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【プリズンライターズ】刑務所の中で理容師資格/職業訓練の思い出・1

初夏らしい気持ちいい天気が続いています。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今回は、以前受けた山口刑務所での理容科の訓練について書きたいと思います。
理容科は理容師の国家資格取得を目標に1年生10人、2年生10人がスライド式の入れ換わりで、2年間、支え合い競い合って学びます。

教えてくれるのは、「技官」という理容師資格を持った職員さんで、現役の理容師さんも月に何度か来てくれます。
しかし、主に教えてくれるのは、指導補助という元訓練生(受刑者)です。

卒業生の中でも成績優秀な人が選ばれるのですが、元訓練生なので、初心者の立場に立って教えてくれるので、本当に助かりました。

訓練は学科と実技があり、学科は必須5科目(利用技術・関係法規・衛生管理・保健・化学)と理容の歴史やデザイン、社会などの授業があり、年に何度かテストもあります。
実技は、理容道具の扱いや手入れ、カットやヒゲ剃りの運行と体勢、シャンプーやマッサージ、パーマ、カラーリング、消毒法などを学びます。


1年目はまず鋏(ハサミ)の開閉練習です。何を言っているんだ?と思われるかもしれませんね。
私もそう思っていたのですが、これが案外難しい。
理容鋏は、人指し指~小指の4本で鋏を固定し、親指だけで開閉させるのですが、はじめはどうしてもぶれてしまうんです。
変な癖がつくと取れなくなるそうなので、舎房に戻ってからも、鋏なしのエア開閉で練習の毎日でした。

これができるようになると、カットとヒゲ剃りの運行と体勢です。
どういう順番でカットするのか、どの位置で、体を何度傾けるのかなども決まっていて、体勢を変えながらの開閉練習を体が覚える迄、1年生の間はみっちりやるので、7年たった今でも体が覚えてくれています。

こうした基礎練習をしつつ、掃除・洗濯や先輩方の訓練を見学し、流れが分かってきたら、他工場の受刑者の散髪(丸刈り&シャンプー)を先輩から引き継ぎます。同時に、ウィッグでのカット、ヒゲ剃り練習を経て、いよいよ互いを練習台にしてのカット、ヒゲ剃りとなり、これを繰り返して試験課題のミディアムという髪形のイメージを固めていきます。

1年目はこうして過ぎていくのですが、はじめはもう散々でした。
カットすれば刈り上げすぎたり面がガタガタになったりで、ヒゲ剃りは特に思い出深いです。
熱々の蒸しタオルに肌をすべる剃刀の感触、極楽です。
が、そこにいたるまでどれだけ痛い思いをしたことか・・・蒸しタオルで視界ゼロなので余計に痛いし怖いです。
本当に思い深い1年でした。

それでは、まずは1年目ということで、2年目は次回書かせて頂きます。
ここ迄読んで頂い方にはありがとうございました。次回も読んで頂けたら幸いです。

これからは段々暑くなりますが、熱中症には気をつけて夏を楽しみましょう。


<俳句>

・母の日をのんびりできぬ母の性(さが)

・貧しさに負けし日のこと木下闇

・懲罰房出て 夏の風 夏の風

・官僚の折り目正しき ハンカチフ

・空気など読んでられるか ひきがえる


<短歌>

・父の背に覗く花束見ぬ振りの

   母の日の夜のいつもの母は

・そう言えば四十路半ばか

   酸欠の担架より見る五月の空は

・靭帯の伸びいし膝を嗚呼そうか

   我はこんなに弱かったのか

・つくるだけつくりノートに腐るでも

   熟れるでもなく並びし歌が

・蜘蛛の巣の傍に潜みし蟷螂に

   引き寄せられるごとくに蜘蛛は

2024年5月5日

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