地域をつなげるイノベーター列伝 Vol.4「ひろしまをつなげる30人」プロデューサーが語る「未来の当事者の作り方」とは?〜前編:口説き文句は「これは必ず広島のためになる!!」〜
地域で活躍するキーパーソンと対談し、行政・企業・NPO・市民といった様々なセクターをつなげていくことについて考えていく連載企画「地域をつなげるイノベーター」vol.4
今回は2021年から始まった「ひろしまをつなげる30人」を主催する一般社団法人広島県観光連盟(以下、HIT)事業本部長 兼 チーフプロデューサーの山邊昌太郎さんをゲストとしてお招きしました。
インタビュアーはSlow Innovation株式会社「つなげる30人」プロデューサーの加生健太朗と、同社コミュニティマネージャーの内英理香です。
コロナ禍での県観光連盟就任。「つなげる30人」との出会い。
加生:早速ですが、山邊さんが「ひろしまをつなげる30人」を立ち上げるまでのお話と、運営をしていく中で感じている事などについてお聞きしていきたいと思っています。
そもそも、就任された2020年4月はちょうどコロナの緊急事態宣言下でしたね。
山邊さん:HITの就任前は、広島県の観光は右肩上がりで、平和公園・宮島という2大観光スポットがあるおかげで、毎年過去最高の観光客数を叩き出していました。しかし、「何かをやったから伸びた」という事実はありませんでした。
一方、ビジネスとして見た時に、リピート客が少ないという致命的な課題があり、自分の中では、魅力的な観光資源をたくさん作ることが私たちが取り組むべき最も重要なことだ、と考えていました。
これはコロナがあろうがなかろうが取り組むべきことでしたが、ある意味この時期だったからこそ、取り組むことができたんだと思います。意識を変革するという意味では、10年20年先を見据えた時にこのコロナ禍の2年は貴重な時間でした。
加生:そのような中、「つなげる30人」の事を知るまでの経緯や、そしてなぜ、広島でも始めたいと思われたのですか?
山邊さん:そもそも、これまで多くの仕事に関わる中で、世の中を変革するには沢山の「当事者」が必要であると感じてきました。それが一人よりも二人、二人よりも三人と、その数が多ければ多いほどインパクトが出せると信じていました。
ですので、HIT就任時、広島の観光を大きく変革するためには、「観光」を観光事業者だけのものにせず、数多くの人たちが真剣に広島の観光をよくする取り組みに当事者として関わってもらう事が重要だと考えていました。
そのために、特にメンバーの意識改革のために伝えていた3つの大事な事があります。
1.圧倒的顧客志向で行こう
2.爆速で行こう(失敗するのも爆速)
3.ワクワクしよう
です。
例えば、県民におもてなしの心を持ってもらう事を目的として、「おもてなしシール」を配ったとしましょう。しかし、それだけでワクワクしたり、県民の当事者意識を育む事は難しく、結局、他人事となり、定着することは中々難しいでしょう。
そうではなく、仮に県民一人一人が、「どのようなおもてなしをしたら外国の方が喜んでくれるだろうか?」や「また広島に来たいと思ってもらうにはどうしたら良いだろうか?」と考えてくれるようになったらどうでしょうか。
そして、その結果、外国人の方に「広島がとても元気に挨拶をする街」という印象を持って欲しいから「英語挨拶スタンプカード」のように、子供が外国人を見た時、元気に”Nice to meet you!”と挨拶をするとスタンプがもらえるような企画が生まれたとしましょう。
その効果は、やってみないと分からないですが、このようなプロセスを通じ、一緒に考えたり、行動したりすることで、未来を考えるワクワク感や当事者意識が醸成されていくのだよ、と伝えてきました。
そして、ちょうど同じ頃、知り合いを介し、「つなげる30人」の話を聞いたのですが、「ものごとを根本的・本質的に捉え、問題解決へと働きかけるシステムシンキングが自立を生む」という私の思考にフィットしました。
最初は観光をテーマにしてやろうと思ったのですが、集まった広島の企業が自由に発散する方が、広島を良くしたいと思える当事者が増え、その当事者たちが広島を動かす可能性を感じました。
そこであえてテーマを観光に絞らず「広島の未来をつくる当事者を増やそう!」として、「ひろしまをつなげる30人」を始めたいと思いました。
加生:立ち上げるまでにどのようなストーリーがありましたか?
山邊さん:30人メンバーを集め始めた際、半信半疑の方も多かったです。「つなげる30人」は私の思考にははまりましたが、定形のプログラムがあるわけでもないため、「これをやります」「これが成果物です」といった明確なものがあるわけではありません。この取り組みに対して賛同してくれる意思を持った人を集めることが大切だと思いました。
こういったことから、トップダウンでなければメンバー集めは進まないと思い、多くの知り合いの社長や、共感してくれた方々の紹介、そして高校の同級生にも声をかけました。
時には飲みながら、「これは必ず広島のためになる。是非一緒にやりましょう!」と盛り上がりながら仲間を増やしていき、結果的に2ヶ月くらいで人を集めました。
リアル開催にこだわったことで見えた“顧客志向”の本質
加生:コロナ禍で他のエリアがセッションの8割をオンラインにしている中、広島はリアル開催にこだわっていました。その想いを是非、聞かせて下さい。
山邊さん:確かにオンラインでもある一定水準のものはできると思いますが、感動レベルに至るには、空気感や肌感が大事だと思います。また、参加者の中にもリアルを渇望しているメンバーが多かった事もあり、私はリアルでやろうと思っていました。
結果的にリアルでやって本当に良かったです。
やっぱり顔と顔を突き合わせて、雰囲気が分かると、関係性が抜群に近くなり、チームになります。
2022年に入り、最終回の発表が迫っていました。巷ではオミクロン株流行に伴う第六波に突入し、オンラインでやるか、延期するか Slow Innovation さんに相談した際、「まずオンラインでやって、その後リアルでやればいいんじゃないんですか?」と言っていただいたんです。
私は、普通にリアルかオンラインのどちらかで締めくくらなきゃと思っていたので、「え?2回やっても?そんな贅沢してもいいんですか?」と言ったのを記憶しています。
私たちは、観光客の皆さんにリピートをしていただくために、大きくは「お客様を知る」そして、「お客様の期待値を超える」という2つの価値観を大事にしています。
今回のSlow Innovationさんの取り組みは、仲間とも「期待値以上の満足ってこういうことだね。」と話していました。
内:とても嬉しいです。
私たち運営委託側も、皆さん自身が真の当事者としてのリーダーシップを発揮していくプロセスなど、毎回広島からたくさんの気付きや発見をいただいています。
一般的には、主催者は後ろで見ている事が多いのですが、山邊さんは参加メンバーの中に積極的に入っていかれており、自らがメンバーとの関係性を大切に紡ぎ、相互の良さを引き出し合いながら影響力を発揮していく姿から、新しいリーダーシップのあり方を学ばせていただきました。
メンバー自身の想いを元に「プロジェクト起案」を発表した際にも、1人1人の発表者に「それなら、面白い取り組みをしている人を知っているから直ぐに紹介するよ」と声を掛けられていたり、Slack(メンバー全員が閲覧・やりとり出来るチャット空間を設けています)でも、それぞれの投稿に「あの人に会っておいでよ」「あの会社がそういうことに興味を持ってるよ」とコメントくださっていたり。
まさに、大テーマ「広島の未来をつくる当事者を増やそう!」に向かって誰よりもワクワクしながら、信頼の関係性をベースとした本質的な取り組みは何か?とじっくり向き合ってこられた半年だったのではないかと思います。
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