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キャリア自律を支援する意義と成功事例
はじめに
近年、「終身雇用の崩壊」「副業・兼業の普及」「リスキリング(学び直し)の必要性」など、労働環境が急速に変化しています。こうした変化の中で、企業に依存せずにキャリアを築いていく「キャリア自律」が注目されるようになりました。
企業の人事担当者として、「キャリア自律を支援することで人材流出が加速するのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、実際には、キャリア自律を支援することで、従業員のエンゲージメント向上や組織の競争力強化につながるのです。
本記事では、「キャリア自律とは何か?」という基本的な定義から、企業がキャリア自律を支援すべき理由、そして成功している大企業の事例について詳しく解説します。
キャリア自律とは何か?
キャリア自律とは、「従業員が自身のキャリアの方向性を主体的に考え、行動し、変化に適応しながら成長し続けること」を指します。
これまでの日本企業では、「会社に尽くせば一生安泰」という考え方が一般的でした。しかし、事業の再編やリストラ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、企業の在り方そのものが変わっています。
キャリア自律を実践する従業員は、以下のような特徴を持ちます。
・自ら学び、成長し続ける人
・変化に適応し、柔軟にキャリアを設計できる人
・企業の枠を超えて通用するスキルを持つ人
企業にとって、このような人材を育成し、活用することが競争優位性の向上につながります。
企業がキャリア自律を支援すべき理由
企業がキャリア自律を支援すべき理由は、大きく分けて以下の3つです。
(1) エンゲージメントの向上
キャリア自律を促すことで、従業員が自身の成長に主体的になり、仕事への意欲が向上します。これにより、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。
(2) 変化に強い組織の構築
急速な市場変化に適応するためには、柔軟なキャリア設計ができる人材が不可欠です。キャリア自律を支援することで、企業は変化に対応しやすい組織を築くことができます。
(3) 社員のスキル向上による競争力強化
キャリア自律を支援することで、従業員が新しいスキルを積極的に習得するようになります。結果として、企業全体の競争力が向上します。
企業がキャリア自律を支援する具体策
【施策1】社内キャリアコンサルティングの導入
定期的なキャリア面談を実施し、従業員が自身のキャリアを見つめ直す機会を提供します。
【施策2】リスキリング・学習支援の強化
企業内での学習プラットフォームを提供し、デジタルスキルやマネジメントスキルの習得を促します。
【施策3】社外ネットワークの活用促進
社外のセミナーや異業種交流会への参加を奨励し、視野を広げる機会を提供します。
【施策4】副業・兼業の解禁
副業・兼業を許可し、従業員が多様な経験を積める環境を整えます。
キャリア自律支援の成功事例
【事例1】富士通の「キャリアオーナーシッププログラム」
富士通では、従業員が自身のキャリアを主体的に考えられるよう、「キャリアオーナーシッププログラム」を導入。社内外の学習機会を提供し、キャリアコンサルティングを実施することで、従業員の成長を支援しています。
【事例2】日立製作所の「キャリア開発支援制度」
日立製作所では、社内のキャリア支援プログラムを強化し、従業員が自身のキャリアを積極的に設計できる環境を整えています。特に、社外活動の奨励やリスキリングの補助を積極的に行っています。
【事例3】リクルートの「自己成長支援制度」
リクルートでは、従業員の自己成長を支援するために、年間一定額の学習補助制度を導入。社員がオンライン学習や研修を自由に活用できる仕組みを整えています。
【事例4】ソニーの「ジョブ型キャリア形成支援」
ソニーは、ジョブ型雇用の導入に伴い、社員が自らのキャリアパスを設計できるよう支援。異動希望を自由に申請できる制度や、専門分野ごとの研修プログラムを充実させています。
【事例5】NECの「キャリアチャレンジ制度」
NECでは、社員が新しい分野に挑戦できる「キャリアチャレンジ制度」を導入。社内公募制を活用し、異動希望やスキルアップのための研修を提供することで、従業員のキャリア自律を促進しています。
「キャリア自律」研修カリキュラム例
以下、私が提供するキャリア自律をテーマとした研修例です。
実際は、ご担当の方のお話を伺いながら、フルカスタマイズで設計します。
【第一部】キャリア自律の基本概念(60分)
・キャリア自律とは何か?
・企業がキャリア自律を支援する意義
・キャリア自律がもたらす企業・個人のメリット
【第二部】自己分析とキャリア設計(90分)
・自身の強み・価値観の整理
・キャリアゴールの設定とロードマップ作成
・キャリア資産の棚卸しワークショップ
【第三部】スキル開発と市場価値向上(90分)
・これからの時代に求められるスキルとは
・学習習慣の確立とリスキリングの実践
・具体的な学習計画の策定
【第四部】キャリア実践とネットワーキング(60分)
・社内外ネットワークの重要性
・副業・プロボノ活動の活用
・キャリア自律に向けたアクションプラン策定
まとめ
キャリア自律は、企業と従業員双方にとって重要な課題であり、企業が積極的に支援することで、組織の持続的な成長と競争力強化につながります。成功事例からも分かるように、キャリア支援のための制度やプログラムを導入することで、従業員のエンゲージメント向上やスキル向上が期待できます。
今後の変化の激しい時代において、企業が柔軟なキャリア形成を促進し、従業員の成長を支援することがますます求められています。これを機に、キャリア自律支援の取り組みを強化し、未来の働き方に備えていきましょう。