「俺のクソ人生の日々」を読んで
ほんにかえるプロジェクトの新企画として「プリズンライターズ」というコーナーをはじめました。受刑経験のある私は己の過去を他人に話すことを前提として書くのも話すのも内省を促す効果があることを知っているので、スタッフと協議したうえで企画をスタートした。とは言え、投稿者がいるかどうかは不安でした。幸いにも共感してくれた受刑者がいて、少しずつ投稿者も増えてきました。第一弾目はA264さん。
私自身は詐欺や窃盗罪で2003年から2014年まで岐阜刑務所で務めました。規律違反すると生活する場所も変えられてしまうのは刑務所。転々と工場を変わる中、彼と一緒になることもありました。印象に残っているのは出所間近の時期に行った介護工場で、高齢の受刑者を持て余していた刑務所側は元裁縫工場に高齢者を集め、介護係として身体障害者や処遇困難者を寄せ集めして新工場を作り、私もA264さんもそこに集められた。
彼は身長も高くイケメンの部類に入る外見でした。ヤクザも経験したことがあると書いてあったが、偏見ではあるが、私が見た限りでは極悪犯を集めたLB級刑務所の岐阜では彼にはその匂いは少なく、どちらかといえばヤンキーにいじめられそうなタイプでした。その反面、彼は高齢者に優しく、私的には好感を持てるタイプでした。彼はおしゃべりでしたから、その身上も少し知っていた。文末には謎のような言葉を残していたが、それは岐阜刑務所で起きた受刑者が刑務官を買収してお菓子やお酒も不正に入手させた不祥事についてであり、彼も私もその渦中にいたこと。
彼とは岐阜刑務所で一緒に務めたが、もちろんそれまでの人生をすべて知っているわけでもなければ、その後の人生も知る由がなかった。更生支援活動をしたおかげで彼のその後の人生を知って、私まで暗い気持ちになりました。というのも友達ではなくても出所後は犯罪と関係のない生活を送れることを願うし、被害者の存在を思うと加害者は増えてほしくない気持ちもあった。なのに強盗事件を起こし、殺人までしてしまったと知って、ため息しながら手紙を読み続けた。
彼の文章を読んで同情する部分もあるけど、自分自身にも抱いていた愚かさを感じずにいられなかった。私が裏社会に生き、このような人といっぱい出会っていた。その当時は同情心と自分は頭がいいという顕示欲で彼のような人を手下に抱え、同じ犯罪でも賢く荒稼ぎをして、各々の困窮を助けることを目的とした。一種のロビンフッド症候群で、当時は犯罪もスマートさが必要と口説いていた。人を殺してもお金が欲しいという人が周りにいて、人殺しをやらなくてもお金を奪えるぜと自慢することで優越感に浸っていたし、それも善だぜと本気で思い込んでいた。人のふりを見て我が身を直すとはこのことですね。彼の手紙を読んで己の罪を改めて意識することができたといっても過言ではない。
「プリズンライターズ」の投稿はホームページのほか、会報の「かえるのうた」でも掲載する予定です。このような手記で内省のきっかけを作れたらという願いも込めて、これからも投稿を呼びかけていきたいと思います。また塀の外にいる皆様のご感想も聞きたいのでコメントを投稿していただけたら幸いです。
ほんにかえるプロジェクト事務局長 汪 楠
【PRISON WRITERS】投稿へのサポートに関して/ 心が動いた投稿にサポートして頂けると有り難いです。お預かりしたお金は受刑者本人に届けます。受刑者は、工場作業で受け取る僅かな報奨金の1/2を日用品の購入に充てています。衣食住が保障されているとはいえ、大変励みになります。