球速と回転数(第2回)
こんにちは。前回の続きで、今回は球速と回転数の相関(打者目線)とテクニックについて深掘りしていきます。
VS 打者
前回の後半にお話しした、直球の『球速vs回転数』に関して相互作用がある事が分かりました。直球の球速が上がれば相互的に回転数も上がります。
MLB平均(2022年)
では打者目線で球速と回転数がどのように見えているかお話ししましょう。
打たれやすい直球
打者は各球速に対して、どのくらいの伸びてくるか(実際にはホップしません)を予測しその軌道にバットの軌道を合わせてきます。
要するに、いくら速い球を投げようと球速相応の回転数だと打者にコンタクトされやすいという事です。
打たれにくい直球
逆に、直球の被コンタクト率が高い投手の回転数は平均値より高いという結果になります。
例)DeNA 今永投手 球速: 154km/h 回転数:2625rpm
侍ジャパン・今永、自己最速タイ154キロ 最高回転数2625、メジャーの最高値を上回る伸び/WBC - サンスポ (sanspo.com)
上記の2022年度MLBの平均球速と平均回転数のグラフより、154km/h (96.25mph)の平均回転数は約2300rpm。今永投手の回転数は平均より325rpm多く、この数値はメジャーで最高峰の数値となります。
上のグラフは各球種の変化量を表したものになり、赤色の点が4シーム(直球)になります。プラスの数値が大きいほどホップ成分が大きくなり、視覚的に『伸びる球』と分析できます。
3月のWBCの試合において、大きい点(MLB平均:43cm前後)に対し縦変化平均51cmという驚異的な数値をたたき出しています。
回転数を上げるためのテクニック
最後に回転数を上げるためのテクニックをざっくりと紹介します。
投手自身が投げるボールに影響を与えるのは基本的に、足を上げるところ~リリースポイントまでとなります。よって一番最後にボールに力を与えられる『リリースポイント』にフォーカスしていきます。
ボールに効率よく力を与えるためのポイントは、
①ボールの中心に力を伝える。
②正しい方向(キャッチャー)にまっすぐ力を伝える。
こちらを踏まえて、各ポイントを紹介していきます。
1.握り
人差し指と中指:指1本分の間隔をあけましょう。またボールが抜けにくくするため両方の指の内側に圧力をかけましょう。またリリース時はできるだけ2本の指が伸びないように屈曲の姿勢を保ちましょう。リリースの際に伸びきってしまうと高めに抜けやすくなります。(意図的に投げる高めの4シームも2本指の屈曲姿勢を保つことにより回転数の多い高めの直球が投げれます。
親指:第一関節から先端までの側面をシームにかけるようにしましょう。シームが親指の腹にかけてしまうと、手首が内旋しやすくスライダー回転になりやすいです。
手のひら:近年はボールと手のひらをしっかりとくっつける方が主流となっております。理由は隙間を作るよりもよりボールに力が伝わりやすいからです。また人差し指と中指の付け根(第三関節)でボールの中心を押すイメージで投げるとよいでしょう。
2.リスト
スナップを効かして回転数を与えると、むかし教わったことがあると思います。それは間違いです。
スナップを効かせる(背屈→屈曲)行為は抜け球の原因にもなり、またメカニクス的に解説をするとスナップの意識が肘を前に押し出す投げ方を助長してしまうためパワーロス並びに肘や肩の故障にもつながります。
プロ野球選手のリリース映像を見てもらえれば分かりますが、ほとんどの選手は直球で手首の過度な背屈は起こりません。
では何が必要か。。
手首を固定する能力、アイソメトリック収縮と考えてます。
投げる動作において手首が背屈してしまう事は、自然に起こりますのでそれにアイソメトリックに耐える練習をすることをお勧めします。
具体的には、プライオボール等の重いボールなどを投げてリリース時を意識するとよいでしょう。
3.腹圧
最初に説明した、
①ボールの中心に力を伝える。
②正しい方向(キャッチャー)にまっすぐ力を伝える。
において『腹圧』も重要なポイントとなります。
要するに、おなかが抜けて腰(腰椎)が反り、末端に力が入りにくい体勢になります。腕の力だけで上記のポイントをカバーするには相当な腕力が必要となります。腕だけではなく『体幹』の力も使った方がよりボールに力が伝わるでしょう。
4.利き腕の軌道
最後に100%の力をリリース時に伝えるためには利き腕がまっすぐの軌道で運ばれなければなりません。イメージとしてはバッティングマシーンのアームでしょうか。これは真上から投げろというわけではなく、頭の位置に対して正しい距離間で手の通り道を作ってあげるという事です。
少し難しかったでしょうか。。。
リリースの映像を見てもらえれば分かりますが、ほとんどのスピード投手は頭の位置がグラブ側に倒れています。頭の位置を倒すことにより、利き腕の通るスペースができ、①、②が実現しやすくなります。
逆に、利き腕の通るスペースが作れない場合、
腕の遠回りする
↓
力の向きを修正するために引っ掛ける形になる
↓
(右投手の場合)右打者のアウトコースのボールゾーンにワンバウンドもしくは右打者の危険ゾーンに抜け球となる確率が上がります。
特にインステップ気味の投手に多く見られる現象です。(今年渡米した甲子園春夏優勝投手もその傾向がありますね。。)
結果、コントロールできるリリースポイントの幅が狭くなります。
今回は、かなり深堀しましたので説明が分かりにくかった事もあったと思いますが投球においてとても重要なことについてお話しさせていただきました。
次回は、話題のラプソードについてお話しします。