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散髪

初めてじゃなかろうか。
散髪屋で「この髪型にしてください」と言ったのは。

髪型には無頓着な方だ。いつもは、短く、とか、長めに、ぐらいにしか注文しない。伸びたら切るし、切ったら伸びるまで放ったらかし。コロナがあったので今回は5か月切らなかった。

そんな僕がどんな髪型にしようと思ったのかと言うと、韓国ドラマ「梨泰院クラス」の主人公のパク・セロイの髪型だ。
少しも恥じることなく正義や自由を語るセロイにすっかりやられてしまった僕は、3日悩んだ末にその髪型にする決意をしたのだ。
切ったあと「思った以上に似合わないな〜汗」と照れ笑いするシミュレーションまでしてその日に備えた。

そして当日、いつもの散髪屋、「今日は決めてきたんです」と言うと、案の定驚いた様子だ。よしよし…

「梨泰院クラスって韓国ドラマ知ってますか?」…その数日前にYahooニュースでも流行ってると言ってたほどのドラマだ。知ってろ。

「しらんわ〜笑」

内心、頼むわ!と思いながらも想定内。
「コレです」と携帯で用意していた写真を見せた。

「…前髪パッツンするん⁉︎」
「この前髪だけはやめとこか。あとは同じにするし」
「雰囲気はいい感じにうまく合わせる」

何年も僕の髪を触ってきた兄ちゃんの本気の心配である。

「わかりました。お任せします…」

としか言えなかった。
…四十は過ぎたがまだまだ不惑の域には至ってないなと感じた瞬間であった。

切り終わってみると充分前髪は短くしてくれたし、思ったより良くて満足し、妻からも「セロイやん、いいやん」とのことなのだが、やはり鏡で前髪を見る度に、決意を貫けなかった自分を見てしまうのだ。

次こそは前髪を…

とまでは思わんけど


その後3日ほど、妻には「イソ、ケンチャナヨ〜」娘には「スア、ケンチャナヨ〜」息子には「グンスー、ケンチャナヨ〜」と言って過ごした(もちろん絶望的に似てない)。

その3日間、楽しく過ごせたので安い買い物である笑


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