」
謝っても、元に戻るわけではない・・・けど!
「僕のわがままですが、もう一度、僕の特訓一緒にしてくれませんか?」
「えっ・・・?」
「その前に、テレゾンビを倒さないと・・・!」
「無理・・・しないで・・・ダイチ・・・」

― もう、仲間をひどい目に合わせたくない・・・仲間を失いたくない。 

「逃げてください・・・ダイチ・・・ッ」
「僕は逃げないっ! 目の前の辛いことも、全部乗り越えるんだ!」

再びネンリングにエナジーが溜まる。

「今度こそ当てるんだ!」
「ダイチ・・・」
私も・・・彼の気持ちに応えないと・・・っ!
ミオがダイチの後ろから手を握る。
「ミ、ミオさん?」
「肩の力を抜いて・・・後ろからフォームをサポートします。合図と共に投げてください」
「は、はいっ!」


謎のエナジー


「見たことのないエナジー量を感知している。」
「どういうこと?」
「今までのエナジーとは違う計測できない力が、集まってます!」
通信が途切れるくらい、電波状態が悪くなる。
「うわっ!?どうなってるの!?」
「分かりません・・・すぐに復旧作業に入ります!」



「エナジーが・・・集まって・・・・!?」

―甘く見ていました。これが私の全力です!
これは・・・ミオさん?でも、何かいつもと違う・・・メガネも無いし・・・赤い服?
ミオに似た少女の幻影を見る。

「準備はいいですか・・・?」
「うん!もう、泣かない!僕は強い!! ミオさんを・・・みんなを戻すんだ!」
「行きますよ・・・せーのっ」

「「ネンッ リンッ グッッ!!!」」
巨大なエネルギーの塊がテレゾンビを遠くへ飛ばし、消滅させる

「や、やった!?倒したっ!?」
エナジーが戻っていく・・・


「あっ!キョボの木が!」
「エナジーが戻ってきました!」
「てことは倒したんだ!」
ジオワールドでも喜びの声が。


エピローグ

「あれ?さっきの赤い子は・・・?」
メガネが無かったから、見間違えだったのかな・・・?

「そうだ!メガネ!さっき転んだ時に・・・!」
「はい。ダイチ。」
「ミオさん!ありがとうございます」
「ダイチ、こちらこそ、厳しくしてごめんなさい。期待しすぎてしまいました」
「そんな!頭を上げてください!今のジオノコ投げだってサポートが無かったら投げられなかったです。」

「今回は、助けられてしまいました。ありがとう。ダイチ。」
ミオは満面の笑みで礼を言う。
「あ、あの・・・その・・・」
「なんでしょうか?」
「いや、ミオさんのそんな笑顔初めて見ました・・・」
「私だって、みんなみたいに笑いますよ?」
「そうですよね・・・。」
「もしかして、私の事、冷たい人って思ってました?」
「その・・・ちょっと言い方強くて怖い人かと。」
「そうでしたか。 よく言われます。これから気をつけないとですね。」

何だか、今までとイメージが変わった気がする。
テッショウくんが言った通りだ。

「そうだ、仲良くなるために一つ、
 実戦でジオノコ投げが上手くいくおまじない教えてあげますね。」
「おまじない?」
「はい。 これは、私とダイチだけのヒミツですよ。」
いたずらっぽくミオさんは笑いかけてくる。


ジオワールド

「戻ったよ!」
「ダイチさん!ミオさん!!よくご無事で!!」
「すごいじゃん!何?あのエナジー!?」
「何も考えてなかったんだけど、急に力が出てきて。」
本当に何だったんだろう?いつもと違うエナジーの感じだった。

「ミオ!大丈夫だった?」
「はい。と言っても、私はエナジーを吸われて動けませんでしたが」
「すげぇ!ダイチ、特訓の成果出てるじゃん!」
「ミオさんに手伝ってもらって倒せました。ありがとうございます!」
「こちらこそ、助けてくれてありがとうございました。」
「あれ?何か2人いい感じになってない??」
「もしかして、見えないところで何かして・・・」
「テッショウ、何か言いましたか?」
「う、ううん? 何でもない!」
「あの、また練習に付き合ってもらってもいいですか?」
「いいですよ。時間調整しておきますね。」

こうして、新たな一面を見ることができた。
本当のミオさんを知っているのは、新しいてれび戦士の中では僕だけ・・・かも。


おまけ・ヒミツのおまじない

「ジオノコ投げが上手くいくおまじない?」
「メガネを外す、だけなんですけど・・・」
「えっ?メガネを外す?」
「昔から、本気を出すときはメガネを外していたんです。なんかいつもと違う感じで、気分も違いますよ?」

そういう、ミオの顔には見覚えが・・・
「メガネを外して、 これからが全力ですッ! って言うんです」
「あっ・・・!さっきの・・・!」
「さっきの・・・ですか?」
ダイチは強大なエナジーが発現したさっきの出来事を話す。

もしかしたら、そういうこともあるのかもしれませんね。
不思議な巡りあわせです。





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