「親孝行を志し、一級建築士から弁護士へ|専門知識を武器に活躍する公房法律事務所 弁護士 福島 敏夫先生へのインタビュー」
検察官や外資系企業勤務など、これまでAmiの取材では弁護士以外の職業から転身される方にも多く取材してきました。今回取材させていただいた、大阪市北区にある公房法律事務所の代表弁護士 福島 敏夫先生も、異業種から転身された弁護士の1人です。
大手建設会社で一級建築士として働いてきた福島先生は、ある出来事をきっかけに弁護士の道へ進んだそうです。
今回は、弁護士業務に一級建築士や社会人経験を生かすメリットや、ストレスの乗り越え方、経営に関するお悩みについてお聞きしました。ぜひご一読ください。
(聞き手:岩田いく実)
「福島先生は大手建設会社勤務から弁護士になられたそうですね。そのきっかけを教えてください。」
私は兵庫県尼崎市生まれで、灘高校を経て東京大学に進学し、「都市計画」を学んでいました。都市計画には法律に関係する内容もあったので多少関心もありましたが、大学卒業後は大手のゼネコンに就職し現場監督なども経験しました。
阪神・淡路大震災を社員1年目で経験し、神戸で震災復興工事にも携わりました。現場はやりがいのある仕事も多かったですが、仕事がとても忙しかったので法務分野に関わることはなかったです。
転身を決めたきっかけには、親孝行があります。三人兄弟だったのですが、幼い頃に、父から「一人は商売人、一人は医者、一人は弁護士になったら、将来こんなに心強いことはない」なんてことを言われていたんですね。兄のひとりは実際に医者になりました。
会社を10年勤めた頃、両親が体調を崩したこともあって、昔、父が子どもになってほしいと望んでいた弁護士に私がなって元気づけたいと奮起し、家族に内緒でロースクールを受験したところ何校か合格できましたので、妻に「会社を辞めて弁護士になる」と告げて退職しました。子どもが生まれたばかりだったのですが、妻は引き留めるどころか、むしろチャレンジを面白がってくれました。
35歳の頃に大阪大学のロースクールに入学しました。司法制度改革もあり、年齢的に結構ギリギリのタイミングでしたので運が良かったと思います。2011年弁護士登録、2016年に無事に独立開業ができました。
「日頃の息抜きは家族との時間に、大ファンのオリックスの観戦です。」
■建築分野に特化した法律事務所を営むにあたって、ストレスを感じることはありますか。
建築分野に特化した雰囲気のホームページではあるんですが、この事務所は街弁でもあるので、ご相談があればその他の分野でも対応しています。また介護・福祉分野に強い弁護士も1名おり、福祉機関・施設の運営に携わる法人からの相談を中心に担当してもらっています。
弁護士として働く上ではストレス耐性があるのか、それほど悩みを抱えたことはないですね。性格が鈍感なのかも。
建築現場の方が大変でしたね。はっきりとした上下関係がありますし、怒号が飛び交うことも。休みがない時も多く、上司と言い合いになってストレスを抱えた時期もありました。今も建築分野には携わっているものの、あの頃を超えるようなストレスはないので働きやすいですね。自分の事務所ですし、「昔より気楽」と思っていますね。
現場での経験は、もちろん良い思い出も多いですし、今も会社の同僚や先輩方とは仲良くさせてもらっています。
■経営者として事務所内のストレス対策はどのように行っていますか。
私は社会人時代に長時間の会議が好きではなく、事務所を経営者として運営していくにあたっては、所内の会議はなるべくしないようにしているんです。会議のために大切な執務や依頼者との打ち合わせ時間が奪われることは避けたいな、と。
事務員の方には、自由にのんびり働いてもらえたらと思っていて、過干渉にならないようにしています。
前職はピリピリとした現場や真剣な会議が多くって。せっかく自分の事務所を持つなら、あまりピリピリはしたくないなぁと思っていたんですよ。会社員経験を活かして、今はのんびりとした雰囲気になるように事務所を経営していますね。
■訴訟や起案など、スケジュール管理はご自身でされていますか。
大まかなスケジュールは事務局で管理してもらっていますが、細かいスケジュールは、Googleなどを使いながら自分でも管理しています。最近は忙しいので、土日もプライベートなことをしつつ、気が付いたら頭を働かせて起案をしているかもしれません。
会社員時代から結構土日関係なく働いていたので、仕事のことを考え続けることにあまりストレスは感じません。
■仕事が続く毎日の中で、息抜きはどのようにしていますか。
家族との時間は、やっぱり良い時間ですよね。息子がいるのですが、野球をやっているので時間が許す時は応援に向かいます。また、お酒を飲むことも好きですね。もう少し余裕ができたら長期旅行に行きたいですが、子どもがまだまだ小さいので。
私はオリックス・バファローズの大ファンで、試合を欠かさず録画しています。野球観戦は昔からの趣味の1つです。今季ももちろん、応援しています。
あと、気持ちの切り替えは得意なのかもしれません。終わった事件のことについては、資料を片付けたら、頭の中もすっきりとリセットしています。
「建築分野は面白い。やりがいの多い業界なので、得意とする弁護士がもっと増えてほしいです。」
■建築分野は紛争も多いとお聞きします。業務をこなす中で、どのようなやりがいを感じますか。
一級建築士の資格もありましたし、事務所開設の当初から得意分野として掲げることができました。
建築分野の紛争は、一般的な民事分野の紛争よりも、必要とされる証拠や資料が多くなる傾向があり、丁寧に収集する必要があります。また、業界の慣例や悪癖とも言えるのですが、契約書の内容があいまいなことも多く、解決まで時間を要するケースも見受けられます。
受任する弁護士にも、高度な専門知識や豊富な実務経験が無ければ、打開策が生まれにくいんです。
自分には幸いにしてその知識があり、実績も多くなりましたので任せてもらえると解決へ導けます。やっぱり依頼者の問題をスッキリと解決できるとやりがいを感じますね。
■建築問題を主軸にしている弁護士は少ない印象があります。この点はどのようにお考えですか。
建築分野の紛争に向き合うためには、建築だけではなくさまざまな事柄に興味を持って取り組む必要があると感じます。例えば、立地する場所の歴史や気候なんかが重要な要素となる場合があります。時には建築士の意見を取り入れたり、技術や工法に関することも知っておく必要があります。
一般的な離婚や相続、刑事事件とはまた違った分野であり、なかなか特化して業務をこなす弁護士は増えていないように感じます。
だからこそ、面白いと思っています。建築は私たちの生活やインフラと切り離せないものですし、大阪や東京などの大都市では建築に関係する消費者トラブルも多い。
弁護士として収益を得つつ、大きなやりがいを感じられる分野だと思うので、もっと積極的に取り扱う弁護士が増えると良いなと思います。弁護士が増えると、依頼者も弁護士選びに困りにくいでしょうし、紛争処理もより迅速になりますからね。
当事務所でも積極的に若手弁護士を採用して、一緒にやっていきたいなぁと思っています。
■建築関係のご依頼を解決するにあたって、どのような方と連携していますか。また連携にはどのような工夫をされていますか。
建築分野の紛争時には、専門的な調査や意見書が必要となることが多いので、建築士の方々に協力を依頼することが結構ありますね。
依頼時には工夫もしています。建築士への依頼にあたっては、さまざまな事件で経験を積んでいる方にお願いしたいので、良いなと思う意見書を見かけたら自分の事件の時に声をかけさせてもらったりしています。建築業界の意見書は、他の分野の意見書や鑑定書と比較すると、まだまだ様式が確立されていないようなところがあり、どなたに依頼するのか結構悩ましいんですよ。
大阪では私が建築分野の弁護士と知られるようになってきていますので、駆け出しの頃よりはスムーズに建築士の方に調査を依頼できるようになりました。
建築士の方々からもご紹介いただく案件もあり、ご縁の中で仕事をしています。「こんな悩みを持つ方がいるんだけど…」という感じですね。
「初心を忘れず、感謝の気持ちを忘れないことが大切だと信じています。」
■最後に、ストレスを抱えながらも奮闘する若手弁護士に向けて、メッセージをお願いします。
大好きなオリックス・バファローズの中嶋聡監督の言葉をお借りしようと思います。
「初心は忘れてしまうものです、でもお世話になった人達への感謝だけは、忘れないようにしてほしい」というものです。私は、大学では建築ではなく都市計画を学んでいたので、駆け出しの頃、現場で右も左もわからない状態でした。そういった時は、同期や信頼できる先輩・職人さんに積極的に声をかけて学ぶ機会を得ていました。今も本当に感謝しています。
弁護士になると、日々いろんな業務に追われ実務経験を重ねたりするとつい初心を忘れ勝ちになると思います。でも、周囲や親しい方への感謝の気持ちは忘れないことが、ストレスを抱えすぎず、前向きに過ごすコツだと思っています。
現在は、事務所選びなどの悩みを、若手弁護士の方からご相談いただくこともあります。自分がしてもらったことを、若手の方へ還元できたらと思っていますので、お悩みがあればお気軽に声かけしてください。
私たちの事務所で一緒に働いてくれる仲間も募集しています。建築分野や介護福祉分野の実務に関心がある方、お待ちしています。
採用ページ
終わりに
今回は、建築分野に注力していらっしゃる福島 敏夫先生へのインタビューでした。弁護士になる前に社会人経験のある先生方におかれては、どのように経験を生かすのかのヒントになるお話があったのではないでしょうか。また、建築分野に特化したご経験を積まれたい先生方におかれては、是非一度応募をご検討いただけますと幸いです。
Amiではストレスや悩みを抱えた先生方向けにカウンセリングを提供しております。国家資格を有するだけでなく、日弁連や各弁護士会にてメンタルヘルス研修経験があるカウンセラーや弁護士業務に精通したカウンセラーがお話を伺いますので、お悩みの方は是非ご検討ください。
法律事務所向けのサービスとしてリスクマネジメント支援サービス等を提供しております。所員の心身のコンディションが気になる、不調者が多いように感じるというお悩みがありましたら、是非お問い合わせください。