総選挙無きシンデレラガールズの未来(2024-09-18追記)
はじめに
2024年5月28日、「Stage for Cinderella Celebration Night」をもってStage for Cinderellaの全行程が終了した。
シンデレラガールの称号、衣装、曲、配信ライブ、そしてボイスと、1年間の壮絶な戦いを勝ち抜いたイヴ・サンタクロースにとって、これほどの贈り物は無いだろう。
さて、それではこれからのシンデレラガールズはどうなるのだろうか。
次回のSfC、または総選挙はあるのだろうか。
総選挙は単にシンデレラガールを決めるためだけにあらず、「ボイスの実装」という大変貴重な、というか事実上唯一の機会である。
本記事では、全アイドルのボイス実装という目的を前に総選挙が欠かせないものであることを主たる意見とし、総選挙の無いシンデレラガールズの今後についても考えていく。
総選挙とは
総選挙(投票イベント)にかける思いや目標は各プロデューサーで異なり、またその中でも時期によって変わる場合もある。そのため、総選挙について述べるにあたり、本記事における総選挙の捉え方について定義しておく必要がある。
まず、本記事における「総選挙」とは、投票によってボイスの実装が可能なイベントのことを指す。
これまで開催されたものは、「第2回~第10回シンデレラガール総選挙」「第1回~第2回ボイスアイドルオーディション」「アニバーサリーボイスアイドルオーディション(2014)」「Stage for Cinderella」である。
なお、第1回シンデレラガール総選挙は入賞特典にボイスの実装が無かったので含めないこととする。
以降、本記事ではこれらの投票イベントをまとめて総選挙と呼ぶ。
次に、これら総選挙に対する本記事での捉え方を述べる。
本記事では総選挙を「投票によってボイス実装が可能なイベント」と捉える。シンデレラガールの誕生や、それに付随するストーリーもこの作品にとって非常に重要であるが、ここではボイスの実装に焦点を絞る。
現在のボイス実装状況
現在のボイス実装状況を確認する。
Stage for Cinderella終了時点でのアイドルのボイス実装状況は次の通りである。
キュート(全65名) 実装済み 30名 未実装 35名 実装率46%
クール(全65名) 実装済み 35名 未実装 30名 実装率54%
パッション(全60名) 実装済み 34名 未実装 26名 実装率52%
全体(190名) 実装済み 99名 未実装 91名 実装率 52%
SfC終了時点でボイス実装済みがボイス未実装の数を上回っている。
具体的には、SfC予選Aで望月聖のボイス実装が決定したのがこの瞬間である。
今後の開催可能性
冒頭に疑問として挙げた、「今後総選挙は開催されるのか」という点について考える。
結論からいえば、今後総選挙が開催される可能性は低いとしている。理由を次に述べる。
ただし、当然だが明確な根拠は無く、筆者の観測範囲における体感によることに注意してほしい。
デレステの規模縮小が行われているため
これ以上ボイスを付ける余力(やる気)がないため
プロデューサーが総選挙を行う余力(やる気)がないため
繰り返すが、これはあくまで筆者の観測範囲における体感であり、理由は他にもあるだろう。(最も、まだ総選挙が開催されないと決まったわけではない)
上記3点をまとめると、「運営側の余力とプロデューサー側の余力がちょうど合致し、Stage for Cinderellaがちょうど良い区切りにできたから」ということである。
これを読んでいるあなたが総選挙に対して高いモチベーションがあれば結構なことである。しかし、『SfC』ひいてはそれ以前の『シンデレラガール総選挙』の時代においても総選挙に対して疲労感を示しているプロデューサーが一定数いたことは認めざるを得ない。
そういった声に対して運営が腰を上げ、『SfC』が事実上の最終回となった、というのが現在の見方である。
開催する可能性について強いていえば、12代目のシンデレラガールが決まっていない点があるだろうか。とはいえ12周年は過ぎているためそこをどう捉えるかによる。
総選挙以外でのボイス実装の可能性
総選挙以外でボイスの実装があれば、プロデューサーは何もする必要はないので1番良い方法である。しかし、解決すべき課題もあり容易ではない。
ない可能性について
過去に総選挙以外の方法(以下、サプボ)でボイスが実装された事例を確認する。
2022年 古賀小春 『アニメU149』
2020年 小関麗奈 『シン劇えくすて』
2019年 的場梨沙 『Spin-off!!』
過去5年間で3例であり、かなり少ない。
また、これらサプボに共通する点は、いずれもアニメ作品であるという点である。ボイス実装の前にこうしたアニメ作品を用意する必要があり、安定してボイスを実装させ続ける手段としては有効とはいえない。また、もし可能だったとしても作品の終了と共にボイスの供給も止まってしまうため、持続的にボイスを実装させることは難しいといえる。
そもそも、それが簡単にできるならわざわざ総選挙を開催する必要もなく、過去の事例から見てもアニメに由来するサプボはあまり期待できるものではない。
ある可能性について
唯一希望が見い出せるとすれば、CINDERELLA MASTERソロが良い機会である。
2018年には『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER』12弾として白菊ほたるのボイス実装がソロ曲と共に発表された。それ以前には10弾(2017)の乙倉悠貴、9弾(2016)の二宮飛鳥,五十嵐響子など、昔のサプボの主流であった。
現在の『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER』の状況を確認すると、2024年発表のCMソロ17弾(千夜,イヴ,七海)をもって、現時点でボイスが実装されているキュートアイドル全てにソロ曲が実装されることとなった。
つまり、今後もCMソロが発表されるとすれば、キュートの枠が自動的にボイス未実装アイドルになるということである。
しかし、これもあくまで希望的観測である。
この可能性には問題点が2つある
ソロ曲が実装されているといっても、CMソロの枠でないアイドルがまだいる(里奈,ゆかり,法子,愛海,歌鈴,小春の計6名)
キュートアイドルにしかボイスが実装されない
1つ目について、ソロ曲が1曲でもあるからという理由でボイス未実装アイドルに枠を譲ることも不可能では無いが、『CINDERELLA MASTER』であることに一定の価値が置かれていることも事実である。彼女ら6人のCMソロを実装するとなれば最低6年を要する。
2つ目について、これは根本的な問題だが、クール,パッションにはまだソロ曲が無いアイドルが存在し、そちらを優先的に用意することになれば新規でボイスが実装されるのがキュートだけになってしまう。
2024-09-18追記
STARLIGHT FANTASY2日目の業務連絡にて、大石泉、望月聖、ライラのソロ曲制作が告知された。
前項の「クール,パッションにはまだソロ曲が無いアイドルが存在する」という問題に対して「数が多いクールの実装を優先させる」といういかにもシンデレラガールズらしい飛び道具的な解決方法を見せられた。
なお、ここでは「CINDERELLA MASTER」の名を冠しておらず、あくまで「新規ソロ曲」という位置付けになっている点に留意すべきである。
また、これについては2つの捉え方ができる。
これは「CINDERELLA MASTER」とは別で作られたソロであり、次回、上田鈴帆+キュートおよびクールの新規ボイスアイドルでリリースすると共に、新規ボイスアイドル中心の「CINDERELLA MASTERソロ」シリーズを再出発させるための調整
上田鈴帆以外の全ボイス実装済みアイドルがソロ曲持ちになるため、事実上の「CINDERELLA MASTERソロ」シリーズの終了
総選挙を行わず、属性問わず一定人数のボイスを持続的を実装させるという意味では「1」が最も理想的な形である。とはいえそれができるならもっと早くやっているはずなので、かなり希望的観測であり予断は許されない。
反対に、「2」の形になった場合jewelries005のリリースさえも危ぶまれるため、この告知はシンデレラガールズの未来を大きく左右する第一報といってもよい。
まとめ
以上を踏まえると、総選挙以外でボイスを実装させることはあまり現実的ではないといえる。
属性問わず可能性があること、多くのアイドルをボイス実装させること(できるだけ早く全員にボイスを実装させるため)を考慮すると、現状最も現実的な方法は総選挙に限られると考えられる。
総選挙の必要性
ここまで述べてきた通り、全員のボイス実装という目標を前に総選挙は欠かせない手段であり、また現状もっとも現実的な手段でもあることが分かる。
『SfC』終了時点でボイス実装数がボイス未実装数を上回ったのは、運営とプロデューサー双方の意志と努力があって初めて達成できたことである。
一方で、そうした手段の存続が危ういという現実に直面しつつもある。
忘れてはならないのは、総選挙は現実的な手段であると同時に最低限の手段でもあるということだ。
先述したとおり、一定数の新規ボイスを継続的に用意する方法は総選挙以外に前例がない。当然、総選挙以外に安定したボイス実装を可能とする画期的な方法が見つかれば話は変わってくるが、総選挙はボイス実装における最後の手段であり、今プロデューサーはそれに頼るほかないのである。
単にボイスを望んでいるだけでは現実が変わらないのは自明であり、せめて総選挙くらいは行うべきなのだ。
ボイス実装が過半数を占めたことは、同時にボイス未実装がマイノリティと化したことを意味する。
時を同じくして総選挙を行わないという声が増え始めた結果「総選挙の終了」があるのだとすれば、ある意味では運営がプロデューサーの声に応えたと考えることもできる。しかし、それはボイスを望み続けるプロデューサーにとっては無念な結果に他ならない。
ただ、この話は「誰もが全アイドルのボイス実装を望んでいる」という大きな前提の元に成り立っている。
そもそも、本当にあらゆるプロデューサーが全アイドルのボイス実装を望んでいるのだろうか。
自身の担当アイドルや特別好いているアイドルにボイスが実装されればひとまず満足であり、それからはあくまで+αの領域なのではないか。
もちろん、「シンデレラガールズにはボイスがあるアイドルと無いアイドルが存在し、その差は埋まるべきである」という主張にはほとんどのプロデューサーが同意するだろう。
少なくとも、「差は積極的に広げるべきで、自分の好きなアイドルだけ得すればよい」と考えるプロデューサーは稀なはずである。
ただし、それが骨身を削って率先して行うべきとなれば話は別である。
つまり、能動的に差を埋めるのは誰か(運営または熱心なプロデューサー)であって自分ではない、まして総選挙などで疲弊しながらやりたくはない、ということである。
ある程度ボイスは望んでいるが、総選挙をやり続けなければならないならそこまでは望まない、ボイスはひとまず十分だ、という考えもあって当然ではある。
むしろ、総選挙を繰り返すにつれて、ボイス実装アイドルが増えるにつれてそういったプロデューサーの数も次第に増えていくのは自然なことなのかもしれない。
筆者はかつて「全アイドルにボイスを付けるべきで、そのためなら総選挙であろうとなんであろうとやる。それがプロデューサーとして当然のあり方だ」という立場のプロデューサーが大多数を占めているものだと思っていた。
しかし、これがいわゆるエコーチェンバーだったのではないかと最近になってようやく考えるようになった。最初からそうだったのかごく最近の傾向であるのかは知り得ないが。
ともあれ、少なくとも自分が思っているほど総選挙に熱心なプロデューサーはおらず、また自分と同じくらいの熱をもって総選挙に臨んでいるプロデューサーもいないように見受けられる。
つまり、量的にも質的にも総選挙に対して自分と同じだけの熱を持っているプロデューサーは想像していたよりも少ないということである。
というか、筆者はそういった熱意をもった先輩プロデューサーを追いかけるように総選挙活動に励んでいた。仮にそれが幻想だったとしても、その過程で多くのものを得ることができたし、自身のプロデュース活動を振り返る上で避けて通れないものだったと確信している。
閑話休題。筆者としては、ボイス実装のチャンスがあれば総選挙は何度でもやるつもりである。特に優先的にボイスを実装させたいアイドルはもちろんいるし、かつて担当アイドルが享受した喜びを他のアイドルも得て然るべきだと思う。
もし次総選挙があるとすれば、文字通り最後のチャンスだと思う。そのために、筆者は担当アイドルへの投票を一切せずにボイス未実装アイドルだけに投票する気でもいる。それくらいの覚悟である。
今やアイドルのボイス実装を巡る課題は新たな段階へと進んだ。
これまではプロデューサー同士でどのアイドルにボイスが付くかという点で競っていた。
これからはボイスを付ける必要があるかどうか、そしてその機会を生み出せるかどうかという現実との戦いになってくるだろう。
総選挙無きシンデレラガールズの未来
総選挙が無くなったシンデレラガールズはどうなるのだろうか。
2024年6月現在、シンデレラガールズの最も大きなプラットフォームであるデレステは規模を縮小して運営している。主にガチャの開催頻度と楽曲イベントの量が減っている。
ガチャについては、恒常SSRの枠が無くなったことで事実上ボイス未実装アイドルのSSRが一切なくなってしまった。
イベントについては、月末にシンデレラロードのが確定で開催される(稀にアイプロか)ようになり、ストーリー面においては多少供給が見込めるようになっただろうか。
ボイス未実装アイドルは依然として少ないが、ボイス実装済みアイドルの供給も細っているのが現状である。
これもまた筆者の観測範囲における体感になるが、全体の供給が減った(≒更新頻度が減った)ことで、1回の更新における波風の立ち方も変わったように感じる。
2018年頃から、ガチャやイベントの更新の度に、アイドル間における供給量の差の言及が増えていった。それが波乱を呼ぶ表現はかなりぼかしていることもままあったが、全体の供給が減ったのもあってか現在は比較的落ち着いているように見える。
「全員の供給を減らす」ことは、多くのプロデューサーが臨む「平等」という目標に半ば不可抗力的に近付くことになったと言えなくもない。
ゲームの外を見れば、ボイス未実装アイドルにもスポットが当たる機会が比較的増えたように感じる。ConnecTrip石川公演に合わせた『手取りフィッシュランド』とのコラボで大沼くるみ、原田美世、真鍋いつきやフリルドスクエアがピックアップされたのが良い例である。
こうしたゲーム外での出番は、ボイスの有無に関係なく可能である点が現在の事情とも噛み合っており、今後も積極的に増やしていくべきことである。
また、ゲームでは表現しきれなかったアイドルたちのより高い実在感を出すこともできる利点もある。
ただ、このような出番がボイスが無いことの代わりになるかと言われればそうではない。そう扱われてもならない。ボイス実装が彼女らにとって必要であるという事実は変わらないのだ。
2024-09-18追記
今回、泉、聖、ライラの3人が一気にソロ曲実装を果たしたことで、今後「CINDERELLA MASTERソロ」シリーズが新規ボイス実装の拠り所になる可能性が見えてきた。
アニメ『しんげき』をはじめ、STARLIGHT MASTERシリーズの枠を使ってでも新規ソロの収録に力を入れてきたのがこのためであったとすれば、ボイスを巡るシンデレラガールズの未来にわずかながら光明が見えることだろう。
おわりに
今後シンデレラガールズが進む道は2つである
荒波が立ちながらもボイス実装のチャンスがある、総選挙を続ける道
波風は立たないがボイス実装のチャンスもない、総選挙を行わない道
この記事が至って杞憂で終わることを願うばかりである。
「Stage for Cinderella Celebration Night」の公開終了が2024年11月27日23:59に予定されている。もしかしたら13周年のタイミングで総選挙に関する何かしらの告知があるのかもしれない。それに期待している。
2024年6月28日
2024年9月18日