Co-Lab Gearsという巣窟【後編】
起
僕は、呆気なく、そしてなにより問題もなく、いかにも自然にWAT'erの活動に参加していた。毎週のzoomミーティングにもほぼほぼ出席し、会議での発言にも慣れ、WAT'erのメンバーとも馴染んできた頃、
「今週の土曜日、Co-Lab Gearsのメンバーと〇〇大学で集会があるんだけど、RYU君来る?」
そう誘われた。
Co-Lab Gears。
たしか、WAT'erの母体団体だったか。
「はい」
二つ返事で承諾し、
とりあえず、行ってみることになった。
集会
”月に一回、メンバー同士が顔を合わせる集会がある”
この情報は、実をいうと面接の時から知っていた。
ただ、その時僕は、その背後に潜む(というか堂々と佇んでいたのに僕が気づかなかっただけなのだが)Co-Lab Gearsという集団について何も知らなかった。まさしくそこは、希望と可能性に満ちた異様な空間だった。
とある大学の一室を借りて、クーラーの冷気と無機質な白い壁に包まれた空間に、"彼ら"はいた。
"彼ら"同士はほとんどが顔見知りなようで、僕は意を決して輪の中に入る。久しぶりに新参者の感覚を味わった。
WAT'erのメンバーの方に紹介してもらって、なんとか何人か"友達"?というか"先輩"?ができた。
そのうちの一人が、S先輩である。
ラグビー選手ばりの巨漢の持ち主で、僕が「哲学的な小説が好きです。」と言った時に、周りの先輩方が「(クセモノきたぁ…)」という表情を額に落としたのに対して、S先輩は目を輝かせて「小説紹介してよ!」と声をかけてくれた。
話をよくよく聴いてみると、古今東西の書物を読破している教養深い人物で、温厚で知的に改造された令和ジャイアンみたいな人だった。あ、ジャイアンなのは見た目だけで、もはやそれはジャイアンじゃないか。
また、その後テーブルでぼ~っとしていると、話しかけてくれた人がいた。N先輩である。とりあえず、清潔感とイケメンの暴力だった。湖面のように落ち着きがある人物で、僕の生い立ちやモンゴル放浪譚を興味津々で聴いてくれた。好き。
そして他にも色々な先輩方ともお会いし、その後、「自己紹介ターイム!」が始まった。一人ずつホワイトボードの前に立ち、自己紹介をするのだ。
そこで僕は、面白いものを見た。
自己紹介ターイム!
何を言っているかは分からない。いやどうでもいいことだ。
ただ、僕は茫然として星を眺めていた。
星は、聖なる意識を纏って、牧師のような発声で我々に語りかけている。
人は、いや少なくとも僕は、彼のことをカリスマと呼ぶ。
N先輩はカリスマである。
先刻話した時は、森のごとく静かな雰囲気を持っていたが、今はそれが空間を惹きつけている。
僕はただ木のそばに立っていたつもりが、改めて自分を客観すると僕は広大な森に包まれていた。
独特なリズムの語り口で、とうとうと言葉を滑らせていく。
「この人は今後一緒に仕事をするかもしれない」直感がそう告げた。
次は、バリバリッッと音がした。ような気がした。
その人が登壇した瞬間に、固い塊みたいな半透明な色の膜が強引にこの場を支配してしまった。
一瞬で空気が変容し、皆が固唾を飲んだのが容易に分かった。
S先輩もまた、カリスマだった。
その雰囲気とは裏腹にジャイアン先輩は、大して言葉を重ねることはしなかったが、僕を圧倒するには十分な時間はあった。
終わり
回想してみると、僕は正直「自己紹介タイム」の時ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていただろうと思う。
嬉しいような、怖いような。
やっと、探していた"何か"を見つけられたような気がしたからだ。しかも二人も同時に、である。
何か、とは何か分からない。
ひょっとしたら勘違いかもしれない。
だからこそその”何か”を、今後の彼らとの交流を通じてもっと深く探っていきたいと思う。
可能性と希望のWAT'er。
そして、Co-Lab Gears。
僕は、Co-Lab Gearsを、化物の巣窟を見つけ、化物もまた、照りつけるような眼差しで、僕を睨みつけた。
たぶんもっと抽象的で深い話↓
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