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【プリズンライターズ】受刑生活12000日の通過点

2024年4月、囚われの身となって12000日を迎えました。
振り返るととても長い道のりでしたが、無期刑としてはここは通過点です。

今回初めてプリズンライターズに投稿させていただくにあたって、何をどう書けばいいのかで悩み、構想を練っては練り直し、下書きしては書き直しの繰り返しで、とうとう2年が経過してしまいました。
その間に仮面接や委員面接などもあって、2月に仮釈放不可の裁定がありました。30年を経過すれば誰でも行われる定期面接といわれるもので、この一連の面接で仮釈放になる確率は相当低いとのことで、私も仮面接のときから聞かされていたので、あまり期待しないようにと覚悟はしていたものの、面接期間中はどうしても思考は娑婆へと向かってしまい、覚悟はしていてもショックの度合いは大きいものでした。

しかし、冷静になって考えてみると、私利私欲による強盗殺人事件を起こし、人命を奪っておきながら、30年が過ぎたからといって仮釈放してもらえるなんて、それこそ自己中心的で身勝手な考えだと思います。
犯した罪を忘れたわけでもないし、ご遺族の怒りもわかっているはずなのに、油断すると自己中心に思考が働いてしまう。
こんな私が仮釈放を考えるなんて烏滸がましい限りです。


長い受刑生活となりましたが、まだ通過点なので、過去を振り返るにはまだ早いと思いますが、受刑中に両親を相次いで亡くし、出所して親孝行したいと第一目標にしていたことが果たせなくなり、ますます親不孝な己が許せなくなりました。
それでも社会復帰したいならば諦めず頑張るしかないのです。
他にもつらいことや悲しいことは数えたらキリがないし、何か起きるたびに立ち止まってもいられません。
ただひたすら耐える。やり過ごすしかないのです。

受刑生活、特に長期刑は後悔と反省の繰り返しと言いながらも、工場に出ていれば日々の生活に追われるし、毎日同じような日常を判で押したように生活しているため、思考が単調になりがちです。
情報に飢えているから根拠のない噂話に花を咲かせ、根も葉もない胡乱(うろん)な事柄に気を取られ、他人の言動に敏感になって疑心暗鬼になる。
そうやって同衆間トラブルが絶えないわけですが、無期刑で社会復帰が目標ならば、トラブルや反則行為から距離を置くしかありません。

私はこれまで計6回の懲罰があります。だから偉そうなことは言えませんが、意識して鈍感になるようにしています。
なかなか難しいことですが、メンツやプライドはなるべく捨てようと努力しています。
試練の乗り越え方や、危険を回避する方法は人それぞれですから何とも言えませんが、私は鈍感になり、メンツやプライドを出さないように心がけています。

プリズンライターズの投稿を読んでみて思うのは、皆さんストレスがたまっているなと感じました。
不平不満や悩みを打ち明けることでデトックス効果とか打開策が見つかったりすると思うので悪くないと思う一方で、一度不満を表に出すと歯止めが利かなくなるようで怖くもあります。私はそんなタイプです。
不平不満が無いわけではないのですが、例えば刑務所の体制や処遇の改善、食事の味付けあるいは刑務官の言動に対して不平不満を申したところで変わるとは思えないし、むしろその不自由を喜んで受けるくらいの心の余裕が欲しいと思っています。
刑務所に入るに至った経緯を考えれば、本来文句など言えない立場だと私は考えます。

投稿文を読んでいると、私のいるM刑について書かれているものがありました。そのほとんどが辛辣なものです。
私はこの刑務所に30年以上服役していて、そんな意見に対して全部が全部反対とは言いませんが、少々偏狭ではないかと感じています。
まず刑務官との軋轢についてです。刑務官も生身の人間ですから感情があります。
受刑者が反則行為をすれば本気で怒るし怒鳴る刑務官もいれば、何も言わず連行ボタンを押す人もいます。
刑務官は職務上受刑者を視察監督し、注意・指導・連行・調査・拘束することができると法律で定められていて、我々受刑者は刑務官の指示や指導に従う義務があります。
でも刑務官だって人間ですから、その指導の仕方、方針には匙加減があって受刑者に対する接し方は様々です。
中にはイジワルな刑務官もいるでしょうし、マジメで融通の利かない人、気さくでユーモアのある人もいます。
私たちの方にも、何度注意されても直さない人、注意されなくても自律できる人もいて、刑務官から見れば当然対応や対処が変わっても無理はないと思います。

投稿に出てくる刑務官がどんな方なのかわかりませんが、少なくとも私が知る限り、何もしていない受刑者に理由もなく連行し調査するような刑務官には遭遇したことがありません。
また、無期刑の仮釈放に関する投稿もよく目にします。自分が無期刑なので一番の関心事項でもあります。
そしてここM刑は仮釈率が悪いとよく聞きます。
私の印象では、最近有期刑を中心に仮釈率が上がっていると思います。
無期に関しては最近23年春ころに1類の方が出所されました。約40年だったそうです。
他施設のことは分かりませんし、考え方や感じ方は人それぞれですから断言はできませんが、無期刑が終身刑化してきているという意見は言いすぎではないかと感じています。

もちろん長期化している事実もあると思うし、懲役30年という有期刑と無期との差はとても大きいと思いますが、無期刑の仮釈放は相当慎重に審理されているはずです。
一生涯仮釈放中という身になるわけですし、ほんのちょっとの油断から仮釈が取消されるケースもあるので、そんな悲劇的な結果にならないように、間違っても再犯なんて起こらないように、協議に協議を重ねているのだと思います。

そこには帰住先や就職先の確保はもちろん、被害者感情や社会が是認するかの判断、プラス本人の所内での行状などケースバイケースでしょうから、仮釈の目安はあってないようなものです。
他施設で無期刑の方が何年で出所されたのかとても気になるし励みにしていますが、それが私自身とどうリンクするかはわかりません。
刑務所への不平不満もそうですが、なるべく他人と比べないことです。なかなか難しいことかもしれませんが、鈍感になることを私はお勧めします。

もちろん私の務め方が正解ではありませんが、刑務所や他人と争うパワーは無駄ではないでしょうか。
そのパワーは自分を磨くために、将来のために使うようにした方がいいし、与えられた時間(年数)を不毛にしてほしくないと思います。
私自身もそうありたいと思いながら生活しています。
長々と偉そうなことを書きましたが、無期刑の人が社会復帰するならば、有期刑の10倍は努力し、摂生しないといけないと私は思いました。
私も出遅れている中の一人ですが、今からでも頑張って社会復帰できるように努力します。

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プリズンライターズ / ほんにかえるプロジェクト
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