「ネット誹謗中傷」は防ぐことはできないのか整理してみた?!!
こんにちは。
今回は、どストレートな時事ネタ「ネット誹謗中傷」問題について掘り下げてみたいと思います。
以下の順番で整理していきます。
1. 有名人へのネット誹謗中傷の増加
2. ネット誹謗中傷の罪状
3. ネット誹謗中傷とパワハラ
4. ネットにおけるガバナンスと対策(調査結果を踏まえて)
5. ネット誹謗中傷を防ぐためにプラットフォーマーができること
6. ネット誹謗中傷の窓口設置
7. 国としてできること
1. 有名人へのネット誹謗中傷の増加
芸能界やエンタメ界で活躍する人たちは、職業柄、多かれ少なかれ、SNSで心ない人たちの誹謗中傷を受けているようです。
最近でもこんなニュースが駆け抜け、衝撃を与えました。
ryuchellさん急死、原因はSNSでの誹謗中傷か
ryuchellさんは2016年に相方のぺこさんと結婚して、一児をもうけましたが、2022年8月に離婚した後から、ネットで誹謗中傷が激しくなったといいます。そして、先月、その心労からか、自ら命を絶ってしまいました。
ryuchellさんの自殺は、こうしたネット誹謗中傷に対して、再び世間が注目する機会を与えてくれたのですが、最近では同様のニュースが目につきます。
グラドル、ゆうみ、一部ファンから迷惑行為や誹謗中傷されて活動休止
Vチューバー、アクシア・クローネ活動休止、原因はSNSの誹謗中傷、虚偽情報流布
また、過去に大きな事件となった例では、2020年に自殺した女子プロレスラー兼タレントの木村花さんもその原因がSNSの誹謗中傷であったと言われています。
現代では一人一台スマホやタブレット、PCを持って情報発信する時代で、SNSはそんな個人の意見を一般に公開できる場として日常的なものとなりました。
特に芸能人やアイドル、また最近ではユーチューバー、Vチューバーも含むエンターテイメントを世の中に提供している人に対しては、昔であれば、ファンレターやアンチファンレターですが、今やSNSで直接その人のアカウントに、自由に、何でも伝えることができるようになりました。
それが、社会問題となっている「ネット誹謗中傷」の背景です。
「誹謗中傷」とは、「相手の悪口を言ったり相手を罵ったりして、相手を傷つける行為」を言います。そうした行為をインターネット上の主にSNSで行うことが「ネット誹謗中傷」です。
2. ネット誹謗中傷の罪状
一般的に「誹謗中傷」を行われた時には、以下のような犯罪として訴えることができるようです。
・名誉毀損罪
・侮辱罪
・脅迫罪
・偽計業務妨害罪
・威力業務妨害罪
このように「ネット誹謗中傷」は、警察などに申し立てれば、SNS上であっても立派な犯罪となります。ここで、有名人に対する「ネット誹謗中傷」の場合、問題なのは、対象が特定できる「1対1」の関係ではなく、「1対多」として、いわゆる「匿名」でやられた場合です。
「匿名」で誹謗中傷、すなわち侮辱された場合には、被害者は相手を特定して控訴する必要があります。ところが、本人特定に時間がかかる、また、最悪、特定できないこともありえます。
加えて「ネット誹謗中傷」の中心となる「侮辱罪」は以前は以下のようにとても軽いものでした。
・勾留または科料に処する
・公訴時効が1年
・現行犯逮捕や教唆、幇助に制約
これが「ネット誹謗中傷」問題の激化により、2022年に「侮辱罪」が厳罰化され、以下のように変わりました。
・1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または勾留もしくは科料
・公訴時効は3年
・現行犯逮捕、教唆、幇助も適用される
このように「ネット誹謗中傷」は犯罪であり、厳罰化されたのですが、どれだけ抑止効果があるのか。それでも誹謗中傷する人間はまだ大勢いるんですよね。
3. ネット誹謗中傷とパワハラ
この「ネット誹謗中傷」は、同様に人を傷つける「パワハラ」「セクハラ」などの「ハラスメント」に犯罪の性質が似ていると思います。
「ハラスメント」の場合も、同様に「侮辱罪」「名誉毀損罪」または「強要罪」などが適用されますが、「ハラスメント」の場合、その抑止効果が割と高い理由は、企業や組織が「ハラスメント」をなくすためにきちんとした規則や懲戒の規定を作っていることですね。
会社をクビになるリスクがあれば「ハラスメント」はやらないですよね。
これと比較すると、「ネット誹謗中傷」はそうしたガバナンスが効いていないことが問題なのではないかと思います。
4. ネットにおけるガバナンスと対策(調査結果を踏まえて)
ネットにおけるガバナンスをもう少し効かせられないのか。またネットで誹謗中傷することが、その人のリスクになるような仕掛けは作れないのか。
そして、ネット利用者が誹謗中傷に対して控訴や裁判ではなく、もっと簡単に安全に対処できる方法はないのか。
ここで三菱総研が調査したすごく良いレポートがありました。
こちらを参考に、具体的に「ネット誹謗中傷」の実態を少し整理してみたいと思います。
『インターネット上の誹謗中傷情報の流通実態に関するアンケート調査結果』三菱総合研究所
https://www.soumu.go.jp/main_content/000813680.pdf
◯ 誹謗中傷等に関する投稿の目撃経験率は50.1%と、ほぼ半分の人が目撃
◯ 目撃した際のサービスは以下の通り
1位 Twitter (現在X)
2位 掲示板チャンネル(2ちゃんねる、5ちゃんねる、爆サイ)
3位 Yahoo!コメント(知恵袋、ニュース、ファイナンス)
4位 YouTube
5位 Instagram
6位 Facebook
7位 Tiktok
なんと、ネット誹謗中傷はTwitter (現在X)が一番多いのですね。
◯ 過去1年間にSNSを利用した人の1割弱が誹謗中傷の被害にあっている。
この1割多くないですか?10人に1人がネット誹謗中傷の被害者?
◯ 不適切な投稿があった際、それをサービス提供事業者に違反申告できることを知っているか、との質問には、なんと67.1%(3分の2強)が知らないと言う回答。
◯ SNSを安全に利用するための機能(ミュート、ブロック、コメント表示など)を知っているか、との質問には、これも62.7%(6割強)が知らないとの回答。
この最後の「違反申告手続き」と「利用者が使える安全機能」を被害者も運営者も適切に運用できることが大事ですね。
5. ネット誹謗中傷を防ぐためにプラットフォーマーができること
SNS運営のガバナンスを機能させるためには、こうした「違反申告手続き」と「利用者が使える安全機能」などを利用者にもっとプッシュ型で徹底周知させ、「SNS運営者自らが「ネット誹謗中傷」を撲滅するんだ」という強いポリシーがSNS事業者に欲しいですよね。
「ハラスメント」と同様に、国が法律でSNS運営事業者に「ネット誹謗中傷」を撲滅するためのガイドラインや罰則規定のようなものを作らせて、この大きな社会問題である「ネット誹謗中傷」撲滅のためのロードマップを作らせるべきです。
先程の調査で「ネット誹謗中傷」が一番多いのはX(元Twitter)です。
ところがX(元Twitter)は「ネット誹謗中傷」に対して消極的と言われています。ある方が、以前、元Twitterにネット誹謗中傷について相談した時、「誰もが利用できるプラットフォームの運営者自身が、発言の妥当性に関して積極的に判断し、削除したり投稿者の利用を制限したりすることはできない」と言われたそうです。(ネット上の過去の体験談より。現在はもう少し良くなっている可能性もあり)
果たしてそうでしょうか。
「ネット誹謗中傷」がこれだけ社会問題となって、自殺者も出ている状況では、この杓子定規のポリシーを語るだけでは、SNSプラットフォームの運営会社として責任逃れにしか聞こえません。
X(元Twitter)がイーロン・マスク氏によって変わるのであれば、こうした杓子定規のプラットフォーマーからより「社会をより良くしようとする未来のプラットフォーマー」に変わっていかなければ、X(元Twitter)は生き残っていけないでしょう。
現に、他のSNS、例えばInstagramなどはもう少し積極的に「ネット誹謗中傷」を撲滅しようとしているようです。
Instagramには望まないやりとりを抑制するための機能が豊富にあると言われています。
例えば、新規アカウントからのコメントを禁止する機能があり、匿名新規アカウントからの嫌がらせコメントを抑制することができるようです。
是非、イーロン・マスク氏にもX(元Twitter)にこうした望まないやりとりを抑制するための機能を充実させてほしいと思います。
6. ネット誹謗中傷の窓口設置
ちなみに「ネット誹謗中傷」にあった際に「ハラスメント」と同様に相談窓口がきちんと設置されていることも大事かと思います。こちらも三菱総研さんのレポートにありました。
相談窓口の認知度
1位 みんなの人権110番(法務省) 16.6%
2位 地方自治体の各種窓口 15.9%
3位 誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会)11.4%
4位 違法、有害情報相談センター 7.6%
一般的な窓口はいくつかあるようですが、それにしても認知度低いですね。このあたり、国がやっているのであれば、もう少しPRを強化したらどうでしょうか。
また問題なのは、SNS事業者の相談窓口が選択肢にないことです。SNS事業者が日本でサービスを提供する際には、日本の法律でこうした「ネット誹謗中傷」専用の相談窓口を必ず作って認知度上げて運用すること、としたらどうでしょうか。
7. 国としてできること
以上、すでに対策していることもあるかもしれません。この「ネット誹謗中傷」撲滅、これによって社会の大勢の人が傷ついたり、自殺しているのであれば、国やプラットフォーマーがもっとガバナンスを効かせることが必要です。
国ということであれば、他の国を見ると、以下のような政策をとっているところもあるようです。
ニュージーランドではネット誹謗中傷などの有害メッセージ送信を処罰する「有害デジタル通信法」が2015年に施行
ドイツではSNSなどにヘイトスピーチ、フェイクニュース、違法コンテンツなど24時間以内の削除を義務付ける「ネット執行法」が2018年に施行
日本の国会議員の皆さんも、是非、この社会問題解決に向けて頑張ってください!
それでは。