【アサヒ飲料】NFT活用プロモーションのリスクと将来性について
アイドルという言葉、日本語に直訳すると「偶像」ですよね。なお、キリスト教やイスラム教などの主要な宗教は、偶像=虚像であるとして、その崇拝を禁じています。その考えに則るとすると、アイドル推し活とは“虚像を崇め尊ぶ行為”ということになります。ふ~む、じつにその本質をとらえた深みのある教えでございます。
アサヒ飲料が新垣結衣NFTなどが抽選で当たる「十六茶30周年キャンペーン」を実施しています。お~ガッキーNFTか~!いいねぇ~!——ってなるほどに「NFT」というワードは市民権を得ているんですかね?
NFTって、お金のニオイがプンプンしてて個人的には興味を持っているコンテンツなのですが、今の日本で「NFT」というワードを聞いてピンとくる人ってどれほどいるんでしょうか。
一部界隈ではワッショイワッショイされているようですが、いまだに「なにそれ?」という人がほとんどであるというのが肌感覚です。
ましてや、赤ちゃんからお年寄りまで広く親しまれている十六茶のキャンペーンですから、なおさらそれでいいんすかね?とも思ってしまったりしまわなかったり。
念のためNFTについて軽く解説しておきます。NFTとは、正式名称をNon-Fungible Token(非代替性トークン)といい、すなわちブロックチェーン技術を応用した偽造不可能な暗号資産です。
もっと噛み砕いていうと「世界でこれが唯一だよ!という絶対的な証明書が付けられたデジタルデータ」といったところになります。
なんだか、国民的なお茶飲料である十六茶とは、ずいぶん遠いところに在るようなキーワードな感じがしなくもありませんが…。
まだNFT認知が浸透していないからこそできる“DAI語”風味アピール
それはそうと、このキャンペーンの店頭アピールの仕方がなんともユニークです。まず、「新垣結衣NFT」というワードをなんの説明もなしにサラッと載せている点や、「1・4・6本で」と、これまたわかるようでわからない情報を添えてアピールしている点です。
こういうノリでこられると、NFTももはやDAI語(うぃっしゅのほうのDAIGOの持ちネタ)のように見えてきてしまいます。「DKB=大好物」、「YDTT=油断大敵」みたいなアレです。今回の文脈でのNFTだと、例えば「NFT=名札立て」とか?
そして、ふと思うのです。この店頭メッセージに限って言えば、そういう目的を持たせている側面もあるんじゃないかと。「1・4・6本で新垣結衣NFTが当たる」と言われて、すぐに理解できてしまう人ってほとんどいないと思いますので。
DAIGOっぽい言いかたで、「ガッキーNFT…?どゆ意味?w」と気を引いて、購買へのとっかかりをつくる狙いも持たせているのだとしたら、この説明不足ぎみなアピール方法にも納得感があります。
NFTは投機的側面が強いので…
少し脱線してしまいましたが、本筋の話に戻します。ちなみにアサヒ飲料は2021年12月にもNFTを景品とした大規模キャンペーンを実施した実績があります。
また、その親会社であるアサヒグループHDからも本年3月から「スーパードライNFTトレカ」が発売され、界隈ではちょっとした話題となりました。アサヒグループはNFT活用にわりと積極的な姿勢であるようです。
一方、ほかの企業のプロモーションでのNFT活用実態をみると、まだまだけっこう珍しい部類といえます。LINEによるNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」が開設されたのは昨年(2022年)4月、そこから起算するとしてもすでに1年以上経ちますので、プロモーション関係者の間では「知らない」というよりは、むしろ「検討したけどひとまず見送った」というパターンが多いのではなかろうかと思います。
その背景にあるのは、やはりNFTの持つ「投機的側面」への懸念が強く意識されたのではなかろうかと推察します。
結局のところ、NFTコレクターたちの主な目的は、価値が上がりそうなNFTを安く仕入れ、高く売り抜け、利ザヤを稼ぐという投機行為(人によっては投資と言うでしょう)にありますので。
そんな彼らは、そのNFTトレカに描かれたグラフィックや写真そのものへの興味よりも、それが値上がりしてくれるかどうか?という部分に大きな関心があり、だからこそ実際の紙製カードなどの実体物はなくていいのです。
「自分が唯一の所有者である」ことをブロックチェーン技術が証明してくれればそれで十分であるということです。
言ってしまえば、夢を信じる人たち同士で夢を売買することを実現させてくれるのがNFTであるということです。ここでの夢とはNFTというデジタルデータの資産価値(の向上)のことを言っています。
そういう意味ではNFTは、Bitcoinなどの仮想通貨と本質は同じです。通貨か?作品か?という媒介名目がちょっぴり違うだけなのです。
あるいは、ただの電子データに過剰なありがたみを感じるという点では、虚像崇拝という表現もあながち遠からずだとも言えます。が、しかしそれを否定はしていません。虚像だとしても、そこに神を感じ、心が満たされるのであれば、それでいいじゃないですか。
それを頭ごなしに否定するのは、それはもはや宗教弾圧と同じです。好きなように崇拝させてあげましょう。「信教の自由」ってやつです。
ただしプロモーション活用となると、印象リスクがあるのです。
ただしその一方で、ブランドイメージへの寄与も重要な役割であるプロモーション領域では、なかなかその「信教の自由」的な考えだけで推し進めてしまうのも難しいのであります。
世の中にはいろんな“信教”の人たちがいて、その中でもわりと異端視されがちな「NFT教」を取り上げることで、そこにネガティブな感情を抱いてしまう人がいることにも配慮しなくてはいけないので。
さらには、転売が繰り返されて価格が暴騰——といった、金儲けツールとしての話題が盛り上がってしまったら最悪です。ほとんどの大衆向け商品ではブランディング面においてはネガティブに働いてしまうでしょう。
NFT活用には、そういったブランドイメージへの配慮が十分に必要であり、そことのバランス取りがなかなか難しい…。それがまだまだプロモーション領域でNFTが積極的に活用されていない現状の理由かと読んでいます。
デジタルブロマイド…?(あっ…)
ところで、アサヒはこのガッキーNFTを「WEB上でコレクション可能なデジタルブロマイド」と紹介しています。
——ん?ブロマイド?わかりやすい表現といえばそうなのですが、NFTの価値をより的確に表現するならばトレカ(トレーディングカード)のほうがいいような気もしますが…。
と、この表現が妙に気になったので、キャンペーン詳細を確認してみたところ「二次流通はできません」との説明が…。あっ…資産価値…NFTの主たる価値が…。
また、この説明が「利用規約」ではなく「よくある質問」項目にあるのもちょっぴり不思議でして。
NFTガチ勢(要するに転売ヤー)たちからたくさん問い合わせがきた結果なのか?それともはじめからここに載せてあったのか?そのあたりは定かではありませんが、これはNFTコレクターたちにとって非常に重要なポイントであるはずですが、扱いがオマケ的なところが気になっちゃったりもします。
二次流通NG自体は発行者が自由に決めていいことだとは思うのですが、一般的なNFTの認識(二次流通できてナンボ)に反する条件となる以上、しっかりと重要な「ご注意」として然るべき場所に記す必要があると思います。
規約欄もちろんながら、それこそ景品のメイン紹介スペースに注釈書きを添えるレベルで。
NFTに積極的なアサヒはなにを狙っているのか?
これらの状況からわかる、アサヒの狙いはザックリと2つあると思います。1つ目は…
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