渦を外から見るか、中からみるか(致知2022年7月号より)
対談『働き方改革から働きがい改革へ』
この対談は現代の日本企業にとって非常に重要な指針となり得る素晴らしいものである。
が、それと同時に、読み方を一つ間違えればたちまち非難の対象ともなりうる危険性があった。
折しも、本号の別記事においては国語教育の大切さを説かれているが、まさにその実例が示されているかのようだった。
本対談の内容としては致知ではお馴染みの稲盛哲学をベースとしたもので、「これからの日本企業に必要なものは志である」として働きがいを重視したパーパス経営のヒントを伝えてくれる良記事だった。
私自身も、稲森氏の唱えた成功方程式
『人生・仕事の結果=考え方x熱意x能力』
という言葉に改めて触れたことで、最近の自分に足りなかったものに気付くことができたという、大きな収穫があった。
ならば、いったい何が問題なのか?
それは読者の視点がどこにあるのかによって、この記事から受ける印象が180°変わってしまうところにある。
特に注意すべきは、働きがいに関する下りである。
ワークライフバランスには大反対(ワークとライフは分けられない)
働き方改革はゆとり教育のようなもの
仕事の疲れは仕事で充電
スポーツの「ランナーズハイ」を仕事に当てはめ「ワーカーズハイ」
これらを良い話と見るか、ブラックな話と見るか。
その分岐点はどこにあるのか。
それは読み手が経営者(リーダー)であるか、被雇用者(クルー)であるかである。
会社がより成長し、成功していくためには全社員が一丸となって進む必要があることは自明であるとしても、「努力すること」を押し付けてしまうのは良くない。
モチベーションが下降するだけでなく、ストレスに押しつぶされ、身体的にも精神的にも健康を損なってしまうなど、本来望んでいた未来とは真逆の結果となってしまう可能性が高い。
そうさせないためには、その努力は自発的なものである必要がある。
被雇用者であっても、心から労働意欲が沸き上がる魔法はないのか?
そのヒントは文中にあった。
JAL再生のキーワードととも言えるその言葉は「ウズチュー」
「ウズチュー」=「渦の中心」
全ては他人事ではなく、自分が事象の中心であるという考え方で、それは正に「主人公意識」を持つということに他ならない。
渦の中心から見るか、外からみるか。
そう考えたとき、私は昔から言われて続けているある言葉に思い当たった。
『一日作さずば、一日食わざるなり』
『働かざる者食うべからず』
似て非なる言葉であるが、その違いは明確である。
自ら思い至って行動することこそ高尚であり、そこには意思がある。
これこそが、成功方程式における『考え方』の軸とすべきものではないか、と私は思うのである。
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