【プリズンライターズ】再犯率が減らない理由を考えてみた Vol.3 お金篇②
再犯率が減らない理由を考えてみた。〜お金編②〜です。
①では「支出」についてだったので、②では「収入」についてのあれこれのお話をしたいと思います。
※「再犯率が減らない理由を考えてみた Vol.2 お金篇①」はこちらから
受刑者にとって収入と呼べるものとは?
外部から差し入れられるものを除くと、「作業報奨金」だけでしょう。
これは刑務作業に対して月々支給されているので、例えるなら“受刑者の給料”のようなものです。
ただ、“釈放後の更生資金の一部に”と言うのが本来の役目なので、別途プールされて出所時に一括で支払われるものなので、自由に使ったり、送金したりはできません。
とは言っても、中には所内生活に必要なお金も持っていない人もいるので、制限付きで一部利用することができるようにはなっています。
「作業報奨金」はいくらぐらいもらえているのか?
「作業報奨金」は十段階に賃率を分けた「等工」と呼ばれるものによって、時給換算で支給されています。
2023年8月現在、一番下の10等工で7円50銭、一番上の1等工でも56円と、100円にもなりません。
10等工だと月額900円ぐらいにしかならず、1等工であったとしても1万円を超えるのも難しいので、3年ぐらいの刑だと、トータルで10万円に届きません。
「刑務作業は刑罰なのだから安くて当然だろう」と言うのは、旧監獄法的な考え方だと言わざるを得ません。
“人間的に処遇し、改善更生を目指す”ことを理念として2005年に改められた現在の刑事収容施設法だと、更生資金の一部にもなり得ない金額は、理念に反していると思うのです。
せめて更生資金の一部と言えるぐらいの金額にはならないといけないとは思います。
安さの原因になっている「等工」の仕組み
10等工から1等工になるまでに3年1ヶ月かかります。
1つ1つ上がっていくまでの期間が決まっていて、作業をがんばったからと言って早く上がったりできません。
なのに、何かあって工場が変わってしまったら、また10等工からのやり直しになってしまうのです。
等工が上がるようになるのは、工場で作業をするようになってからです。
これはあまり知られていないかも知れませんが、裁判で刑が確定してから刑務所に送られ、実際に工場で作業するまで、大体3〜4ヶ月ぐらいもかかるのです。
なので実際に1等工になるまでに3年6ヶ月近くかかってしまうのです。
刑務作業は単調で単純なものが主なのに、1等工になるまでに3年以上かかると言うのは、どう考えても時間がかかりすぎです。
これは賃率の低さと同じぐらい重大な問題です。
金額を上げるために「等工」を利用してみる
「作業報奨金」を上げるために、最低の7円50銭を仮に10円に上げたところで焼け石に水でしょう。
かと言って一気に100円ぐらい上げると言うのは現実的には難しいでしょう。
なぜならば、「作業報奨金」を支給するための財源が税金からの予算であるため、急激な増額は不可能です。
そこで私は今の等工の賃率に注目したいのです。
現在設定されている等工での賃率と言うのは、見方を変えると“この範囲であるなら予算が確保されている”と考えられるのではないでしょうか。
と言うことは、この賃率内でなら変動させるのは比較的現実的と言えるかもしれません。
これを前提として、まず十段階はやめてしまって、見習工から一般工への二段階にしてしまいます。
上がるための期間も社会の研修期間にならって3ヶ月ぐらいで十分だと思います。
これに従来の等工の賃率を当てはめると、一般工には従来の1等工の賃率を、そして見習工の賃率には従来の3等工のものにするのです。
これだと、従来の賃率を利用しつつも、十分な底上げが可能になるはずです。
1ヶ月の作業日数を20日、1日の作業時間を6時間とし、3年の刑期の人の「作業報奨金」を単純計算すると、大体25万円程、そこから日用品などを買っていたとしても20万円近くは残るはずです。
これで“釈放後の更生資金の一部”と言えるぐらいにはなったのではないのでしょうか。
現実的な問題として考えなければならないこと
社会に戻って自立した生活をするには、基点となる住居は必須でしょう。
そしてそこには中古でもいいので、必要最低限の家具家電、生活消耗品だって必要でしょう。
これらの初期費用をおさえたとしても、30万円近くはかかるのではないでしょうか?
生活を維持していくためには当然働いて収入を得なければなりません。
入所中に仕事が決まるなんてことはまだまだ希なことなので、出所後から探し始めるのが一般的です。
となると、仕事が決まり、給料が支払われるまでの生活維持のためのお金が必要なはずです。
時間がかかることが予想されるので、最低でも3ヶ月以上は倹約してでもがんばれる蓄えと考えると、20万円以上は欲しいところです。
こう考えると本当に更生資金の一部だけでよいのでしょうか?
この圧倒的に不足している分を一体どうしたらいいのでしょうか?
税金を財源としている以上、不足しているからといって際限なく上げていくのは、どう考えても不可能です。
足りない部分の補い方は?
生活保護を受けたり、新しい法整備による給付金等が必要だと、某NPO法人の代表が言っておられたことがあります。
現状では仕方のない部分があるのでしょうし、たしかにそれらは手段の一つなのでしょうが、私は何かが違う気がするのです。
刑務所の生活は税金でまかなわれています。
そして生活保護や新法での給付金となると、その財源は税金になるはずです。
これだと結局税金に頼りきっているだけではないでしょうか?
これで社会に受刑者の努力をどこに感じてもらえるのでしょうか?
これで社会が受刑者を認め、受け入れてもらえるのでしょうか?これだと社会から厳しい目を向けられ続けていても、当然のことだと思います。
とは言っても、現状では入所中に受刑者自ら努力すること自体ができないと言う点があります。
知っておいて欲しい刑務作業の今
農業をしていたり、造船に携わっていたりと言うのを何かで知った事がある人が、もしかしたらいるかもしれませんが、そんなものは特殊な極めてごく一部の中の更にそのまたごく一部で、全く一般的ではないのです。
一般的なものだと、木工、金属、洋裁などで、基本的にあまり技術を必要としない作業がメインです。
その他の作業においても内職レベルのものばかりで、ひどいものになるとウレタンをただ小さくちぎるだけと言うものまであるぐらいです。
当然収益力、利益共に見込めるものがほとんどありません。
日常の作業の他に自己契約作業や外部通勤作業が制度上は、できるとうたっているものの、実際に行えている受刑者はほとんどいないでしょう。
これには社会に協力してもらえる企業が多くないと言う面があるのでしょうが、だとしても刑務所側の受け入れてもらうための努力がまだまだ足りていなさすぎる側面の方が強いと思われます。
私が刑務作業で最も恐ろしいと思うのが、一生懸命がんばっても、ダラダラとさぼっていても、ほとんど何も変わらない事です。
なので、その日暮らしで、さぼってダラダラと楽をする人間が、残念ながら一定数存在してしまっているのが現実なのです。
今のままでは刑務作業自体もダメなのです。
刑務作業をどの様に変えていくか
私は受刑者自身で考え、努力することによって、刑務作業の収益力を高め、しっかりと利益を生み出し、その利益を「作業報奨金」とは別に、きちんと「給与」として還元されるシステム作りが必要だと思います。
全ての工場の作業を、、、とまでは言いませんが、まず7割ぐらいの刑務作業を受刑中から社会と変わらない難易度で、受刑者が自らが考えて行わなければならないようなものに、内容を見直すことからだと思います。
なぜなら、社会での仕事と同程度のことをしておかないと、社会に戻った時にもすぐに仕事についていけないことにもなるでしょう。
それに、単調なことしかできませんでは、ハッキリ言って社会での企業では必要とはされないでしょう。
この様に作業内容を見直すとなると、受注先企業の見直しも当然必要になってくるでしょう。
ほとんどの刑務所は、その周辺の地元企業からの受注をメインにしていると思います。
こう言った地元企業の存在はとてもありがたいのですが、今の受注の仕方では“先”がないのです。
この“先”とは、受注先企業等への就職です。
とは言っても、該当工場の受刑者全てを就職させるのは、現実的とは言えません。
そこで、条件を明示して規定を決めます。例えば、該当工場で2年以上作業を行っていて、かつ受注企業が明示した生産収益能力の数値をクリアしている者等です。
その該当者を2〜3年のような定期的に、出所後そのままないし2名を受注先企業が雇用する、、、と言うのが理想ではあります。
これであれば、企業側は即戦力となるように受刑中から仕事の修得がさせることが可能なだけでなく、定期的に人柄も知ることができるので、人柄への不安の減少につなげられる等のメリットがあります。
当然受刑者にしてみれば、出所後の就職と言う現実的な道が見えるので、がんばるためのモチベーションにしっかりつながると思うのです。
もっと将来的な改革への理想、、、
ここまでの見直し案もかなり理想論なのは自認しています。
ですが、もう少し理想論にお付き合い下さい。
私が目指して欲しいと思うものの1つが、“刑務所発信の商品での利益確保、そこからの還元”です。
理想とは言え、これは最も難しいので、せめて大手有名企業や量販店との提携商品などもいいですね。
本来刑務所は様々なものを生産できるポテンシャルを持っています。
設備1つにしても、そこらの生産工場にだって負けず劣らずのものがそろっており、本気になれば相当な数の生産量にだって対応できるパワーだってあるのです。
なのに、残念なことにそれらを刑務所、ひいては国は全然活せていないように思います。
私はこの秘めたパワーを、ぜひ大手有名企業等に活用してもらいたいと思うのです。
海外に発注すれば輸送費がかかりますが、刑務所内なら国内なので輸送費を安くおさえられます。
人件費においても海外の安いところに比べて半額近くですませられるかもしれません。
企業側へ提示できるメリットはけっこうあると思います。
提携商品がかなうのなら、ぜひ企業側にして頂きたいことがあります。
それは、“当製品は受刑者が制作し、当製品の売上の一部は犯罪被害者の支援、及び、受刑者の更生資金として使われます”と入れてもらいたいのです。
そしてその商品を通じて、社会の人たちに間接的にでもいいので、犯罪被害者の支援と受刑者の更生に参加している意識を持ってもらえたら、、、と思うのです。
受刑者の収入と言う面は解決困難な問題が多いのが現実です。
まずは知って下さい、受刑者がほとんどお金を持てずに出所している現実を。
そして考えて下さい、受刑者だからと言って人件費を払わなくていいと言う考え方のおかしさを。
死刑以外の刑を受けた人はいずれ社会に戻ります。
これは法を犯せば刑務所に入るのと同じぐらい当然なことなのに、忘れられがちです。
社会に戻った時にお金は絶対に必要になります。
お金がないために再犯を犯さなくてはならなくなってしまうなんて、そんなバカな話はありません。
私の意見はあくまでも一意見です。
もっといい案があるかもしれません。社会全体で考えられるようになればいいと思います。
次回は再犯率が減らない理由を考えてみた。~教育篇~で、、、ではまた!
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