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学位授与式式辞

大阪大学大学院・生命機能研究科長として、生命機能研究科の学位授与式で以下のような式辞を述べた。原稿を用意せずアドリブだったので、憶えている範囲のおおよその内容である。また授与式は、修士と博士の2回に分かれていたので、各々で話したことを合体している。

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皆さん、本日の学位授与、まことにおめでとうございます。私も研究科長を「卒業」するので同じくらいめでたいです。

皆さんは、コロナ禍のなかで研究しなければならず、とても苦労されたと思います。様々な制約があり、楽しい行事もなく、大変だったことでしょう。それらを乗り越えて今日の日を迎えられたことに、心から敬意を表します。

修士の皆さんが入学した2年前には、コロナ禍がこんなに続くとは誰も思っていませんでした。しかし今も流行は終わっておらず、さらにロシアのウクライナ侵攻があり、世界は混迷を深めています。

皆さんはそのような状況下で、社会に出ます。混迷のなかを生き抜かねばなりません。そのとき武器になるのが、科学的思考です。皆さんは大学院での研究生活を通して科学的に考える、つまりロジカルに考えるすべを身につけたはずです。

それが皆さんを助け、ひいては社会を、世界を救います。

コロナ禍では専門家の言うこともあてにならない、と言うことを実感したと思います。未知の感染症と遭遇したときには、ひとりひとりの判断が重要になってきます。今後もそういう事態はありえます。

また科学の発展が加速しており、例えばゲノム編集技術のようにみんなの生活や人生を一変させるかも知れない技術がこれから次々と出てくるでしょう。

そういう時代をサバイブするには、科学的思考が必須です。それを忘れないで下さい。

そして困難な時代を生き抜かなくてはならぬとも、人生を楽しんで下さい。一度しかないのですから。好きなこと、やりたいことをして下さい。夢を追って下さい。忖度は不要です。

ただ、自分は何がやりたいのかわからない、とか夢が無い、とかで悩む若い人が結構いますが、それは本末転倒です。夢がないならないでも一向に構いません。

そのときに楽しければ良いのです。いきあったりばったりで良いのです。私もそうでした。難しく考える必要はありません。

それから、今日の卒業式で総長も触れられていましたが、多様性も大事なキーワードです。皆さんは生命科学者ですから、当然、多様性が生命の根幹であること、何億年も生物が存続してきたのは多様性故であることはよくご存じだと思います。

ヒトである我々、個人個人にとっても多様性は重要です。他者の多様性を尊重し、かつ人とは違う自分を意識して確立して下さい。自分のニッチ、居場所を見つけて下さい。見つからなければ作ってください。あなたのニッチ・居場所は必ずあります。

博士号を取得された皆さんは、博士であることに誇りを持って下さい。海外では博士号を持った社長さんがたくさん居ますし、商売を含め様々な局面で博士はリスペクトされ有利に働きます。日本だけが少々特殊なのです。

皆さんは世界標準で考えましょう。博士号を振りかざしてこれが目に入らぬかという必要はありませんが、心にプライドを秘め、博士課程で培ったものを最大限活かして堂々と前へ進んで下さい。

皆さん、困難な時代にあっても頑張って生き抜いてください。皆さんの人生に幸多かれと、心の底から念じずにはおれません。本日は本当におめでとうございました。

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