見出し画像

【短編小説】私とゼンマイ時計(5)

第1話はこちら。

1つ前のお話はこちら。

日陰を求めて歩いていた。
お腹がいっぱい過ぎて、途中で目に入る食事処はそのまま視界の端へと消えていった。

一先ず駅まで戻ろう。

駅を目指して商店街を抜け、やっと戻ってきた。
勿論まだお腹はいっぱい。

さぁ、ここから何処まで歩こうか。

時間を確認すると13時半。
お店が開くまでにあと30分はある。
あまり遠くへ行きすぎるとお店に戻るのが遅くなってしまう。
かと言って、お店に向かって近くで待つという気にもなれない。

先程のカレー屋さんでお手洗いを借りなかったことを思い出し、
一先ずお手洗いにでも行ってみようか、と辺りを見回した。

どうにも見当たらない。

電車の利用ではないので少々気が引けたが、
改札横の駅員さん事務所を覗き込んだ。
親切な駅員さんが、駅の近くのスーパーを提案してくれた。
お礼を言って駅を後にした。

駅を出て、少し先にスーパーがあった。
入って直ぐに後悔した。
当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、スーパーに入って目に飛び込んできたのは、食べ物食べ物食べ物のオンパレード。
これは何かの試練なのか?と思う程にまだお腹はいっぱいである。
なるべく下を見ないようにしながら頭上の看板を目で追った。
少し分かり辛いところにあったお手洗いにどうにか辿り着くと、私は首を傾げた。

"トイレ清掃中"

今日は何だか色々と重なる日だ。
いつもしないようなことをしているからだろうか?

淡い希望を持って、少しだけスーパーのフロアを回り、またお手洗いに戻ってきた。

"トイレ清掃中"

諦めが肝心だ。
次を探そう。

心の中で駅員さんにお礼を言いつつ、次のお手洗いを探してゆっくりと歩き始めた。


~つづく~


足を運んでいただきありがとうございます。 よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます😊