北方領土の日だが、国後島と択捉島は放棄済み

日本政府も今更引くに引けなくなっているのかもしれないが、国後島と択捉島の返還要求は完全に無理筋。

まず前提だが、サンフランシスコ平和条約では日本語は正文ではないので、日本人が南千島と北千島を区別する「千島列島」ではなく、区別が無い「クリル諸島」が対象である。

正文に日本語がないということで、思い出すのは、戦後日本の国際間のポジションを決めた「サンフランシスコ平和条約」である。このサンフランシスコ平和条約にも、日本語の正文はない。今回のTPP合意文書と同じく、英語、フランス語、スペイン語の3言語が正文で、付け足しで日本後版もつくったと、次のように書かれているだけである。“DONE at the city of San Francisco this eighth day of September 1951, in the English, French, and Spanish languages, all being equally authentic, and in the Japanese language.”
このことをつき突き詰めると、条約として有効なのは、英語、フランス後、スペイン語の文章のみであり、日本語は参考文書ということになる。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8d0e14107bc3a5858c7309bd7f40178721dcf55d

無理筋な理由は単純明快で、

  • 1951年のサンフランシスコ平和条約で「クリル諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」している

  • 放棄した「クリル諸島」に南千島(国後島と択捉島)が含まれることは当時の政府が国会で確認している

というものである。日本が放棄した全千島の帰属は連合国が決めることなので、日本の「ソ連はサンフランシスコ平和条約に署名していない⇒クリル諸島はソ連領ではなく日本領のまま」という主張は通らない。

Japan renounces all right, title and claim to the Kurile Islands, and to that portion of Sakhalin and the islands adjacent to it over which Japan acquired sovereignty as a consequence of the Treaty of Portsmouth of September 5, 1905.

Treaty of Peace with Japan

日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

サンフランシスコ平和条約

一方、色丹島と歯舞群島は千島列島の一部ではなく、根室半島の延長にある「北海道の一部」なので、返還要求には正当性がある。ソ連が1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後の歯舞群島及び色丹島の引き渡しに合意していたのはそのため。

ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

日本国とソヴイエト社会主義共和国連邦との共同宣言

ウクライナが便乗しているが、

ウクライナの「固有の領土」は地図の黄色と黄緑色の領域だけで、クリミア半島とノヴォロシア(桃色)はロシアの固有の領土になる。

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