引っ越し3日目 異臭煙事件のお話

一人暮らしを始め、3日目の出来事である。
荷解きも終わり、スーパーで買ってきた惣菜ではなく、料理をしようと考えた。
米を研ぎ、おかずは冷凍食品にしようと考えていた。
理由は最初の料理で失敗したくないからだ。

チキンナゲットの冷凍食品を買った。
安かったからということと、まず間違いなく美味しいからだ。
チキンナゲットがまずかったことなど、これまでの人生でなかったし、まずいという人も、これまでの人生にはいなかった。
私は、絶対に成功すると確信していた。

調理開始

それでも石橋はたたいて渡る。
この手のチキンナゲットであれば、3個くらいを500Wで1分30秒も温めればおいしくできあがる経験があった。
しかし私はこれまでの経験に頼らずあくまでこの商品推奨である、パッケージ表示をきちんと確認した。
やはり、500Wで1分30秒であった。
レンジで温めた。

違和感

早速レンジを開け、食べてみた。
先ず感じたのは、硬い。ここまで硬い料理を私は食べたことがない。
ナゲットの皮はかろうじて剥がれるのだが、肉の部分は、生のにんじんより遥かに硬かった。
これは、てっきり温める時間を間違えたものだと思って、再度パッケージを確認するが、間違っていない。
レンジの設定も間違えていない。
この時の私は、冷静ではなかったのかもしれない。
冷凍食品パッケージ上のオーブン時間が目に入ってしまった。

大惨事

オーブン時間にはこのように書かれていた。
[500W 7分]
私は、以下のように考えた
[このオーブンの時間で設定しないといけないのか、ま、7分温めたところで大した問題にはならないし、焦げたら捨てればいいや]
・・・さぁ、料理経験の多少ある人ならオチがわかるだろうか。
そう、焦げる。しかも焦げるだけでは済まない。
とんでもない量の煙が出る。
ただの煙ではない。独特の刺激臭の煙だ。
美味しいチキンナゲットが出来上がると確信していた私は、出来上がるまで、隣の部屋でYouTubeを観ていた。
数分後、異臭を感じる。焦げ臭いのだ。
なんだろうと思い、匂いの方角に向かう。
すると電子レンジから、煙が漏れ出ているのに気が付いた。
冷や汗が走り、レンジの蓋を開けると、大量の煙が一瞬で視界を覆った。
レンジを開けたというのに、レンジは温め続けている音がする。
慌てて、コンセントを抜き、レンジの中を確認した。

後処理

レンジの中には異臭を放つ黒い物体があった。
黒い物体は皿にへばりつき、レンジの内壁にはオレンジ色の刺激臭を放つ汁が付着していた。
入居3日目にして、新居の匂いは一切なくなり、とんでもない刺激臭の物件に住むこととなった。
幸いだったことがある。
レンジの上には火災報知器があったにも関わらず、作動しなかった点だ。
入居3日目で火災事件なんてあったら暮らしづらい。

後日談

今日でかれこれ1月と半分が過ぎるが、本当に入居して一か月は刺激臭が少なからずした。
香水やファブリーズ、たおるを水に浸して振り回したりもしたが、なかなか効果が出なかった。
ずっと換気をすることが、一番効果的だったであろう。

当時は最低最悪の思い出だが、今思い返すと、あれも良い思い出だったと思う。

教訓としては、あのチキンナゲットだけは二度と買わないということ。
他の冷凍食品は問題なく調理できたため、あのチキンナゲットだけは、本当に、二度と、生涯買わないと心に決めた。



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