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第3夜 鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス… その続きは⁉️

☆ あの超有名川柳の元ネタとは? ☆

鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス
鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス

おなじみ織田信長、豊臣秀吉、徳川家康を歌ったといわれる江戸時代の川柳ですね。

この川柳は3人のイメージをばっちり表したもの

実はこの詩にはまだ続きがあるって知ってました?
この後、

鳴かぬなら 鳥屋へやれよ ホトトギス
鳴かぬなら 貰って置けよ ホトトギス

と続きます。 ”鳥屋へやれよ”、というのは売ってしまえ、ということで、その声の主は第11代将軍徳川家斉。
そしてどうせ売るなら俺にくれ、というのがその他大勢の人々のこと。
要するに昔の人は偉かったのに、最近はすっかり拝金主義がまかり通り、お金万歳、経済万能になってしまった、と田沼時代の世相を皮肉った歌なんです。

田沼時代は商業が盛んになる代わりに拝金主義や賄賂が横行した

元々3偉人の川柳があって後から2つが加わったのか、それとも最初から5つだったのかは今一つ分からないのですが、それでもこの川柳の元ネタははっきりしています。
実はこの有名な詩の元ネタは甲子夜話(かっしやわ)という本。


☆ 江戸時代ファイアの成功者 松浦静山 ☆


著者は松浦静山という人なんですけど、今の長崎県の平戸の大名で、実は明治天皇の曽祖父という人結構偉い人。
若いころは藩政改革を積極的に行った名君だったんですけど、中央政界デビューしようとして色々政治工作をするも見事に失敗。
もう働きたくない!といって40代でファイアしちゃったというある意味困った人なんですね。

一番右の人物が松浦静山

しかしこの人はこの後が凄いんです!
すっかり暇になった静山は、昼は武芸の稽古に励み、53歳で心型流剣法を皆伝。
更に68歳で日置流射術を皆伝するほどの腕前となります。

更に、夜には暇にあかせて執筆活動しまくり、著作数十冊というベストセラー作家の仲間入り。
更に趣味にあかせて全国からかき集めた蔵書は3万冊に上りました。

☆ あれもこれも全部甲子夜話が元ネタ ☆

そしてその代表作が前述の「甲子夜話」なんですね。
これがまたすごい大作で、なんとその数正篇100巻、続篇100巻、第三篇78巻!時代的には1821年から1841年までのちょうど20年間で、教科書的に言うと田沼意次の時代から松平定信による寛政の改革の時期に当たります。
大塩平八郎の乱とかシーボルト事件なんていうのがあったあたりですね。

大石平八郎の乱は幕府の衰退を示す代表的な事件となった

先ほどのホトトギスの話もそうですが、ともかく東西の面白話が満載で、例えばイカの墨で字を書くと1年くらいで文字が消えてしまうので、ずるをすることを「イカサマ」と呼ぶ、なんていうのも甲子夜話が元ネタ。
そのほか色々なネタ元につかわれており、例えば有名な野村監督の名言「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」なんていうのも、甲子夜話が元ネタだったりします。
あと有名どころでは曽呂利仁左衛門のお米を倍々ゲームでもらうという頓智話の元ネタともいわれていますね。

そういえばこの時期に米沢藩を立て直した上杉鷹山っていう大名がいるんですけど、松浦静山は甲子夜話の中で、この上杉鷹山を激賞してて、おかげで江戸時代の代表的な名君として戦前の修身の教科書をはじめ、現代でも度々ビジネス書などにその話が出てくる有名人になっています。
松浦静山の人物評は結構定評が高く、単に面白話だけでなく道徳やビジネスリーダー論にまで影響を与えているんですね。

ビジネス書の常連ともいえる名君上杉鷹山もある意味甲子夜話が元ネタ

☆ 実は日本で初めて外国国旗について書かれた本でもあった ☆

当時はシーボルト事件に代表されるように鎖国中の日本に対する外国の脅威が高まっていた時代ですが、さすが世相への関心が高い静山のこと、世界情勢についてもいろいろな記録を残しています。
中でも世界の国旗についていろいろと書いていたりするのですが、これがまたマニアックで、オランダの軍艦の種類と軍艦旗、ロシアの皇帝旗、海軍旗、国旗、商船旗(これが現在のロシアの旗)などさまざま種類の旗を図で示しています。
因みに松浦静山は日本で初めて外国の国旗を手に取った人とされ、甲子夜話は世界の国旗について書かれた日本でもっとも古い書物でもあるのです。

そんなわけでこの甲子夜話という本、今でいえばブログかXやThreadsみたいな感じで、その当時の世相やいろんな雑学なんかを延々とつぶやいたものといえるかもしれません。
そう考えると、さしずめ松浦静山は江戸時代のインフルエンサーといえるかもしれませんね。

ということで今宵のお話はこの辺で。
また第4夜でお会いしましょう。

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