日本が貧乏になっているという言説が増えている。
実のところ、1人当たり実質GDP成長率は他の主要先進国と比べて低くなかったのだが、賃金が上がらない+円安のために、国民の購買力が相対的に著しく低下している。プラザ合意後によく聞かれるようになった「内外価格差」という言葉も、いつの間にか「高い日本」から「安い日本」の意味に逆転している。
出所:内閣府, 総務省統計局, ONS, Eurostatより作成 Source: European Commission (リーマンショック~民主党政権期が水準としては「超円高」ではないことに注意。その前後が過度の円安である。) その急速な貧乏化の原因だが、日本を敗戦からわずか23年後(1968年)に世界第二位の経済大国へと成長させ、1979年にはアメリカ人に"Japan as No. 1 "と言わしめることになったエコノミック・アニマルのスピリット が主因の一つではないかと考えられる(この言葉は1965年のパキスタンのブット外相の発言が元)。
日本経済が快進撃を続けた1990年頃までの「日本株式会社」では、個社が全社一丸となって業績を拡大させ、成果はベースアップやボーナス増で従業員に分配する、という考え方が普通だった。ミクロでの拡大志向のエネルギーがマクロ経済に活気を与えて好循環を実現させていた。
ところが、1990年代後半になると、内外の環境の激変を受けて企業経営者の考え方が大きく変化した。1999年の日本銀行の速水総裁(当時)の指摘👇にあるように、企業は売上の拡大よりも利益率(資本効率)の向上、ひいては費用の削減を重視するようになった。
2番目の構造問題は、経済のグローバル化が進み、外国人投資家による株式保有も増加する中で、従来のボリューム志向に代えて、利益率を重視する経営姿勢がわが国企業に広まりつつあるということです。
まず、わが国の企業経営者が、以前に比べ収益性を重視する方向に変化してきていることは、経済企画庁のアンケート調査等にはっきりと表われています。景気の長期低迷が続き、マクロ的にみると売上高の増加がほとんど期待できない中で、企業がROA(総資本利益率)やROE(株主資本利益率)などの利益率重視に転換することは、ある意味で当然の流れではあります。
ホーム > 公表資料・広報活動 > 講演・記者会見 > 講演・挨拶等 1999年 > 日本経済の中長期的課題について── 平成11年7月27日・共同通信社主催「きさらぎ会」における日本銀行総裁講演 費用(支出)の削減を至上 とする考え方は企業経営者だけでなく政府と国民全体に共有され、社会資本整備の削減、公務員人件費の削減、国会議員定数の削減、議員歳費の削減等々、以前は「拡大」に向けられていたエネルギーが「削減」に全振りされるようになった。日本人はアニマル・スピリットを失ったのではなく、新たな環境に適応した特異種のコストカット・アニマルになったわけである。
この👇度を越したケチり方がアニマル・スピリットが健在な証拠と言える。
「まず日本人が商売相手としては面倒くさいってことですね。欲しがるくせに金をケチる。どれだけ値下げできるか、この価格内でなるべく多く売ってくれって要求が度を越してます。これは輸入業者に限らず日本のどんな産業だって、企業人として働いていれば感じることだと思いますよ。おまけにちょっとでも売り主、製造側に瑕疵があれば報告書を出せ、改善計画書を出せって居丈高に要求する。日本人でもうんざりします」
度を越したケチは人件費も対象である(下村治の言葉を借りれば「人間の価値」の引き下げ)。
出所:財務省「法人企業統計調査」より作成 一億火の玉となっての人件費削減(自己窮乏化)を20年以上も続ければこう👇なるのも必然だが、これができるのは日本人が世界に冠たるエコノミック・アニマルだからで、普通の国の人々にはとても真似できない。さすがは「ぜいたくは敵だ」「欲しがりません勝つまでは」「一億玉砕」と叫び、原爆投下・ソ連参戦まで米英中との戦争を止めなかった国である。
「例としては悪いですが、10年前には歌舞伎町にかなりいた中国人の犯罪グループが、今は少なくなっています。リスクを取って日本で悪事をするより、本国でまともな職業に就いたほうが儲かる、だから帰っているという話を聞きました。
『アンダークラス』に登場するベトナム人技能実習生の女性はこう言っている。「日本はずっと給料が下がり続けている」「日本は貧乏人ばかりの国だよ」と。
「日本株式会社」は資本主義の企業のあるべき姿になった。
資本主義の企業は、株主に最大の利益(配当)をもたらすことを以て、その目的とする。
コストを最小にするのが目的である。
正しい資本主義の国では労働者は最小の人件費でこの👇ように働かなければならない。大日本帝国の「お国のため」「天皇陛下のため」、エコノミック・アニマルの「会社のため」が、平成の世から「株主様のため」に変わった。
労働者は、行動的禁欲の下、ただ一心不乱、与えられた仕事に全力を投入しなければならない。 そうでなければ、企業は利潤を最大にできない(目的合理的経営ができない)。
「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない
1994年2月の経済同友会「舞浜会議」における宮内オリックス社長の発言 個々の日本人が関心とエネルギーの使い道を拡大から削減に転じたことが日本を貧乏国に転落させたということであり、それが日本版大躍進政策の「改革」の成果である。
Mさんによれば、パキスタンの日本大使館勤務時代よく日本からの要人がブット氏を表敬訪問する際に同行したが、日本人の客が、エコノミック・アニマルの話をする度にブット氏は苦笑いしながら「自分は決して日本人を侮蔑するつもりでエコノミック・アニマルと言ったのではないのに」と弁明していたとのことであった。
used to describe what type of person or thing someone or something is:
An animal is also a person who likes something or does something more than most people do: