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第1話:全然進まない準備

ベルリンに行こう

2019年10月、都内にて。私は自宅近所のバーで飲んでいた。その頃の私は、仕事がうまくいかなかったり、今まで感じていた生きづらさみたいなモノがたまってモヤモヤしていた。

「この生活なんとかならないか」

常にそんなことを考えていた。当時の私は、とても視野が狭くなっていてどうしていいか分からなかった。しかし、その時だけは何かが降ってくるかのようにこう思った。
「ベルリンに行こう、ベルリンに移住しよう」

私はお酒を飲みながら、常連さんにそんなことを急に言い出す。「出た、突然わけわからないことを言い出す癖」、「変態の本領発揮ですね、今夜は」などと言われながら、心の中では絶対に行ってやると思っていた。普段からいじられキャラだったのだが、ある常連さんはとても応援してくれ、高級なお酒を一杯奢ってくれた。とはいえ、特にベルリンに知り合いがいるわけでもなかった。3年前に仕事がとても辛い中で、観光として一度だけ行ったことがあるだけだ。その時も旅行中だというのに仕事に追われ、どこに行ったのかなどは全く覚えていなかった。漠然と「楽しかったな」程度の記憶しかない。後に、その旅行中「ここに住みたい!」と私が唐突に言って喧嘩になったと、妻が言っていた。その時の妻の発言は真っ当で、私は大きく背伸びをし続けて自分を苦しめていた。

見つからない家

ベルリンに移住するときに1番の問題となるのが住宅問題。ベルリンは本当に家が見つからない。考えたプランは2つだった。

1, 日本で住居を見つけて契約してから行く
2, まずはベルリンに行ってから家を探す

1はとても難しいと感じていた。現地にいる人ですら家が見つからないのに、日本にいながら家を探すのはとても困難だった。不動産サイトを片っ端からチェックしたり、ベルリンでの家の契約方法などを調べまくった。しかし、全く見つからない、というよりわからない。家探しはスーパーで買い物をすることとは訳が違う。長期契約だ。そう簡単には決められないのだ。そうなると、2のまずはベルリンに行ってみるとなる。現地に住んでいる人が旅行の期間だけ部屋を貸し出したりしているサイトがあって、そこに問い合わせてみたけれども返事も来ないことが多かった。返事をもらっても「他の人に決めました」であったりと全く決まらない。そうこうしているうちに12月になってしまった。そう、とにかく家が見つからなかった。「このままではベルリンに移住なんてできない」

次に考えたのがホテルに一時的に住む事だった。しかし、ホテルは多大な費用がかかる。民泊サイトを見ても、1ヶ月や2ヶ月となると結構な費用になる。失敗した時の事も考えて、なるべく被害は抑えておきたい。もはや、格安ホテルに泊まるしかない。色々と探した結果、Mitte地区にある一泊1200円で泊まれるホテルを見つけた。

「ここに半月まずは行ってみよう。現地で家を探すんだ。」

そんな事を考えていた。まさか、あんなことになろうとはこの時は全く思っていなかった。大流行している新型コロナウイルスだ。11月下旬頃から中国で新型コロナウイルスがという話は聞いていて、仕事のSlack(チャットツール)で、他のメンバーに人の多いところに行かないようにと伝えていた記録が残っていた。

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次回更新は7/9予定です

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コロナの発生時期とほぼ同時期に、東京からベルリンに移住した。ノンフィクションの私の物語を一人称視点でお伝えします。

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