Co-Lab Gearsという巣窟【前編】
そして、そろそろ僕は読者の疑問に答えなければならない。
「なんで高校生のくせに高校生支援団体に属してるんだ?」という。
というわけで、まず、「WAT'er」との出会いについて語っていく。
変な出会い
畢竟、僕は全日制の学校を辞めてから途方もなく暇だった。ほぼほぼNEETだった。暇で自由すぎる時間が増えたわけだけど、どこか物足りない。朝起きて、でも電源を抜かれたように無気力で、夢の中のほうが楽しくて。とりあえずまた目を閉じた。
そんな大きいような小さいような問題を放置して何ヶ月も過ごしていたわけだけれど、気づけば僕は毎日14時間も眠るような状態になっていた。学校に通っていた時は6時間睡眠だったのに。
一日の半分以上寝てるわけだから、その時の僕は人間というより「地球の酸素を消費するだけの肉の塊」というものに近かったように思う。そこで、さすがにこれはまずいと思って、僕が信頼している叔母さんにそのことを相談してみた。そして、叔母さんの口から、思いもよらなかったアイデアが飛び出してきた。
「ボランティアすれば?」
この一言が僕を突き動かした。
バイトという響きはどこか義務的で、利己的だ。対して、ボランティアという言葉は僕を無性に駆り立てた。自由で、利他的。周りの誰も踏み入ったことのない、新世界。ワクワクした。
早速その夜、ボランティア仲介サイト「activo」でボランティアを探した。
けれど、時間の経過とともに僕の心の中に波紋が広がっていった。
どんな魅力的な集団にも「大学生限定」の一言が添えられていたのだ。
高校生はボランティアをしてはいけないルールでもあるのだろうか?
しかし、諦めずに画面をスワイプしていく内に、
「あ」
あることを思い出した。
「なんか、高校生を支援してる団体の対象者に"大学生限定"って書いてなかったような。。。」
高校生支援団体であることから、無意識に選択肢から排除していたが、なるほどなぜかここには高校生でも入れそうである。
高校生が高校生支援団体に入る…想像するだけで未知と狂気の地平線が目の前に広がって、好奇心の赴くままに僕は走り出すことにした。
僕は生まれつき"やってはいけないことをやりたくなる"という恐ろしい病気にかかっている。
その病はこうして僕を巧みに操縦してしまったようで、気づけば僕は「高校生支援団体WAT'er」の面接の日を迎えていた。
面接
「僕は将来教育系の企業を立ち上げようと思っています。そう考えると、教育の実態というものを知っておく必要があります。僕はWAT'erという組織を通じて現役の高校生たちと関わることによって、教育の問題点を見つけ出したいんです」
嘘はついていない。
「RYUさんは、今どこの大学に通われてるんですか?」
「えっと.…..僕は高校生です。といっても高校には登校していないのでほぼNEETですが」
静寂の時間が通り過ぎた後、面接官が驚きの声を上げた。
「・・・えっそうなんですね…」
「僕は今高校3年生です。僕は、高校生を相手に行うサービスにとって必要な"高校生の視点"を提供することができます」
面接官はショートカットの穏やかそうな女性だった。
僕はそのあと彼女と幾らか言葉を交わし、WAT'erについての簡易的な説明を受けた。どうやらWAT'erの背後には"Co-Lab Gears"という大阪万博のために設立された学生団体の姿があるらしい。僕はまぁ、自分にとってはどうでもいいことだと聞き流した。
彼女は額を彩る黒縁メガネをクイッとなおしてから、
「では、他に質問はありませんか?」
「ありません」
「では、今度の水曜日、ミーティングの見学にいらしてください」
さらりと、そのように告げた。
僕はその日から、WAT'erの一員になった。
【前編】終わり。
【後編】では、僕が見てしまった、異様な体験の話をする。
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