【プリズンライターズ】私の後悔・お父への手紙
人は誰でも後悔をする。大小様々な後悔があると思うが、特に我々受刑者は事件を起こしたという大きな後悔にさいなまれる人が殆どだろう。
私も懲役の端くれとして例外ではなかった。
前にも述べたが、やらずに、出来ずに後悔している事がまだまだある。
先日父の15回目の命日を迎えた。そんな父に対してもやらずに出来ずに後悔をしている事があり、もう伝える事が出来ない父へ今更ながら思いを綴りたい。
お父、元気ですか、死んだ人に「元気ですか」は少しおかしいですね。
お父が亡くなった後、私は事件を起こし、今刑務所に収容されています。
あの世からいつも見守ってくれているのでもう知っているね。1度くらいは夢に出てきて昔みたいに叱って下さいよ。
逮捕当時「あんたが逮捕されたのが、お父が死んだ後だった事がせめてもの救い」とお母はよく言ってました。
お父は本当に俺をかわいがってくれました。
末っ子と言う事もあり溺愛してくれました。
そんな俺が逮捕されたら、心配で居ても立っても居られなかったでしょう。
ましてや脳梗塞で半身不随になった体では面会にも来れず、もう会う事はできなかったかもしれない。
そう思うとお母の言ってた意味が良く分かります。本当にお父との思い出は沢山あり色々な所に連れて行ってくれましたね。
いつも優しく時に厳しかったお父。特に怒った時はとても恐かったのを覚えています。
私は小学生の頃からやんちゃでお母が学校に呼び出される度にお父の鉄拳制裁を受けました。
竹刀やすりこぎで滅多打ちされ、次の日は学校に行けない時もありました。
お父の鉄拳制裁はとても痛くすごく苦しかったはずなのに「悪いことをした人には暴力を振るって良い」と間違った解釈をし、今回自分の正義に反したと勝手な理由で悪者と決め付け悲惨なことをし、その結果取り返しのつかない事になってしまいました。
お父は亡くなる前の1週間、胸の痛みにずっと苦しんで飯も食えずに寝たきりでした。
医者嫌いだったのでただただ耐えていたのですね。
しかし到頭我慢の限界にきたのかお母に「病院に連れて行って」と病院に行ったが時すでに遅し、手の施しようが無く大きな病院に搬送される途中、救急車の中で亡くなったとお母から聞きました。
兄から「お父が心筋梗塞で死にそうだ」と電話を受け、帰る途中の車中でお父の声を聞きました。
空耳ではなくはっきりと。何故かその時、ふと時計を見たのです。
その後無言で冷たくなって帰宅してきたお父。
お母が教えてくれた亡くなった時刻はお父の声が聞こえた14:46でした。最後に言いたかった事があったのかな。
俺、ずっと後悔しています。何でずっと苦しんでいるお父を目の当たりにし、声を掛けるだけで何もしなかったのか、嫌がっても無理矢理病院に連れて行ってたらもしかしたら助かったかもしれないのに。
そう思えば思う程、自分がそうしなかった事に後悔をします。
結局、こう言った人を気遣う思い遣りの無さ、実行する勇気の無さが事件を起こした要因だと思います。
お父が亡くなり、年甲斐もなく人目を憚らず泣くぐらいなら病院に早く連れていけば良かったのに“後悔先に立たず”この言葉の意味を嫌と言う程思い知らされました。それと同時に学びました。「思い立ったが吉日」今という瞬間は今しかない、だからその今に感謝し後悔が無いように一生懸命に生きて行きます。
最後に通夜の時、お母が涙を流しているのを初めて見ました。あの強いお母がです。
いつも文句言ってお父に怒ってたのに。
ちゃんとお父を愛していたんだね。
そんな二人の子供に生まれて良かった。
本当に有難う。そして親不孝な息子でごめんなさい。
2023/12/22