「装甲騎兵ボトムズ」の感想
「装甲騎兵ボトムズ」の感想:自分で選択して静かに真っすぐに歩く事は、正しく美しい。
キリコ・キュービーという男の辛い過去、戦争や巨大な存在によって左右された生活と人生…そしてキリコの選択…それらを通して感じたのは
「今がどういう過程にあるのであれ、正しいと考える道を歩む事が希望だ。」という事。
組織の非人間性に嫌気がさし、愛する人や真摯な人の為に歩みを決め、神に従わず自分の道を歩む…キリコの静かな真っすぐさに生きる希望を見いだせた。
「組織の構造的な非人間性」
ボトムズに登場する組織の上層部はことごとく兵士を機能や資源としか考えていません。しかし、それは目的達成に必要な事であり、組織の本質であもあります。司令部はみんなエゴで動いています。また、兵士や人を機能や資源としか思っていません。ただ、それは戦争に勝利するために必要な事であり、またそのために兵士がいてその上に指揮官がいる。組織の非人間性は必然であり、組織は兵士を資源と捉えて目標を達成する必要があります。これは組織…言い換えると「支配」の負の側面です。
「愛する人と真摯な人間にたいする優しさ」
ときに無機質な、言葉や態度から冷徹な機械のようにも見えますが…キリコは真摯な人間や愛する人間に精一杯に出来る事を尽くします。
バニラたちへの気遣い、フィアナへの愛、自分を憎しむゾフィへの許容、バイマンへの「やせがまんはよせ」、テイタニアへの気遣い。イプシロンの誇り高い挑戦を真正面から受け止める。
みな、キリコがどこかで大切だと思う事への真摯な態度であり…優しさや愛なんだと思いました。
「神にも従わない」という反骨心
キリコは徹底的に支配を嫌い、そして自分がやるべきと考えた事を貫きます。これは「野望のルーツ」の最後にキリコは「たとえ神にだって俺は従わない」と言い放ちます。以後キリコがあらゆる組織やあらゆる思惑に従わず、ついには神を殺すにいたった点からも分かる事でしょう。それは時にトラブルを招きつつも、最終的に誰もキリコを従えることはできません。
TV版では、戦争に利用される事を避ける為に、コールドカプセルでフィアナと共に宇宙を旅することを選択。キリコはどこまでも支配を拒絶しています。また、神の後継を拒否した姿から、支配する事も嫌悪していたことがうかがえます。
あくまでも自分がやりたいことをやり、人には強要しない。
「キリコの背を追う」
キリコの現実を認めて、前に進む姿は…私の追うものだと思いました。
キリコは自由と愛するものや真摯なものの為に戦います。
ときに絶望したり、ときに思惑にはまったり、ときに悲しい戦いを乗り越えたり…静かに、絶望から立ち上がり、自分に出来る事を重ねて進む。今の自分を肯定し、前に進む。まさに自分の目指すものです。
組織や支配者の腐敗をときに倒し…ときに回避し、愛する人たちを守り、前に進む。ワイズマンの思惑でフィアナを愛する事になったことも受け入れ、それでも自分の歩みを当然と受け止めて、立ち上がり、前に進む。
キリコ・キュービーは、希望をかきたてました。
バイマンやフィアナやバニラやテイタニア、彼らはキリコのような生存能力はないものの皆、キリコに続くものだと思っています。
真っすぐに静かに、前に進むキリコは私の希望足り得ました。
「残った課題」
では、全ての政府や組織は不要という事か…となりますが…私は組織や政府が社会生活で大きな役割を果たしている事も理解しています。
ただ個人の自由、組織による恩恵、この二つの二律背反した状態を解消する方法が、私の探すべき課題です。
「装甲騎兵ボトムズ」良い作品です。
【参考情報や視聴元】
視聴済み作品(2020/12/30)
・「装甲騎兵ボトムズ」TVシリーズ全て
・野望のルーツ
・ペールゼンファイルズ(劇場版)
・ラストレッドショルダー
・赫奕たる異端
・孤影再び
利用したサイト
https://www.b-ch.com/
「装甲騎兵ボトムズ」のwiki
装甲騎兵ボトムズ