【「地域をつなげる力研究会」Vol.9 イベントレポート】「品川をつなげる30人」の軌跡 〜なぜ、どのようにして自力で 「つなげる30人」を立ち上げたのか?〜
「地域をつなげる力 研究会」とは?
一般社団法人つなげる30人が主催し、全国の「つなげる30人」や、これから「つなげる30人」を立ち上げたい方、研究対象等として関心がある方を主な対象として、全国の「つなげる30人」メンバーの中でも特に群を抜く「つなげる力」を持つ「トップツナガリスト」をお招きし、様々なノウハウ・リソースを共有し、相互に学び合い、助け合いながら切磋琢磨することを目的にしたオンライン定例研究会です(毎月第一水曜夕方に開催します)
この全国のつながりを通じ、このコミュニティが面になり、地域間が連携したコレクティブインパクトを創出するキッカケとなることを期待しています。
今回は、2024年8月7日(水)に開催された第9回目の内容をレポートします。
ダイジェスト
「品川をつなげる30人」の成功は、地域コミュニティの力を最大限に引き出すための細心の準備、企業、自治体、NPOの信頼関係構築、そして集合的インパクトを生み出すことへの飽くなき挑戦によって実現されました。立ち上げに際しては、多くの困難がありましたが、それらを乗り越えた経験は、他地域でのプロジェクト立ち上げにも応用可能な貴重な学びとなるでしょう。
ゲスト
小金隆二氏
品川をつなげる30人 プロデューサー
小金財産株式会社 代表取締役
出羽 桃子 氏
品川をつなげる30人 ファシリテーター
M’s Constellation合同会社 代表
株式会社 Curiopace 代表取締役
一般社団法人セールスコピーライティング普及協会 理事
関 光博氏
品川をつなげる30人 事務局長
株式会社GMW 取締役 システムエンジニア
プロジェクト立ち上げの背景と経緯
「品川をつなげる30人」は、2016年に渋谷区で始まった「つなげる30人」モデルを基に、地域社会の課題を解決するためにスタートしました。品川でのプロジェクト立ち上げは、地域内外での多くの挑戦を経て実現しましたが、その背景には、地域社会への強いコミットメントと深い信頼関係の構築がありました。
小金 隆二氏がこのプロジェクトを品川で立ち上げようと決意したのは、2019年に地域の青年会議所(JC)に参加したことがきっかけで、当時から地域の人と人、企業と企業をつなげることが、地域の持続可能な発展に必要だと感じていました。そんな中、渋谷での「つなげる30人」の活動を知り、これを品川でも展開することを考えました。
立ち上げのための具体的なステップ
1. ステークホルダーとの対話: 小金氏はまず、地域の企業や自治体、NPOとの対話を始めました。しかし、当初はプロジェクトの意義や目的を理解してもらうことが難しく、協力を得るための説得に多くの時間がかかりました。特に、企業側は地域貢献活動を通じた具体的な成果が分かりにくいため、参加に対して慎重でした。
2. 区長へのアプローチ: 立ち上げの大きなステップとなったのが、品川区長へのアプローチでした。小金氏は、区長との面談を実現させました。そこでの対話を通じて、区長からの応援を得ることができ、プロジェクトの信用度が一気に高まりました。区長との連携は、プロジェクトの運営において、自治体との強力なパートナーシップを築くための重要な基盤となりました。
3. 1Dayイベントの開催: プロジェクトの認知度を上げ、さらなるステークホルダーを巻き込むために、小金氏は2023年9月に、1Dayイベントの開催を計画しました。このイベントでは、プロジェクトのビジョンを具体的に示し、地域の住民や企業が実際にプロジェクトに触れ、体験できる機会を提供しました。
このイベントの準備は簡単ではありませんでしたが、関光博氏が中心となり、SNSや地域メディアを駆使して情報を広め、多くの参加者を集めるために奔走しました。特に、企業を集めるための営業活動は困難を極めましたが、彼のマーケティングスキルと粘り強い交渉力が功を奏し、最終的には想定を超える参加者を集めることに成功しました。
苦労とその克服
1Dayイベント開催後、2024年春の本番プログラムスタートを目標に、本格的に企画を練り、30人を募集し、2024年5月からスタートしたしました。その過程では多くの苦労がありましたが、その度に創意工夫を凝らし、克服をしていきました。
1. 信頼関係の構築: 地域内での信頼関係を築くことは、最も大きな課題の一つでした。企業は、プロジェクトに参加することで得られる具体的なメリットを求めており、自治体は地域全体の利益を考えて動いているため、両者の目的を調整する必要がありました。小金氏は、何度も企業や自治体を訪問し、地道に信頼を築いていきました。
ある企業の経営者は、当初プロジェクトに懐疑的で、なかなか協力を得ることができませんでした。しかし、小金氏がその企業のCSR担当者と何度も話し合い、プロジェクトのビジョンと、企業がどのように地域社会に貢献できるかを具体的に示したことで、最終的には協力を得ることができました。
2. 財政的なプレッシャー: プロジェクトを進めるには、資金が必要不可欠です。しかし、地域貢献活動に資金を出すことに慎重な企業が多く、最初の資金調達は難航しました。関 光博氏は、1Dayイベントの参加企業を中心に企画段階から議論を重ね、適切な資金調達方法を模索しました。また、企業へのプレゼンテーションを繰り返し、少しずつ理解と協力を得ていくことで、プロジェクトの運営に必要な資金を確保することができました。
3. プログラム進行における課題: 「つなげる30人」プロジェクトは、多様な背景を持つメンバーが集まるため、プログラムの進行には一貫性と柔軟性が求められました。出羽氏は、プロジェクトメンバー同士の対話を促し、それぞれの意見を尊重しながら、共通のビジョンに向かって進めるように努めました。
特に、ファシリテーターとして、プロジェクトの目的を参加者にしっかりと理解してもらい、彼らの共感を得ることが重要でした。出羽氏は、対話を通じてメンバーの意見を引き出し、それをプロジェクトの進行に反映させることで、全員が納得のいく形でプロジェクトを進めることができました。
今後の展望と学び
「品川をつなげる30人」の成功は、他地域での展開にも応用可能なモデルを提供しています。小松市や福島市で計画されている同様のプロジェクトでは、品川の成功事例を参考にし、信頼関係の構築やステークホルダーの巻き込み方、財政的な戦略など、多くの学びを取り入れています。
今後、品川のプロジェクトはさらに発展し、地域社会のシビックプライドを高めるための活動が継続される予定です。小金氏たちは、これまでの経験を活かし、新たな地域課題に取り組むためのプロジェクトを次々と立ち上げる計画を進めています。
まとめ
今回のイベントは、「つなげる30人」の活動の裏側にある苦労や成功の秘訣を深く掘り下げる貴重な機会となりました。立ち上げの経緯や困難を乗り越えたエピソードは、他地域で同様のプロジェクトを立ち上げる際に役立つ実践的な教訓を提供しています。「つなげる30人」のモデルは、地域コミュニティの力を最大限に引き出し、持続可能な地域貢献の枠組みを提供するものとして、今後も多くの地域でその価値が実証されることが期待されます。
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