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クルワンとは何だったのか?という話
クルワンのことを実に正確に説明したファンがいる。
「既存の2つのグループを無理やりくっつけ、双方のファンダムを内部分裂させ、かろうじて残った双方のファンが試行錯誤の中、ひとつの新たなファンダムをやっと築き上げたと思ったら、あっさり解散してそのファンダムさえも崩壊させたグループ(だから過去に一度も試みられたことはなかった)」
クルワンの結成と解散の経緯は以下のとおりだ。
JUST B(推し)とATBOというK-POPボーイズグループが合体し、The CrewOne(ザ・クルーワン)という新グループが誕生した。7月末の結成時は12人だったが、諸事情により11人で活動していた。ファンダム名はJOURNEY。結成の理由は、あとから分かったことであるが、韓国のサバイバル番組『ROAD TO KINGDOM ACE OF ACE』(通称ロトゥキン)に出場するためだったようだ。もともとATBOが出場予定だったこの番組に、JUST Bが同じチーム(つまりクルワン)として参加する形になった。
クルワンは以下の経過をたどった。
7月末:ロトゥキン放送開始に伴い結成(デビュー)
~11月初旬:ロトゥキンに出演。過酷な闘いを経て、かろうじて最後の5組の中に生き残る。順位は最下位の5位だったが、結成経緯の特異性、大所帯であることなどからそれなりに話題は提供し、各グループ(ATBOとJUST
B)の既存のファンだけでなく、「クルワン」としてのファンも獲得した。
11月中:韓国の英語系アイドル番組「AFTER SCHOOL CLUB」にクルワンとして出演。
11月末:突然「クルワン活動終了」を発表し、しばらく活動は続くのかと思っていたファンを驚愕させる。さらに、理由は「B事務所(JUST B所属)側の事情により」とあったことが、不安を助長する。
その数日後、1月に予定されていたロトゥキン出演グループによる合同コンサートの中止が発表され、活動は強制終了。ファンは最後の望みをバッサリと断ち切られる。
私は「(相手側の)ATBOも若くて可愛いから好きだし、クルワンも結構いいし」というほぼ全面容認派だったが、それでもそれなりに気持ちの整理というか、一生懸命応援しようと意識的に努力しなければならなかった。だから、ロトゥキン放送終了後も引き続き応援しようと気持ちを整えていたところに、いきなり「終わりです」と言われて面食らった。ここでXのタイムラインはひとしきり荒れる。
ただ、クルワン活動中は、管轄がATBO側の事務所だったせいなのか、あるいは、元はATBOがロトゥキンに出演することになっていたところにJUST Bが合流した形になったからなのか、どう見てもATBOの活躍の場の方が多いことに、私は少なからず危機感を感じていた。最終回に披露された、クルワンとしての初めての曲「HIT THE FLOOR」も、JUST Bの良さが全然発揮されていなくて、心底がっかりした。それでも、認知度を高めるための一時的な活動のためなら受け入れよう、そう思っていたところだった。
活動終了の原因となったJUST B側事務所の理由については現在も謎に包まれたままだが、私も含め、古株勢の意見は次のとおりでほぼ一致している。すなわち、「諸事情により」活動休止をしていたJUST Bのメンバーをクルワンに戻して、12人体制でクルワンの活動を続けるということに対して、ATBO側事務所がウンと言わず、交渉が決裂したのだろうと。
クルワン活動終了、活動休止メンバーのJUST Bへの復帰、クルワン出演予定だったコンサートの中止決定など、次から次へとニュースが続き、ファンはひとしきり翻弄された。
というのが事の顛末である。
では当のATBOとJUST Bはどうだったのかというと、これがまた最後のきちんとした挨拶もなく、それぞれ元の巣へあっさりと戻って行ったという印象を受けた。JUST Bのリーダーが、「JUST B」のリーダー、イムジミンです
と挨拶のコメントを送ってくれた時は、ロトゥキン期間中、ずっと禁句になっていたような「JUST B」という言葉を自ら発してくれて、ちょっと胸が熱くなってしまったが、本人達にとっても、クルワンはそんなに乗り気な活動ではなかったのかもしれない。
気の毒なのは、クルワンからファンになったJOURNEYさん達だ。
JUST BとATBOのファンなら帰る場所があるが、JOURNEYさん達には帰る場所がない。せっかくこれから応援し続けようとしていたグループがいきなり目の前で空中分解してしまった。
もちろん、もともとJUST Bのファンでも、クルワンとしても活動を続けてほしいなという気持ちがあった人達はショックを受けた。
こうやって誰が得したのかよく分からないクルワン活動は、さまざまな爪痕を残した。
いま思い返してみると、熱く燃え盛り、そして花火のようにあっという間に消え去ってしまったひと夏の恋のようだった。活動が終わってまだ2か月足らずなのに、すでに遠い出来事になっていて、思い出すのも難しい。
JUST Bはその後、元の6人体制に戻り、数日後に新曲をリリースする。
コンセプト写真を見ると「ああ、戻って来てくれたな」とホッとした気分になる。ロトゥキン最終回に先立ち発表されたニュース記事によれば、解散も考えていたというから、いつまで活動が続くかは全くの不透明だ。元に戻ったからといって、この先安泰とはほど遠い。
クルワンをきっかけに、ファンダムを離れて行った人も、残留してもくすぶっている人もいる。新しく知り合った人もいる。ファンダムの中での人間関係も含め、推し活における自分の距離の取り方について考え直す良い機会にもなった。決して、悪いことばかりではなかった。
私としては、彼らがやりたいことを全力でやる限り、こちらも全力で応援し続けるつもりだ。
すでに遠い記憶の彼方に飛んで行ってしまったけれど、
クルワンのベストパフォーマンス動画をここに記録として残しておきたい。