「プーチンは被害妄想」という妄想

時間が経過するにつれて、メディアで引っ張りだこになった「権威」のお粗末さが露になっているが、

専門家をたくさんフォローして、その専門家がそれぞれ何を言っているのかをきちんと見るということです。面白いのは、専門家同士の仲がいいのですよ。安全保障の人たちでは、地政学の奥山真司さんや防衛研究所の山添博史さん、高橋(杉雄)さんなど、みんな仲がいいのです。ツイッターでやりとりなどもしています。あとは慶応大学の人ですね。

ウクライナ情勢に関しては、慶応SFCと防衛研究所がハブになっている感じです。その人たちがどのくらい認識を共有しているかということをチェックすることが大切だと思います。

今回に関して言うと、慶応SFCと防衛研究所には権威があるわけです。権威という言葉が嫌いな人もいるかも知れませんが、「何を信じるか」となったときに、オフィシャルかどうかということです。

その中でもこれ👇は酷すぎる。この程度の思考レベルの人物が「専門家」として有り難がられるようでは世も末である。

今回の侵攻は、まさにプーチン大統領が募らせていた承認欲求と、それが満たされないどころか自身の尊厳が崩され続けているといった被害妄想が積み重なり、直接的に戦闘に駆り立てた――。そう言っても過言ではないかもしれないのです。

プーチン大統領が軍事侵攻に踏み切った理由ははっきりしている。

同じくミンスク合意をキエフが前も今も履行したくないということが明らかになった。つまり2つの脅威がロシアに迫ってきた。一つはNATO拡大に伴うウクライナのロシアへの武力行使の脅威が極めて強くなった。そしてロシア国籍を持つ多くの人々を含めウクライナ東部のロシア系住民に対する武力行使の脅威が強くなった。先ほど申し上げた通り、3月8日にウクライナ軍による(東部への)大攻勢が計画されていることが明らかになった。そうした状況下でロシアは自国民、ウクライナ東部のロシア系住民に対するウクライナナチス政権による武力行使を防ぐために、先手を打って軍事作戦を止むを得ずに開始する状態となった。

👆をロシアのプロパガンダなので信用できないという読者もいると思われるので、第三者の見解として元スイス軍情報将校Baudの分析👇を示す。"Part Two: The War"の"1. The Outbreak Of War"を読んでもらいたい。

簡単に経緯をまとめると、

  1. 2021年後半にウクライナ軍がドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国を制圧する軍事作戦の準備に入る(クロアチアがセルビア人地域に行った「嵐作戦」のウクライナ版)。

  2. ロシアがこの動きを察知→断念させるために国境付近に軍を展開して圧力をかける

  3. ウクライナ政府はロシアの警告を無視→2022年2月中旬に前哨戦を開始

  4. ロシアが外交的解決は不可能と判断して軍事侵攻に踏み切る

となる。「プーチンの被害妄想」よりも説得的だろう。

これ👇も軍事に無知過ぎる。

2、3日でウクライナの首都キーウを陥落するつもりが、そうはならなかった誤算

この時点👇では「劣勢のロシアの言い訳・負け惜しみ」と思い込んだ人が多かったようだが、その後の第二段階の展開を見ればロシアの思惑通りだったと判断できる。ちなみに、エマニュエル・トッドは昔から「ロシア人相手にチェスをやってはいけない」と言っていた。

👇の"The Operational Situation"と"Russian Success or Failure?"を参照のこと。

これ👇については

早い時期に将官クラスが次々とウクライナ軍によって殺害されたことも、プーチン大統領にとっては大きな誤算だったはずです。将官クラスは通常は前線には出ないものですが、兵士の士気が上がらず、戦い方がグダグダなので仕方なく前に出て殺されてしまったとも聞きます。

👆の"The Conduct of Battle"より引用。“Forward!”と“Follow me!”の違いである。

On France 5, the journalist Mélanie Tarvant presented the death of Russian generals on the battlefield as proof of the destabilization of the Russian army. But this is a profound misunderstanding of the traditions and modes of operation of the Russian army. Whereas in the West, commanders tend to lead from the rear, their Russian counterparts tend to lead from the front—in the West they say, “Forward!” In Russia, they say, “Follow me!” This explains the high losses in the upper echelons of command, already observed in Afghanistan—but it also tells of the much more rigorous selection of staff-personnel than in the West.

「プーチン大統領が知らなかった」と本気で言っているとすれば救いようがない。おまけに、現時点でもロシア軍が劣勢だと信じているのだろうか。

ウクライナがこうした準備を整え、対策を練ってきたことは、日本にいる私にもわかることなのに、プーチン大統領が知らなかったとしたら、はっきり言って異常事態です。実は、プーチン大統領は自ら情報収集はしないし、インターネットを使いません。スマホも持っていないのは有名な話です。もしも自分でネットの情報をちょっとでも検索すれば、ロシアが劣勢ということも気づけると思うのですが……。

そう、今回の情報戦ではドローンの存在が極めて象徴的です。

一々指摘するときりがないのでここまでにするが、この「専門家」は何を情報源にしているのだろうか。

なお、この記事では対照としてJacques Baudを引用したが、同様の分析をしている専門家は珍しくない。

付録①

日本で反ロシアの世論工作に携わるウクライナ人のツイートが、ガルージン大使の話👇を裏付けてくれる。

そうした中で明らかに「ウクライナで生活している全ての人種、全ての住民、全ての国民を代表するウクライナ政府がない」という状況が続いていた。つまり東部の皆さんに、差別的政策を行ったのはウクライナの中央政府だった。

元々ロシア領でロシア人が多く住んでいた東部と南部がウクライナ領になった歴史的経緯を考慮すれば、このウクライナ人の主張の道理の無さと異常さが分かるだろう。ウクライナの民族主義者とキエフ政府が企てているのは、経済水準が高いロシア系地域の「浄化」と乗っ取りである。

ピンクの辺りが実はレーニンが、ウクライナっていうのはあまりにも農業国でどうしようもないから炭田や重工業を与えようとして与えたところであります。

ウクライナ東部は鉄鋼や機械、石炭など重工業の集積地で、親露派が支配するドネツク、ルガンスク両州は同国経済の約15%の規模を占めるとされる。

付録②

ウクライナとクロアチアの共通点は、第二次世界大戦時に民族主義者の組織がナチス・ドイツに協力して他民族の「浄化」を行ったこと。ウクライナはアメリカが支援した2014年の暴力クーデターによってOUNもどきの武装集団が支配する異常な国になった。

付録③

ミアシャイマーの最近のインタビュー。

クーデターの経緯と実態を知っていれば、ミアシャイマーが言い続けているのは誰でも考え付くような常識的なことであって、取り立てて斬新な分析ではないことが分かるはず。


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