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【イベントレポート】士業における生成AI活用〜東京初開催Project ハタフレ コミュニティイベント特別講演〜

2024年8月26日に東京・新宿にて、東京初となる「Project ハタフレ コミュニティイベント」を開催しました。

イベントでは、ハタフレ認定アドバイザーによるIT活用に関する特別講演が行われ、その後、懇親会を開催しました。
当日は約60名の方が参加し、ハタフレ認定アドバイザーと参加者同士の積極的な交流が行われ、大盛況のうちに閉幕しました。

本レポートでは、第一部の特別講演としてハタフレ認定アドバイザー 横須賀 輝尚さんに登壇いただいた講演の内容をお届けします。「士業における生成AI活用事例」と題して、士業が生き残るために必要なICT活用に関して、生成AIのお話も交えお話いただいた様子をご覧ください。

士業が行う代行業務の限界

士業とは、弁護人や税理士、司法書士などの仕事の総称です。「もともとは法律で守られた世界だった」と横須賀さんは話します。例えば、同じ内容ならばどの先生に頼んでも金額が一律という報酬規定がある時代が長くあったそうです。

しかしその後、徐々に報酬規定は撤廃され始め、状況が一変。さらに、インターネットの普及が追い討ちをかけたといいます。申請書類の作成や提出も士業の仕事でしたが、誰でも法務省や法務局のウェブページなどから書類をダウンロードできるようになりました。そのあたりから価格競争や価格破壊が始まり、士業の報酬の値が落ちていったそうです。

さらに、近年では民間企業の代行ITサービスの開発によって、士業の仕事がどんどん奪われていると横須賀さんは言います。

講演中の横須賀 輝尚さんと会場の様子

DXによる業務効率化と生成AIの活用

横須賀さんは、税理士や公認会計士といった士業が、生成AIに仕事をうばわれる仕事ランキングに上げられる常連であることについて解説します。

士業のDXは、例えば、ChatworkなどのビジネスチャットやICTツールを使ってどんどん進んでいます。しかし生成AIの登場で、「DXで仕事を良くする」「業務効率を上げる」という問題以前に、士業の存続そのものが危機に直面する事態になってきたというのです。

生成AIの入り口はユーザーの相談ごとです。チャットに相談を書くと回答があります。それはまさに、士業の仕事の入口と同じだと横須賀さんは指摘します。士業は顧客に相談を受けて始めて、仕事の依頼につながるため、その入口部分が生成AIで代替されてしまう可能性があるというのです。

一方で、生成AIの登場が勝機とみる流れもあります。生成AIで大幅な業務効率化を狙えるからです。例えば、税理士が税務相談受けた際、仕事を進める上で必要な情報を高度な生成AIで確認できるサービスが登場しているといいます。士業は、相談を受けると、法律や判例などの根拠をもって回答する必要があるため、仕事の中で調査をすることが多い仕事です。その調べ物の部分を生成AIで行うわけです。

また、「補助金エージェント」のようなAI補助金申請書作成サービスも出てきています。相談者からヒアリングしたデータを入れると事業計画書が作れるものです。行政書士が行うと20〜30時間かかる仕事が、このサービスを使うと5分〜10分で完成するそうです。

横須賀さんは、今後、顧客に言われたことをそのまま代行する仕事は、いずれ生成AIが全て代替していくと考えています。そして、これからはいかに相談者について考え、提案して必要とされる存在になるかがポイントになると話しました。

講演中の横須賀 輝尚さんと会場の様子

生成AIに関しては、皆同じスタートライン

最後に、生成AIを使って業務を効率化していく例として、横須賀さんが関わり開発した、生成AI「POWER MTG AI™」についてお話されました。

士業は相談者について調べることに膨大な時間を費やします。例えば建設業の相談者の打ち合わせには、建設業界に関して最低限の知識が必要です。POWER MTG AI™は、その調査を行うための生成AIです。

調査したい企業の企業概要や企業理念、沿革、事業内容だけはもちろんのこと、業界動向や競合他社、業界の課題と対策、業界の法規制・法対策、それから市場規模の成長予測などがわかります。また、事前情報として提案内容なども表示することもできます。通常であれば数時間から数十時間かかる作業をすぐに行うことができるそうです。

実際に生成AIのサービス画面を見せながら、業務を効率化していくことの重要性を強調した横須賀さん。何も考えずに現状維持でいると士業という職業自体が縮小していく可能性が十分にあると横須賀さんは話します。しかし、DXによって無駄な時間を凝縮し、自分で考える時間を作って相談者のために提案するしていくなどの価値提供を行うことで、生き残る道があると横須賀さんは話します。

POWER MTG AI™の画面

「生成AIに関して、全員スタートラインは一緒だ」と横須賀さんは言います。「ですから、士業の方は頑張って今、生成AIを経営に役立ててほしいのです。士業の育成を通じて、その先に企業や社会が良くなるといいなと願っています」そう話し、横須賀さんの講演が終わりました。

講演終了後には温かい拍手が送られました。横須賀さん、貴重なお話をありがとうございました。

*講演者
横須賀 輝尚さん
パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/WORKtheMAGICON行政書士事務所 代表
士業専門の経営コンサルタントとして、業界で最も注目されている一人。2007年、士業向けの経営スクール「LEGALBACKS」を創設し、2024年現在、全国3,000名以上の士業から相談を受け、その相談数は優に2万件以上を超える。代表作は「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)などがある。23冊20万部超の著者で、週刊ダイヤモンドや日本経済新聞などメディア掲載も多数。