歌舞伎町ネオピン東、最凶ルールへの挑戦
ある日のこと僕のスマホに麻雀のお誘いが届いた。
送り主の男は通称情報屋(仮)、この男が歌舞伎町で現在一番激しいルールへの案内人であり、歌舞伎町tier1の打ち手でもある。
文面は一言
「ファイター求む」
それだけで伝わった
この男は自ら生み出したこのルールの打ち手を常に求めているのだ。
さて、今回の麻雀のルールの説明の前に一旦昔話から入ろうと思う。
今から3年前、歌舞伎にオープンした雀荘jewelの特殊牌、エメラルド五萬の出現に歌舞伎町に震撼が走った。ドラ1で祝儀3枚という今までの常識を超える存在。
祝儀1枚のルビー五筒、祝儀2枚のアクアマリン五索に加えてこの最強牌祝儀3枚のエメラルド五萬が入ったjewelは歌舞伎でも最高クラスのお気持ち(婉曲表現)の高さで話題となった。
そしてそれから3年がたった現在、ビットコインもびっくりのインフレが加速し続け、歌舞伎町のいくつかの店は今やピン東を超えたネオピン東と言われるようになる。
長くなったが本日の種目がこちら
通称「宙船改」
(艦これのキャラみたい)
いや小学生の考えた僕の最強ルールかよ!
むしろ小学生の頃、自作遊戯王カードや自作バトエンを作っていた時の僕の方がよっぽど加減というものを意識していたんじゃないだろうか
1枚入ってる祝儀3枚牌でキャーキャー言ってた時からたった3年でこれ、マコーレカルキンもビックリの変貌っぷりである。
まさに祝儀牌のバーゲンセールだ、ベジータも失笑するだろう
ともかく僕はこの狂気のルールに臨むこととなった。
決戦に向かうにあたり、せめて運には恵まれるよう善行で徳を積めないかと思い、困ってる老人でもいないものかと向かう途中探してみるもののそんな存在は影すら見当たらない。
街をいるのはみな一様に目のギラついた人々
ここは新宿歌舞伎町、戦場である。
店に着くと既に二人が待っていた。僕を呼び出した情報屋(仮)とこの店の最強メンバー純黒スズメ(仮)だ。
──なるほど今気づいた、自分は罠にかかった獲物だったのだ、ここは注文の多い雀荘店だった。
店内を見回すと、別卓には天鳳位がいる、麻雀jewelの王がいる。
だが臆するわけには行かない、出る前に負けること考えるバカはいないのだ。
言うまでもなくこのメンツ相手に負けること考えないでこんなルールを打つ方がよほどバカであることは間違いない。
メンツが一人ドタキャンしたとのことで少し待ち、待ってる間別卓でジュエルの王とDAN鳳ルールなる超ラス回避ルールを一本打ってラスった。あまりにも幸先の悪いスタートだ。
そしてついに宙船改が始まった。
幸先こそ悪かったが1戦目にトップをとりそのまま展開にめぐまれ
122324と順調に着順をとる
しかし、この着順で僕の何故かチップカゴからはチップはどんどん減り続けてマイナスという理解不能な状況にあった。
誰かがこっそり自分のチップくすねたんじゃないかとそばにいたロン毛店長を睨みつけるもキョトンとするばかり
そう、このゲーム着順も大きいが1回の和了で平均10枚弱の祝儀が発生するためにツモ和了をしないとジリ貧になり続けるのである。
僕の和了は出和了になるか、かわされる
周りにはツモられる。
この段階で僕は完全に煮えていた。なんだよこのルール、流石にこの着順でマイナスってもはや麻雀ではじゃないだろ、天鳳なら安定天鳳位だぞ。こんなの麻雀じゃねえ!
というかそもそも金が祝儀2枚、プラチナ祝儀4枚ってところからおかしい、今日の金相場を鑑みるに金の方が高くあるべきと、あまりにも無関係なところにまで憤りを覚えていた。末期である。
だが勝負の流れは一瞬で変わる。
マリンマリンプラプラ合計20枚の勝負手、テンパイだ。だが待ちがカン6m、どうせ俺には和了れないんでしょと拗ねながらリーチ
もう完全に拗ねすぎてスネルである(意味不明)
しかし4巡ほどたった後牌をツモると──
ゴリッ
親指から脳にまでダイレクトに刺さる感触が
全ての愚形の救済者、白ポッチである。
マリンマリンプラプラの20枚に
白ポッチと裏裏まで加えて26枚オールの絶頂。
同時にこれはなんて素晴らしいルールなんだろうと
5秒で掌を返していた。
人生観を変えるのにわざわざインドまで行く必要はない、ただ歌舞伎町に行ってポッチをツモるだけでいい。
そこからは完全に自分の流れ、爆発的な和了はないもののコンスタントに和了を掴み取り、着順で稼いで行った。
上家の純黒スズメなどは既に死にそうな顔をしている。彼が卓についてから和了した記憶がない。哀れなvictim(犠牲者)に心の中で合掌をした。
勝ちを積んでいきホクホクの僕は程よい疲労感を感じ、もしラスコールをかける、一流の打ち手はやめ時の見切りが上手いのだ。
ラスト一戦と臨んだゲーム、トイメンからリーチが入る、しばらくしてめくりあいを制してウキウキでツモった。倍ポッチだ。
20は40枚オールらしい
はいぃ?
ラストバトルでこの和了、思わず右京さんと化してしまったのは無理はない。僕だからこの枚数の申告に耐えられがそうじゃなかったらショック死の恐れすらある。高齢者、心臓の弱い方への注意書きは必須だろう。
当然、熱続行である。
次のゲーム。ラス
当然熱続行である。
次のゲーム連ラス
熱続行。
ラス半コールからはよおじさん並みの熱続行で
瞬く間に積み上げた勝ちは溶けていた。
結局20ゲームを打ち
着順は6-8-3-3
+54枚でフィニッシュ
ラス半コールから150枚以上減らしたのはまさに狐につままれたような心待ちだった。まさに現在のネオピン東最凶と言っていいルールだろう。
インフレの加速するピン東界隈
もはやこの店で祝儀10枚の牌が誕生しても驚きはないないかもしれない。名前は恐らく──
サム牌だろう。
(終)