国内コンサルティング業界の最新動向!! コンサルティングは今、花形なのか!!!
こんにちは。
今回は、私の本業、コンサルティング業界について、久しぶりに分析整理したいと思います。
ソースは先日、週刊ダイヤモンドに掲載されていた特集「コンサル大解剖」になります。この記事の中でも、それなりに書かれていたことを私なりに整理して、さらに元コンサルティングファームにいた経験も踏まえ、個人的見解も入れていきます。
次の5つのトピックごとに整理していきます。
1. ビッグ8の成長が物凄い
2. 巨大化するアクセンチュアの強さ
3. デロイトの負の状況からみるコンサルティング会社のリスク
4. 拡大基調ではある戦略系ファーム
5. 業界外からコンサルティングへの参入
6. ベンダーSIerのコンサルティング強化
まず、みなさんはコンサルティング会社の業績を左右する変数はご存知でしょうか。
人員 x 単価 x 稼働率
ですね。ものすごくシンプルな公式です。
コンサルティングビジネスは基本的に物を仕入れて売っているわけではなく、あくまで人的なサービスビジネスであるため、上のような公式のそれぞれの変数に大きく左右されます。(成果報酬のような方式もないわけではないですが、ここではシンプルに考えます。)
そこで、業界の上位にある会社は、ある程度、同じレベルの経営をしていると想定すると、「単価x稼働率」はそれほど変わらないと思われます。すると、コンサルティング会社の業績を左右するのは「人員」ということになります。
「人員」は本来、レベルごとに、そのクオリティを見るべきですが、単純に売上ということを考えると、「人員数」がコンサルティング会社の売上に直結してきます。
そこで、週刊ダイヤモンドの特集で「コンサルティング会社の日本の人員数」が出ていましたので、そちらのデータをもとに個人的な見解を述べてみます。
「人員数」については、22社の人員数およびその増減が書かれていました。その22社を見ると、次の3つの会社タイプに大きく分かれることがわかりました。
そして、それぞれの2024年4月時点の合計人員数を計算してみます。
業界をリードするビッグ8(59,210人)
戦略系ファーム(3,070人)
中規模コンサル会社(5,950人)
22社合計(68,230人)
1. ビッグ8の成長が物凄い
なんと、コンサルティング企業22社のうち「ビッグ8」で86.8%を占めています。つまり、現在の国内のコンサルティング業界は規模的には次の8社「ビッグ8」の存在感が圧倒的に大きいのです。
アクセンチュア(23,910人)
デロイト・トーマツ・コンサルティング(5,160人)
PwCコンサルティング(4,940人)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(4,500人)
KPMGコンサルティング(2,050人)
野村総合研究所(9,400人)
アビームコンサルティング(4,900人)
ベイカレント・コンサルティング(4,350人)
しかも、さらにすごいのは、この「ビッグ8」の2023年からここ1年での増加人員の合計が6,810人、と、同規模のコンサルティング会社を1つ作ってしまうほどの規模なのです。規模が大きいでけでなく、成長率ものすごいですね。
「ビッグ8」の中でも、少し色分けしてみましょう。
まず、圧倒的に桁違いに規模が大きいのがアクセンチュアです。なんと「ビッグ8」の40%相当がアクセンチュア1社なのです。これについては次のトピックで説明します。
次に、規模の大きいのは野村證券グループの国産コンサルティング会社、野村総合研究所です。実はこのリストには載っていない金融系列の国産コンサルティング会社は他に三菱総合研究所(1,150人)、日本総研(2,962人)などもあります。
そして、会計監査法人系のグローバルコンサルティングファームであるデロイト、PwC、EY、KPMGが続きます。この4社も結構、最近、人数を増やしているそうです。また、アビームコンサルティングも元々デロイト系のコンサルティング会社からスタートしています。
ちなみに、アクセンチュア、デロイト、PwC、EY、KPMGはグローバル企業です。グローバルな人員数を参考までに載せておきます。
(ソース: グローバルのコンサルファームの社員数をまとめてみたwebページ)
アクセンチュア 733,000人
デロイト 457,000人
PwC 328,000人
EY 395,000人
KPMG 265,000人
グローバルでこれだけ大きな会社だと、日本のサイズ感も納得感がありますね。逆に、日本市場の大きさを考えると、アクセンチュアレベルが適切なのかも知れませんが。
最後に、最近、急成長しているのが、国産のコンサルティング会社ベイカレント・コンサルティングです。私は、実は2006年頃に、ベイカレントの前身であるPCワークスに在籍して、まさにコンサルティンググループの立ち上げを支援していたため、個人的には感慨深いところがあります。当時から営業力の非常に強い会社でした。
2. 巨大化するアクセンチュアの強さ
週刊ダイヤモンド「コンサル大解剖」特集記事でも、アクセンチュアの凄さについて、大分ページを使っていました。まず、先ほどから言っている巨大な人員数、規模感がそのまま強みでしょう。
アクセンチュア(日本)の2024年4月の社員数が23,910人で、前年の4月から比べて、なんと3,450人増えています。退職者もいるはずですが、それ以上に人を桁違いに採っているということです。
この23,910人という規模感のIT企業ですが、もう国内では、既にコンサル会社の競合はなく、規模で競合するのは、以下のような国内大手IT企業になります。(ソース:各社のwebページ、百以下の数字は四捨五入)
日本IBM 15,000人
NTTデータ 29,000人
NEC 22,000人
富士通 72,000人
アクセンチュアは、元々これほど大きな会社ではなく、例えば、私が在籍していた2004年頃は2000人に満たなかったレベルです。2012年頃に5000人になり、そして、規模が急成長したのは、江川さんが社長になった2016年からです。2016年から2024年までの8年間で会社の規模が3倍になっています。
そして、その牽引力は、アクセンチュア日本が10期連続で2桁成長を達成していることからも、会社の規模の成長とビジネス獲得の成長がうまく噛み合っていることがわかります。
週刊ダイヤモンドの特集では、その強さを「3つの強み」ということで、以下に表しています。
・IT内製化
・BPO
・買収
まず、「IT内製化」です。実は、私が在籍していた時から、アクセンチュアは基本的に「IT内製化」でした。開発時のエンジニアはどうしていたか、というと、なんと当時の我々、入社1-5年くらいの若い社員が実際にプログラミングからやっていました。もちろんプロジェクトによっては、外注エンジニアを採用する場合もありましたが、基本的な考え方は「IT内製化」でした。
実は、それによって、我々、若手コンサルタントのIT力やスキルを教育するという効果も大きかったと思います。
こうしたことから、アクセンチュアが未だに「IT内製化」を強みにしていることは、それほど驚きません。ただ、規模が昔と違って、大手SIerの規模になっているため、若手コンサルタントがOJTとして行うだけでなく、社内に技術力を持つエンジニア集団がいることが推測されます。
次に「BPO」です。こちらも私が在籍していた2000年前後からBPOは進めていましたので、それが、日本でも、ようやくビジネスとして成り立つようになったということなのでしょう。「BPO」というビジネスは、最初の立ち上げはコンサルタントが行いますが、その後の運用はコンサルとは異なるBPO部隊が長期に渡って請け負うことになります。
アクセンチュアの場合は、クライアント企業のそうした子会社と合弁会社を作り、クライアントごとにそうしたBPOチームを作り込んで行く方法をとっているようです。記事の中でも塩野義製薬、コカ・コーラボトラーズジャパン、日本マイクロソフト、LIXILグループなどのBPO事例が代表例であると紹介されていました。
最後に「買収」です。こちらはアクセンチュアの現在のポートフォリオに大きな影響を与えたようです。アクセンチュアジャパンの現在のビジネスポートフォリオ(本部)は以下のようです。(日経ビジネス2024.7.29号より)
ビジネスコンサルティング(経営や事業戦略の立案)
インダストリーX(製造物流業向けDX支援)
テクノロジーコンサルティング(ITシステムの構築・保守運用)
オペレーションズコンサルティング(オペレーション業務の受託や自動化)
ソング(顧客体験設計やマーケティング企画)
「ビジネスコンサルティング」、「インダストリーX」、「テクノロジーコンサル」の3つについては、従来のアクセンチュアのコンサルティング、デリバリーのビジネスです。
「オペレーションズ」については前述のBPO部隊が大きくなったものと思われます。
私が在籍していた当時に全くなかったものが「ソング」(顧客体験設計やマーケティング企画)です。
アクセンチュアはこの本部(ポートフォリオ)を作るために、2016年にデジタルマーケティングに強い「アイ・エム・ジェイ(IMJ)」を「買収」しました。
2022年11月にはTOBでビッグデータ解析などを手がけるAIベンチャー「ALBERT」を買収しました。
そして、2023年7月には、さらにマーケティング領域を強化すべく、国内PR会社大手の「シグナル」の買収を発表しました。
このように、昔のアクセンチュアになかったポートフォリオとして、マーケティングやAIなどの新しい分野を積極的に「買収」して「ソング」という新たなとんがったビジネスチームを作っているのです。
この週刊ダイヤモンドの記事に加えて、日経コンピュータ2024.7.29号に次のような記事がありました。「アクセンチュア江川社長が語る強さの秘訣- デジタルシフトをいち早く 組織間の横連携に自信」
この記事の中で、江川さんは次の3つがアクセンチュアの強みと語っています。
(1)脱・体育会系で誰でも働きやすい職場に
(2)デザイナーなど多様な人材を融合
(3)エンドツーエンドで顧客の課題に対応
(3)については、コンサルティング会社としては当たり前のことですが、これはクライアント1社に対して、先ほどの5つのポートフォリオを融合させて提案できるということなのでしょう。
(1)、(2)については、私が在籍していた古いアクセンチュアにはない部分です。2,000人から20,000人規模の会社となるために、社内改革をしてきた、ということのようです。素晴らしいですね。
3. デロイトの負の状況からみるコンサルティング会社のリスク
週刊ダイヤモンド特集がアクセンチュアの次にページを割いていたのが、このデロイト問題でした。要はデロイトジャパンが2023年10月に業績悪化しているという内部資料を入手して、それについて詳細に整理している記事となります。
実は、リーマンショックなどの景気停滞が起きた時に、コンサルティング会社がデロイトのような業績低迷、予算未達の状況になることはそれほど驚くことではありません。景気低迷時に真っ先に削られるのがコンサルティングフィー、外注費だからです。
ところが、現在の状況は、コロナ禍はありましたが、日本経済、特に企業業績は右肩上がりに伸びており、日本の株式市場も完全回復しました。
さらにデジタル化の要請で、IT需要も伸びており、こうした良い状況下で、なぜデロイトだけが業績が悪いのかということです。
先ほどの2023年から2024年までの人員で、デロイトのみが唯一、社員数が減っているのです。実際、デロイトは2023年の業績悪化の結果として、採用に急ブレーキをかけています。
こちらは本当かどうかわかりませんが、週刊ダイヤモンドの記事によると、以下のような内部要因が挙げられています。
トップをはじめとする経営層の判断ミスや暴走
大量採用を続けてきた末の人事戦略の失敗
組織のひずみや肥大化
行き過ぎた高額報酬
苛烈な派閥抗争
独裁体制による大静粛
さすが週刊誌ですね。スキャンダラスな言葉が並んでいます。
さらに、デロイトの最近のネガティブなニュースとして、江崎グリコの事例が紹介されていました。江崎グリコは2024年4月3日に基幹システムを新システムに切り替えたところ、システム障害が発生し、商品が出荷停止に追い込まれる事態になったそうです。それにより生じた損害により、江崎グリコは2024年12月の連結利益を40億円ほど下方修正して、増益予想から一転減益となる見通しとしました。
さらに、このシステム障害により、通期の営業利益を60億円、売上高を200億円下押しすると試算しているようです。
そして、この江崎グリコの基幹システム刷新プロジェクトこそ、デロイトが数百億円かけて取り組んでいたプロジェクトだったということです。
今回のシステム障害を受けて、デロイトは大量動員をかけ、システムを復旧したとのことです。さらに江崎グリコへの補償もあるのでは、と、大変なことになっているようです。
(以上、週刊ダイヤモンドの記事より、要点を抜粋)
このデロイトの事例から言えるのは、昔から(アクセンチュアでさえ)コンサルティング会社の大規模開発プロジェクトには失敗例もあり、その影響はプロジェクトの規模が大きくなるに従って、経営を揺るがせるリスクになっているということです。
記事にはありませんが、アクセンチュアはそうした失敗プロジェクトをなくすためにガバナンスやリスク対応をしっかりしているのかも知れません。
他のコンサルティング会社もひとごとではありません。一つ大規模プロジェクトが失敗すれば、今では数百億円レベルのマイナスもありうるため、経営上、最大限、気をつけなければいけないポイントではあります。
4. 拡大基調ではある戦略系ファーム
さて、続いては戦略系のコンサルティングファームです。顔ぶれは以前から変わりませんが、戦略系も国内の顧客需要が伸びている中、基本的には拡大路線を歩んでいるようです。
以下、最新の人数です。
ボストン・コンサルティング・グループ 1,155人
マッキンゼー・アンド・カンパニー 884人
A.T カーニー 281人
ベイン・アンド・カンパニー 274人
アーサー・D・リトル 227人
ローランド・ベルガー 144人
また、戦略系コンサルファームも総合コンサルと同様に、最近ではデジタル案件が増えてきたことも人材を増やす必要がある要因でしょう。
特にボスコン、マッキンゼーの両社は、この5年で300-400人ほど人数を増やしているようです。
さらにA.Tカーニーの成長率が凄まじく、この5年でなんと2倍になったようです。
5. 業界外からコンサルティングへの参入
コンサルティング業界外からの参入勢として、週刊ダイヤモンドに掲載されていたのが伊藤忠商事と電通でした。伊藤忠商事は戦略系のボストン・コンサルティングとの合弁事業として、I&Bコンサルティングを発足し、企業のDX支援を上流から下流まで始めたようです。
また、同じく商社の丸紅は2020年にドルビックスコンサルティングを設立しています。
6. ベンダーSIerのコンサルティング強化
週刊ダイヤモンドには、コンサルティング会社ではなく、ベンダーSIerという位置付けで載せていましたが、デジタル分野、いわゆるITコンサルティングの領域では、引き続きこうしたベンダーSIerのコンサル部隊も存在感を放っています。
大手ベンダーSIer各社はそれぞれ強力なITコンサルティング部隊を持っています。
・富士通は2025年までにコンサル人材を1万人増やす計画、傘下にRidgelinezを持っている
・NECは子会社としてアビームコンサルティングを持っている
・日立は情報通信事業部にEXコンサルティング部隊を持ち、また子会社として日立コンサルティングを持っている
・IBMは強力なITコンサルティング部隊を持っている
・NTTデータはNTTデータ研究所やクニエなどを子会社として持っている
こうした大手ベンダーSIerは、数の上では、ビッグ8と同じくらい、いや、それ以上の規模感があります。また、ビッグ8が上流から下流まで侵食しているのに対して、逆に下流から上流まで顧客のニーズを満たそうとしています。
ただ、ここからは個人の所感となりますが、どうしてもベンダーSIerは、社内においてはシステム開発をメインとする、ものづくりが経営の中心で、かつ、社外からは、ベンダーとして見られがちのため、下流から上流をカバーするのは難しいような気がします。
特にコンサルティングはブランディングが大事であるため、大手ベンダーというイメージがつきまとってしまいます。
NECとアビームコンサルティングのように、明確にブランドを分けたほうが良いかもしれません。
以上、週刊ダイヤモンドの記事にプラスアルファして、最新のコンサルティング業界の動向を6点にまとめてみました。
1. ビッグ8の成長が物凄い
2. 巨大化するアクセンチュアの強さ
3. デロイトの負の状況からみるコンサルティング会社のリスク
4. 拡大基調ではある戦略系ファーム
5. 業界外からコンサルティングへの参入
6. ベンダーSIerのコンサルティング強化
さて、この記事を書いていたら、タイムリーなことに、日経新聞2024年8月1日号、Business Dailyという特集に、次の記事が1面にまとめられていました。
「国内コンサル7万人に膨張 – 大手7社 アクセンチュアは買収で補強 - DX人材争奪業界超えて」
ここで、日経新聞社が7万人としている大手7社は次のようです。
・アクセンチュア(23,910人)
・デロイト・トーマツ・コンサルティング(5,160人)
・PwCコンサルティング(4,940人)
・EYストラテジー・アンド・コンサルティング(4,500人)
・KPMGコンサルティング(2,050人)
・ボストン・コンサルティング・グループ (1,155人)
・ベイカレント・コンサルティング(4,350人)
ただ、これら7社について、週刊ダイヤモンドの人員数を合計すると、46,065人にしかならないですよね。
なぜ、日経新聞では7万人と言っているのか調べてみると、デロイト・トーマツ・コンサルティングでなく、デロイト・トーマツ・グループでカウントしているようですね。グループにするとコンサルティング以外に監査、税務、ファイナンシャルも入ってくるため、210,000人となるようです。
コンサルティングだけで考えるのであれば、週刊ダイヤモンドの方が適切であるような気がします。
数字の取り方には違いがありますが、論調は同じように、今、国内コンサルティング会社は人員を大量に採用、また他社を買収して規模を膨らませているということです。
日経新聞では、その理由として、生成AIやデータ分析を使って販売、生産、財務など、あらゆる企業活動を変革する需要が急増しているため、とあります。
この論調自体は、何をいまさら、という感じがしないでもないです。
そして、最後に、2021-23に他業界からコンサル業界に転職した人が2014年と比べて2.5倍となった、新卒人気に加えて他業界から、今、コンサル業界に人材が流れ込んでいると。
コンサルティング業界、今、花形じゃないですか!
それでは。