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オンラインコミュニケーションでも生まれる暗黙知の共有とSECIモデル

(ヘッダー画像は https://www.slideshare.net/guest6c632e/ss-3730097から引用)

野中郁次郎先生のSECIモデルでは、暗黙知の共有は、私とあなたが同じ体験をする、理解できるまで同じ空間で過ごす、といった、対面要素が強い事例が多いと理解しています。

オンラインカンファレンスにおける暗黙知の共有については、こちらにも素敵な考察があるので、ぜひご参照いただけたらと思います。

ここからは、

・オンラインコミュニティでSECIモデルを目の当たりにしたお話
・組織におけるふりかえりでSECIスパイラルが起きたお話
・組織で起きたことを組織の外に共有することで新しい可能性が感じられたお話

を書いていきます。

ざっくりまとめ

リモート環境下でも暗黙知の共有は行われる
SECIスパイラルの渦はオンラインで加速する可能性も秘めている

オンラインコミュニティでSECIモデルを目の当たりにしたお話

とあるコミュニティで、オンラインカンファレンスに参加した人たちが感想を共有している場に遭遇しました。

その人たちは、同じカンファレンスに参加した(=共体験)の感想(=個々の暗黙知)を共有していました。参加者にはある程度共通の想いがあったため、共感が発生し、とてもスムーズで熱気ある意見交換が成立していました。(共同化:SECIモデルの「S」)

そこは期待以上の内容で興奮した。これに参加した人は誰でも熱狂するだろう。

そんな体験を言語化し、熱い気持ちを真正面からお互いに共有したことで、「熱湯」というメタファーが生まれました。このメタファーに対して、そこに誰もが賛同していました。(表出化:SECIモデルの「E」)

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熱湯というメタファーが生まれたことで、自分のような、その場に居合わせたカンファレンスに参加していない人も、前述のメタファーから状況が推測しやすい状態になりました。カンファレンスに参加した人も、していなかった人も、上記共体験を通じて、メタファーが生まれたストーリーを他の人に紹介できるようになっていました。(連結化:SECIモデルの「C」)

その後、「熱湯」というメタファーをコミュニティで使えるリアクション(スタンプのようなアイコン)にしたことで、メタファーが生まれたコミュニティ以外の場所でもこのメタファーが当たり前のように使われるようになっていきました。(内面化:SECIモデルの「I」)

どこかで「熱湯がスラング化している」という話を聞いた時、

「これ(=スラング化された状態)は組織で内面化された状態だ!!」

という衝撃が走った経験が最高でした。コミュニティ最高です。

※上記は事実を元にしたフィクションで、現実で生まれたメタファーとは異なる表現をしております。

組織におけるふりかえりでSECIスパイラルが起きたお話

スクラムをやっていない組織でのこと。

ふりかえりをすると、自分たちで気づいていないけど、他の人からみたらすごく良いこと(=暗黙知)、があると思います。

言語化されたこと(=形式知)をふりかえりという場を通じて共有(=共体験)することで、参加者にとって共同化につながります。
既に言語化(=表出化)されているので、情報を共有することにより、他のチームの人が参考にしたり、それぞれの現場に合わせた形でマネ(=連結化)できるようにしたりしました。

その結果、組織の文化として浸透(=内面化)し、組織全体がいきいきすることに繋がっていきました。

上記はスクラムチームのスケールには1チームから、にも通じる話があるなぁとよく思うのですが、その話はまた別な機会に。

組織で起きたことを組織の外に共有することで新しい可能性が感じられたお話

これは、永和システムマネジメントさんやNTTコミュニケーションズさんが公開されていた、リモートワークハンドブック(下記リンク参照)を見て感じたお話です。

例えば下記のような、リモートワークの中で辛い体験があったことが包み隠さず公開されることは、個人的にとても刺激的で驚いたことを今でも覚えています。

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(↑NTTコミュニケーションズさんのハンドブック内から抜粋)

自分たちのストーリーを語れる状態になった結果、自分たちでこうしようと決断した結果が社会に共有されているこの状態は、暗黙知を形式知にして表出化までが進んだ状態と考えました。

良いことを広めるのは簡単ではなく、
現実としては、積極的に参照されて取り入れた組織(=連結化〜内面化)は少ないと思います。
ですが、自分たちで切り拓いた実践知を共有することで、他の人たちが自分たちが通った辛い体験をしなくても済むようにしたい、それぞれの現場でより良いリモートワークにつながるきっかけが少しでもあったら嬉しい、という、社会のアップデートにつながる、素晴らしい活動だと感動しました。

新装版『知識創造企業』や『ワイズカンパニー』の前書きには、若者のために橋を架けたお話が書いてあるのを添えて終わります。

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おわりに

2020年、僕たちはとても大変な思いもしたけど、リモート環境下でも、人類は暗黙知の共有ができるし、SECIモデルを体現することで、組織の良い文化をお隣さんや別の組織にまで広められることを確信できるところまでたどり着いていました。

インターネットやSNSの普及(情報発信の手軽さや伝わりやすさ)にリモートでのコラボレーションを身につけた私たちは、とある組織の事例が別の組織へ波及する可能性も高くなり、社会のアップデートにつながる活動がこれまで以上に促されることに期待できるのではないでしょうか?

SECIモデルのメガネをかけた2021年は、まだまだ続きそうです。

ご参考:#RSGT2021 野中郁次郎キーノートスピーチ『共感経営』 参考文献まとめ(MRYYさん)


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