世界一幸福な国・フィンランドのワークライフバランス事情 - フィンランドの起業家女性をゲストに招いて勉強会実施レポート!-
「フィンランドは、世界で一番幸せな国。ワークライフバランスが取れ、働く環境も子育て環境も抜群に整っている国」
こんなイメージを持っている、という方は多いのでは?
世界幸福度ランキングで7年連続で第一位のフィンランド。(今年、ちなみに日本は51位でした。)
フィンランドは福祉国家として知られ、子育てや医療に手厚い支援が行われています。働く環境でも平等性が担保され、女性の社会進出も進んでいます。このような政策が、幸福度の首位を保持している理由と考えられますが、これは、果たして本当なのでしょうか?
今回のイベントでは、子育ても経験したフィンランド人の起業家女性をゲストに招いて、実際のフィンランドの働く環境や子育て事情をお話しいただきました! MINT修了生メンバーたちも日本の働く事情との違いを共有し、日本・フィンランド間の社会、文化の違いについて皆が有意義な対話を重ねた学び場となりました。
「ワークライフバランス」より「ワークライフインテグレーション」という考え方が大事。
まず、Merviさんが、ワークライフバランスとワークライフインテグレーションの違いを説明してくれました。(当日は英語で進行)
フィンランドでは、個の人生そのものがまず第一にくる、ということです。なので、仕事と私生活をバランスさせなくては、という考えではなく、個人が、自分の生活全体のなかで、どうやって、仕事と私生活を統合してその人自身の人生を築いていくのか、という考え方が主流となっていることです。
このスタート地点の意識のギャップに、Merviさんは日本だけでなく、アメリカや他国ともフィンランドが違っている点、といいます。
毎日家族全員が17時には帰宅し夕飯を共にする
フィンランドでは、保育園からお迎えをお父さんかお母さんどちらかがし、ほとんどの家庭では遅くても絶対家に帰り全員で夕飯を共にするのが一般的ということです。
残業は一般的ではないからです。毎日家族との会話を大切にし、子どもが学校でどんな経験をしたのか、お父さん、お母さんもどんな1日を過ごしたのかという会話があるそうです。たまには、近所のサウナに出かけ、様々な職業や年齢層の人たちと自然に交流する場も楽しんでいるそうです。
フィンランドの職場カルチャー①:独立性
そこでフィンランドの職場のカルチャーで大切にされているものを紹介してくれました。その一つが、「独立性」です。
Merviさん:「フィンランドでは、上司は指示をしません。仕事を任せたら、部下がそれを責任持って最後までやり遂げるものですから。どうやったらいいかとか細かく指示をするとそれはマイクロマネジメントとして(過剰な干渉)捉えられ、部下の独立性を侵害していることになります。」
ひとりの独立したプロフェッショナルとして、見なされている、ということですね。
また独立性は、フィンランドでは、幼稚園の頃から意識するよう訓練がされているとのことです。自分はひとりの個人として、責任を持って、自分の考えを発信して、利害関係の異なる相手と対話をして、プロジェクトをやり遂げる、だからこそ他人の領域を尊重する、ということですね。
MINT修了生:「それでは、フィンランドの組織ではマネージャーや雇用主はどういった役割をするんでしょう?部下をマネージする役割を担わなかったとしたら、どんなことが彼らの仕事なんですか?」
Merviさん:「組織によってもちろん異なると思いますが、大抵は、CEOやマネージャーの役割は、会社のパーパス(企業理念や価値)を示していき、それを部下やメンバーたちとも共有をしていきます。基本的な仕事やタスクは部下の裁量に任せますが、重要な意思決定をする際に、本質的な議論が必要になった時に腹を割ってこの業務がパーパスと合致しているのかどうか、と切り出します。」
フィンランドの職場カルチャー②:平等性
Merviさんは引き続き、フィンランドの職場カルチャーの大切な要素を説明してくれました。2つ目は「平等性」です。
Merviさん:「基本的にフィンランドでは誰もが平等であるという考えがあります。年齢とか性別とか出身地などで上下関係は作りません。取引先と受注先、といったバランスでも人として対等に付き合います。」
MINT修了生:「日本でも基本的には平等、という考えはあるものの、やはり、例えば所得の違いなどで、あの人は特別である、とかセレブリティとか、そういったことで壁ができる状況ではあるかなと思います。」
Merviさん:「そうなんですね、アメリカとその点では似ていますね。フィンランドでは、例え、首相がスーパーマーケットで買い物をしていても、誰もジロジロみたりしませんよ。だって、それは首相だからといってその人を特別扱いしている、ということになりますからね。」
MINT修了生「それは驚きですね。日本で、首相がそんなことしたらスーパーマーケットが人でごった返してしまいますね。大注目ですよね。」
Merviさん:「あの人はこういう立場にいるから偉い、だから私の行動を変えないと、ということはフィンランドではありえません。」
フィンランドの男女平等について
Merviさん:「職場でも誰もが平等にあります。だから女性のマネージャーが多いことでも知られています。私の友人のアメリカ人が、フィンランドに赴任になって、フィンランドの組織で働き始めた時、上司は男性だと想像していたけれどもほとんどが女性の上司だったことに彼はカルチャーショックを感じたそうです。(笑)」
フィンランドでは、男性も女性と同じ期間育休を取ることが普通だそうです。女性が1年産休を取ったら、次は、男性が育休を1年取って、その後に女性が今度は育休を1年取って、男性もまた育休を1年交代で取る、など夫婦で平等に育休を取るチーム体制を取っているところも一般的だといいます。
Merviさんは、育児参画の男女平等について、興味深い最近フィンランドで話題になっているトピックを紹介してくれました。
Merviさん:「これは最近ニュース記事でフィンランド国内で話題になったとある26歳の中小企業の社長を務める男性が、育児を通して、奥さんとの家事分業について気づきを共有したものです。」
フィンランドでは男女平等と言われ世界で最もおそらく育児に関して男性が参画している社会だということですが、
このEemeli氏が語るのは、いくら彼が育児に参加したとしても、結局、子供が本当に欲しているものを知ってるのは、お母さんである場合が多いとのこと。新しい洋服を買わなきゃいけない、子供が何を好物にしているのか、などといった情報は、ほとんどお母さん側が把握しているパターンが多いため、結果的に奥様の方が育児の大きな役割を担ってしまっている状況だ、ということです。
MINT修了生:「僕も育児に参加している方ではありますが、(一般的な日本人男性に比べると)、それでも僕は2割程度しか分業できてないんじゃないかと思いますね。」
フィンランドでは、今、こうやって男女を完全に平等にしよう、というところでも、やはり限界はあるよね、というように正直に本音を語り合う発信が特に若い人の間では出てきているとのことです。
育児に関しても男女平等が進んでいる国ならではの気づきを共有いただきました。
フィンランドの職場カルチャー③:自己研鑽
最後に、フィンランドの職場カルチャーで「自己研鑽」を上司も部下も誰もが大切にしているとのことです。
Merviさん:「突然上司が、博士号を取りたいから仕事をお休みします」ということも好意的に受け取られます。生涯にかけて、学び続けることはとても大切なことですから。」
それが若い人だから大学院に行く、だとか50歳を超えてから学び直しは遅すぎるのでは、などと行った年齢での制限も全くないとのことです。
Merviさん:「学びを経験してから、また職場に戻ると様々なポジティブな効果があるということが誰しも共通認識で持っていますから。社会全体のためになる、という意識もありますね。なので、快く学び直す人には、いってらっしゃい、と言うカルチャーがあります。」
また、週4日勤務についても、フィンランドでは賛否両論があるものの、好意的に捉える人が多いそう。
Merviさん:「休暇を毎週3日取れたら、自己研鑽にも時間を使うことができます。まだ週5日勤務がフィンランドでも主流ですが、これからAIがもっと単調な仕事やクリエイティブな難解な仕事も担うことになると、私たちはますます創造的になるように学んでいかないといけないですからね。」
まとめ : フィンランドの幸せな職場環境の秘訣は?
Merviさん、貴重なお話しをありがとうございました!
MINTメンバーにとっても大変学びになる時間でした。
MINTでは、コミュニティ限定で、このような月例勉強会を毎月開催しております。
グローバルなコネクションを持つMINT創業者の植山の海外の友人や関係者も登壇しています!
またこのようなグローバルのゲストを招いたイベントを今後も開催していく予定ですのでお見逃しなく!
▼MINTのイベント情報ページ▼