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心の棲家を形にする①
坐禅を日常に取り入れ、心を静かに見つめられる場所――「心の棲家」は、理想の物件に出会うだけではなく、自ら手をかけ、形にし、守り続けていく場所ではないかと気づき始めました。その再生のプロセスを通じて、「あるがままの姿に寄り添う」ことの大切さを学んでいます。
再生を決める
工務店から見積もりを受け取り、予算内で改修が可能と試算が出た瞬間、心底ほっとしました。そしてリスクも受け入れ許容しようと決めました。この物件が「土砂災害特別警戒区域」に指定されている点は見逃せない課題です。最悪の場合、来年の夏には土砂崩れでこの家を失う可能性すらあります。でも、山間部に暮らす以上、自然災害のリスクを完全に避けることはできません。
竹林に囲まれたこの古民家には、言葉では表現しきれない不思議な引力があります。「再生してほしい」と語りかけてくるような気配を感じます。この家を、日常に坐禅を取り入れながら心を休め、志を育む場所にしたい――そんな思いが日を追うごとに強くなっていました。この古民家をリスクを許容しながら「心の棲家」として再生し、いずれは共有できる空間にしたいという願いが、私の中で揺るぎないものとなりました。
完全を追い求めるのではなく、この古民家が持つ「あるがままの姿」に寄り添いながら、再生のプロセスそのものを大切にしたいと思います。この家が心の拠り所となり、穏やかな時間を共有する場になれるよう、一歩一歩、丁寧に形づくっていきたいと思います。
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素朴な景観を引き継ぐ
この物件の特徴のひとつは、「残置物撤去前」であることです。残置物とは、以前の所有者が使用していた生活用品や装飾品を指します。例えば、床の間の飾り物や掛け軸、お茶道具、古時計など。また、屋外の庭の灯籠や石、木や植物も含まれます。
敷地内の灯籠や石籠、庭の植物たちは、この土地の記憶を静かに語る大切な存在です。初めて目にしたとき、その素朴で美しい風景が今も忘れられません。残したいものは、残置物の撤去で捨てられないように指定しないと建物以外は全て撤去されてしまいます。そして残すように指定し残ったとしても、改修工事との兼ね合いで取捨選択する場合もあると学びました。
古民家の魂ともいえる風情を引き継ぐため、禅の精神から学びながら、工務店と協力し、慎重にそして丁寧に取り組んでいます。
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風情を守る〜残す選択〜
風情を守りながら再生を進めること。それ自体が新たな学びの旅となっています。古民家の持つ魅力を失わずに、小屋の解体作業などを実施するというバランスを模索する中で、まずは3つの場所に変更を加えることにしました。
母屋正面の庭
母屋の隣の小屋を取り壊すため、重機の通り道になります。通り道になる予定の場所には発泡スチロールの箱が15箱くらい置いてあり中に小さめの草木が生えています。まず、ゴミとして扱われ撤去されないように残すものとして指定します。次に、通り道にならない場所に移動させて改修後に下植え予定です。問題は移動できない下植えの木々です。こちらは移植することにしました。移植した植物たちが新しい場所で再び根を張れるように守って参ります。
離れ前の庭
屋外のお手洗いとお風呂の建物の取り壊しを予定していて、こちらも重機の通り道になります。現状は植物や石の佇む庭になっていて、古民家の歴史を物語る大切な存在です。重機の通り道にしてしまえば、その静けさが失われてしまいます。そこで、解体工事を中止にするか、人力での解体方法に切り替えることにしました。
離れ横の庭
敷地の入り口付近にあたります。現状は、灯篭と唐木が良い風情を出しているのですが、全て撤去して更地にし駐車場になる予定でした。駐車スペースを新たに作らなくても、現状のままでも車を止めるスペースは十分にあります。新たに駐車場を作るのは控えることにしました。
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風情を守る〜残さない選択〜
残すものがあれば、手放すものもあります。家の安全を守るために伐採が必要な木々や竹もあります。家のすぐ横で大きく成長した樹木は屋根を押さえつけ始めています。根も家を支える柱を下から持ち上げてしまう可能性もあるかもしれません。家のすぐ近くに生えている立派な竹も折れて屋根にもたれかかっています。竹の根も注意が必要です。これらの木々は、長い間この家を見守り、支えてきた存在です。伐採の必要がある場合は、その役割を終えたことに感謝しながら、新たな風情として生まれ変われるよう立て付けていきます。
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見えている4本の竹は根を張りながら家の方へ広がってきています。
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家の方に倒れかかってきて屋根に当たり始めています。
次のステップへ
現在、室内の間取りを決める段階に入りました。工務店担当者と間取りや内装について話し合いながら、この古民家での新たな暮らしを具体的に思い描いています。母屋には2階にロフトがあり、天井を抜くことで広々とした明るい空間にできそうです。ただし、暖房費の増加も予想されます。一方、離れにはお手洗いが付いており、ゲストルームとして気軽に宿泊いただける場所に再生することを目指しています。
果てしない学び
朝日が差し込む中、竹林のざわめきを耳にしながら心を静めるひととき――そんな日常が、少しずつ形になりつつあります。禅の精神を映した「最低限の改修で住み始め、必要に応じて徐々に整えていけば良い」という教えが、今まさに意味を成しています。
必要最低限の生活道具を所有し、工夫しながら過ごす豊かな日常。それは、忘れかけていた何かを少しずつ思い出していく心境にも似ています。家そのものを再生していくプロセスが、同時に心の棲家を形にしていく旅路でもあるのだと、改めて実感しています。
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次回は、内装デザインの工夫やアイデアについて掘り下げていきます。お楽しみに!