マーキングについて少し深掘る
ウェーハのマーキング(刻印)について。
業界の方々にはお馴染みのマーキング。レーザーマーカーなど装置的・技術的なお話はスキップして、生産現場での運用についておさらいしておくのもいつか役に立つかも。
■ ちょっと概要
ウェーハマーキングの目的は、トレーサビリティ確保、および製造・検査装置での自動読み取りによるウェハ―識別です。裏面、または外周の無効エリア(製品として品質担保しないエリア、3mmとか4mmとか)にユニークな文字列を刻印します。
刻印タイミングは主に投入時点、またはちょっと膜を付けた後や、配線工程直前にやったりもします。
文字はドットの集合体とするのがスタンダードです。レガシープロセスでの文字列用ドットはだいたい100um径、なのでざっくりPADパターンの一辺とオーダーは同じくらいです。
■ 規格について
このマーキング、しっかりSEMI規格の規定があります。主なものとして、文字列はSEMI-M12/13、二次元マトリクスコードはT7。これはOCR(自動読取機)での視認性を担保するためです。ちなみに後者の方がはるかに小さく済み、1mm幅にも収められます。
こちらは文字列。
こちらは二次元マトリクスコード。
そしてサイズはこんな感じ。
■ プロセス観点
マーキングは、基盤素材によって条件も見映えも異なります。ウェーハ前工程のほぼ最初のプロセスであり、もちろんパーティクル源となったりや文字掠れ/潰れも生じうるため、入念な条件出しと出来栄え管理が必要になります。(写真はTOWAレーザーフロントさんから拝借)
■ 文字列ルールについて
このマーキング文字列には、一つ工夫を入れます。 例として、
・ロット#9999
・ウェハー#10
の場合に
・999910
とマーキングしたいとする。この時、マーキングの信頼性を上げるためにさらに文字を追加します。
文字列それぞれの数字の足し算は9+9+9+9+10=46になります。 これを16進数に変換すると、2Eです。
結果として、マーキングは例えば「9999102E」のように刻印します。
これはトレーサビリティの確からしさの担保、OCR読取精度や見栄えダメージに対しての担保をすることが目的です。 ちなみにSEMI T7の概要にも記載がされてます。
■ おわりに
以上、前工程の縁の下の力持ち、マーキングのおさらいでした。
今や自動搬送と連携した新規運用やマーカーそのものの技術向上も日進月歩と推察します。 とりあえず我々おじさんが「読めなぁい!」とウェハー叩きつける時代(ダメ絶対)は昔話になりつつあるかな。
5月もお疲れ様でした。おわり。
■ 追記(2023/5/27)
@Johoshushupopo さんから、SEMI-T14という規格を教えていただきました感謝!
ウェーハベベル(エッジ)の傾斜部分に打ち込むタイプです。2004年の発行なので、確かエッジ起因のパーティクルがクローズアップされていた頃かなと推察します。