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オアシスチケット先着販売方法は問題?!!これでは転売ヤーにチケットを流しているだけ?!!
こんにちは。
先日、12月7日土曜日に世界的に有名なバンド、オアシスの再結成ツアーチケットの先着販売がチケットぴあで行われました。これに先立ち、前月の11月22日から26日の期間に先行抽選申込が行われました。
私はまず先行抽選申込に応募し、11月30日に落選通知を受け取り、やむなく今回のオアシスチケットの先着受付を期待し、当日、万全の準備をして、その時間を待っていました。
午前10時から受付スタートのため、30分前より、チケットぴあサイトの会員登録やクレジットカード情報の確認をして、開始5分前からスタンバイしていました。
ところが、開始2分前からサイトのリロードがものすごく遅くなり、午前10時になると画面が重なり、全く動かなくなりました。そして、しばらくすると、
「アクセスが集中してサイトを閲覧しにくい状態になっています。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、しばらくたってからアクセスしてください。」
といったメッセージしか表示されなくなりました。
何をクリックしてもフリーズするか、このメッセージが表示され、2時間が経過しました。そして、諦めた頃にサイトが出現して「予定枚数終了」となりました。
今回のチケットぴあにアクセスした人のコメントをネットで調べてみると、なんと皆が同じ状況で、このようにチケットを買う画面にさえ、たどりつけなかったようです。さらには、同じ時間帯で別のチケットを買おうとした人もアクセスができず困った、というケースも多かった様子。
つまり、10時スタートから何時間かチケットぴあのサイトはアクセス不能になっていたようです。もしかしたらサーバーがアクセス集中のためダウンしていたのかも知れません。
また、この先着販売で購入できた人がコメントしていないかネットで調べてみたところ、全く見つかりませんでした。コメントしている方は全員繋がらなかったようです。また、別の情報では、この後、すぐに公式ではないチケット販売サイトに転売ヤーと思われる人たちから大量にチケットが次々と出品されていたようです。
さて、これって何かおかしいと思いませんか?
私が明らかにおかしいと思ったポイントをあげてみます。
1. 「ぴあ」の独占販売となったこと
2. 先行抽選が1回だけで次が先着受付のみだったこと
3. 先着購入できたのがほとんど転売ヤーだけのようだったこと
4. ぴあの先着受付システムでは転売ヤーを防ぐような技術を導入していたか
1. 「ぴあ」の独占販売となったこと
まず、今回驚いたことは、オアシスの日本国内のチケットがぴあの独占販売となったことです。消費者側からみれば、イーチケットやローソンなどでもチケットの申込ができれば、少しは分散されていたような気がします。
ぴあ独占だったからこそ、今回の先着受付時の極端な集中を招いたと思います。
ちなみに、私はオアシスであれば、CREATIVEMANがプロモーターになるのではと予想していました。CREATIVEMANはサマソニなど多数の洋楽アーティストの招致実績とイベント経験があるため適任かと思われました。また、同じくビッグネームの招致実績が多いUDOなどもプロモーターとしてふさわしいでしょう。
今回の場合、例えCREATIVEMANやUDOだとしても、ネットでの先着受付を行なってしまえば、同じことになったかもしれません。
ただ、今回起こった問題は、チケット販売の当事者として、間違いなく独占販売したぴあにあるということです。
ちなみに、CREATIVEMANの場合、年会員になると、一般に先駆けてチケットの申込ができるシステムがあります。つまり、どうしてもチケットが欲しい(私のような)人の場合は有料で年会員になった上で、先行申込するという選択肢があったわけです。
ぴあについても、ぴあJCBカード、ぴあNICOSカード保有者にぴあプレミア会員というクラスがあります。また、無料のぴあ会員にもステージというレベル分けがありますが、今回の場合、そうしたハイクラス会員向けの先行受付はなかったようです。(私がプレミア会員でないため確実ではないですが、少なくともネットでは、そうした特別会員向け先行受付という表記はありませんでした。)
つまり、チケットぴあの場合、会員ステータスに関係なく、全て一律に先行抽選→先着という手続きしか提供しなかったということです。この辺りは、一般以外の特別枠をもう少し考えたほうが、別の意味で公平だったと思っています。つまり、転売ヤーにではなく、正規に追加投資をした個人にチケットを取る確率が上がる選択肢も設けるべきだったということです。
2. 先行抽選が1回だけで次が先着受付のみだったこと
さて、次におかしいと思ったことはチケットぴあの販売方法です。チケットの販売方法には先着販売と抽選販売の2つがあります。
少し昔、ネットの普及していない時代では、チケットを販売する方法は電話かプレイガイドなどの窓口しかありませんでした。その場合、販売手法は先着販売しかなかったと記憶しています。
まず、窓口販売であれば、有名なアーティストライブの場合、販売場所の前に徹夜の待ち行列が発生していました。今のアップルストアの新型iPhone発売のような情景でしたね。
電話であれば、販売時間に、購入希望者が一斉にチケット販売の窓口電話に電話をかけて、つながれば購入できるというスタイルでした。これは今のネットでの先着販売と同じシステムではあります。
ところが、ネットでのチケット販売が主流となった現代では、チケットサイトに事前に会員登録をすることにより、購入希望者の個人情報が登録できることから、後から当落を通知できる抽選販売というスタイルが一般的となっています。
最近では、有名アーティストの場合は必ず抽選販売の方法をとります。抽選販売の方が、地方などの遠方にいる人や、仕事中などさまざまな事情により、チケット販売開始日に購入できない人でも、ネット申し込み期間中であれば誰でも申込できるので、最も公平性の高い手段だからです。
有名アーティストの場合は、基本的に、一回の抽選販売のみでもソールドアウトできるはずです。ただ抽選販売の場合、申込をした人がコンビニ決済などで支払い忘れる可能性があるため、当選してもキャンセル扱いになる人がでてきます。そのため、よくある方法は複数回の抽選販売を行い、1回目でキャンセル扱いになったチケットは2回目以降の抽選販売で再販する方法がとられているようです。
それでは、先着販売は何のために行うのでしょうか。一般的には次の3つと言われています。
(1)先着販売の大々的なプロモーションを行うことで、先着販売がメディアやSNSの注目を集める広告効果がある
(2)先着販売日以降に購入希望者がすぐに購入するため、収益が迅速に確定できる
(3)チケット販売者の方で抽選販売のような手続きやそのためのシステムが必要ないため、コストがかからない
さて、ここで今回のオアシスのケースを考えてみましょう。オアシスは間違いなく超有名なアーティストで、しかも今回は話題性の高い再結成ライブです。
チケットぴあが1回目に行なった先行抽選は、その意味で妥当なやり方でした。
ところが、通常であれば、1回目の抽選販売で発生したキャンセル分を売り切るために2回目、3回目の複数抽選販売を行うはずですが、その方法を取りませんでした。チケットぴあは2回目以降の抽選販売は行わずに、いきなり先着販売の手法をとってしまったのです。
なぜ、チケットぴあは先着販売を行なったのか?
(1)の広告効果は最初から話題になりすぎていたため該当しないでしょう。そうすると(2)の収益の迅速確定と(3)のコスト削減がその理由と思われます。つまり、先着販売をした目的は、あくまで会社側の事情であるということです。ただ、今回、残念なことは、先着販売により、チケットのほとんどが転売ヤーに流れてしまったことです。
3. 先着購入できたのがほとんど転売ヤーだけのようだったこと
さて、次にいよいよ核心に入っていきます。今回、チケットぴあにより行われた先着販売は、PCやスマホからチケットぴあの通常のウェブサイトを通じて、つまり、オアシス用に特注のサイトを作ったわけではなく、一般のチケットと同様のシステムで行われたものでした。
そして、結果として、ほとんどの個人ユーザーは、開始と同時にサイトが動かなくなり、その後にサーバー集中のエラーメッセジが長時間表示される状態となり、チケットサイトにたどり着くことなく終わりました。
その理由は、転売ヤーからの高速大量アクセスのせいであることは、ほぼ間違いないでしょう。転売ヤーからの高速大量アクセスは「自動購入BOT」というシステムで行われます。このシステムは、ネット上の情報収集を自動化する「スクレイピング」や「クローリング」と呼ばれる、真っ当なテクノロジーを利用してプログラムされています。
「自動購入BOT」は販売サイトの情報に高速でアクセス、その後に購入者の氏名や住所、クレジットカード情報の入力などの購入手続きまで、全て自動で瞬時に行うことができます。いくらタイピングの早い個人ユーザーでも、瞬時に決済まで済ませてしまう「自動購入BOT」にはスピードで敵いません。
この「自動購入BOT」と合わせ技で行う方法として「アカウント大量作成」があります。こうして作成した大量のアカウントと「自動購入BOT」によって、同時並行に大量のウィンドウ処理や手続き処理を高速に行うことで、何も対策していないチケット受付システムであれば、短時間で全てのチケットを購入してしまうことも可能です。
また、今回はオアシスの再結成ライブということで、海外勢も含めた複数転売ヤーの「自動購入BOT」による争奪戦があったのではないかとも考えられます。やれやれですね。
少し古いですが、2018年の日経新聞の記事で、このようなものを見つけました。
自動ソフトの申し込み9割 チケット転売にIT悪用か(日経新聞 2018.8.23)
米IT大手アカマイ・テクノロジーズがイープラスのネット受付サイトのチケット受付開始から30分間のデータを調査したところ、約50万回のアクセスのうち、約45万回が自動プログラムによるものと解析しました。この分析によると、約45万回のアクセスのほとんどは、100程度の特定アカウントを利用して、国内数百ヵ所から同じプログラムを使って集中的に行われていたようです。1アカウントあたりではなんと4500回の申込をしていたことになるそうです。明らかにプロ転売ヤー集団ではないかとの記事でした。
現在、2018年から6年も経過しており、IT技術の進化はさらに巧妙、高速になっているはずです。これに対してチケットぴあの受付システムはどの程度改善されていたのか、明らかに転売ヤーの最新のITを使った「自動購入BOT」の方が優秀でしょう。転売ヤーはこうした最新のITを使って、今回のチケット大量購入を可能にしたのでないかと推測されます。
さらに、もしかしたら途中からチケットぴあのサーバーそのものがパンクして動かなくなった理由は、DoS攻撃と言われるサイバー攻撃で、チケットぴあの販売システムサーバに急速に負荷をかけて、他の購入者のアクセスを邪魔していたのではないかとも推測されます。
いずれにしても、ぴあは2018年のイープラスのように、きちんとデータ分析を行い、今回「自動購入BOT」と思われるアクセスがどのようにあったのか、「DoS攻撃」なども同時に行われていたのかなど、きちんとしたレポートを我々個人のユーザーや社会に対して公表、開示するべきであると思います。
4. ぴあの先着受付システムでは転売ヤーを防ぐような技術を導入していたか
こうした転売ヤーの「自動購入BOT」への事前対策は国内よりも海外の方が進んでいるようです。オアシスの海外でのチケット販売の経験談がネットにいくつかありましたので、こちらを参考にさせていただきます。
https://tokyobentolife.com/info/oasis-live25
https://note.com/kaoru_kaze/n/ncb61297ffe87
このロンドン、オーストラリアでのオアシスライブチケットの購入ケースでは、両者共に「Ticketmaster」という大手のチケット販売サイトから購入されていました。そして「Ticketmaster」の販売システムは「先着受付」となります。
ところが、この「Ticketmaster」の受付システムがチケットぴあと大きく異なるのは、「Waiting Room」という、待ち行列が「見える化」されていることです。購入希望者は、まずクリックすると、必要な時間(これも表示されるよう)だけ待たされて、まず「Waiting Room」という段階に入ります。そして、「Waiting Room」に入ると、自分の待ち番号が表示されるようです。もちろん、オアシス再結成ライブの場合は多くの人がアクセスしていますから、待ち番号は10000番以上になることが普通のようですが。そして、根気強く、番号が少なくなるのを数時間待つと、サイトの受付購入画面が出てくるというシステムです。
この「Waiting Room」は国内では東京ディズニーリゾートが採用しているようです。ディズニーランドのチケットを特定日に買おうとすると、購入者はまず「Waiting Room」に通され、ディズニーの場合はそこでシステムが推測した待ち時間が表示されます。そして、重要なことは、この「Waiting Room」システムを使えば、前述したチケットを瞬時に高速大量購入する、「自動購入BOT」の障害となることなのです。
つまり、転売ヤーから送られたBOTも、個人ユーザーと同じように数時間待たされることになります。そのため、転売ヤーも瞬時に大量に購入することができずに、その分、個人の購入希望者に順番が回ってくる可能性も大きいと思われます。また「Waiting Room」中にうまく「自動購入BOT」かどうかのチェックを何らかの方法で行うことができれば「自動購入BOT」をその段階で排除することも可能です。
今回のチケットぴあのシステムは、こうした「Waiting Room」機能は持っていません。従来型の単純なチケット販売システムであると思われます。
それでは、チケットぴあのシステムは今後、世界大手の「Ticketmaster」のような「Waiting Room」機能を持った最新システムを導入する計画はあるのでしょうか。チケットぴあのシステム刷新に関するニュースとしては、以下の情報が2023年にリリースされていました。
チケット販売の基幹DBをOCIでクラウド移行(ASCIIxTECH 2023.5)
これはいわゆる今回のようなチケット先着販売時におけるアクセスピークと平時のアクセスが低い状態を上手にコントロールするため、基幹DBそものをオラクルOCIによってクラウド化したようです。今回のケースでもこのクラウド化によって先着受付時のアクセスピークタイムに最大限のリソースを利用できていたはずなのですが。
なお、これ以外のニュースは見つかりませんでした。もしかしたら将来の計画の中にあるのかもしれません。
また、チケットぴあの場合、チケットを購入した後の転売対策として、チケットの電子化を実現した「Cloak」そして不正チケット対策を講じた電子チケットの「チケプラ」のサービスをユーザーに提供しています。ところが、今回のオアシスの場合は、主催者側の意向なのか、こうした転売ヤーを少しでも防ぐ対策となる電子チケットサービスは提供されませんでした。これも不思議ですよね。
このように、今回の転売ヤーによる先着チケット大量購入に対して、チケットぴあはそれを防ぐようなシステムやその対策を用意していなかったような気がします。
その原因としては、ぴあの業績が大型のシステム投資をするほどまだ回復していないことが考えられます。ぴあのコロナ前後の売上推移を見てみましょう。
2018年 163,509(百万円)
2019年 179,969(百万円)
2020年 163,204(百万円)
2021年 67,355(百万円)
2022年 25,829(百万円)
2023年 32,763(百万円)
2024年 39,587(百万円)
コロナ前のぴあの売上は1700億円前後ありました。それが、コロナ禍を経て、現在300-400億円程度で推移しています。つまり全盛期の20-30%の規模になってしまったということです。ぴあの場合、チケットぴあという巨大なシステムの運用費用もあるでしょうから、新規のシステム投資は難しいかもしれませんね。悩ましいところです。
それから、これは憶測かもしれませんが、先ほどチケット先着販売のメリットに迅速な収益の確定、そしてコストダウンということを書きました。もしかしたら、ぴあがチケット先着販売に固執しているのは、業績が思わしくないため、少しでも会社の事情として、売上を早く確定させたかったからなのかもしれませんね。
以上、今回のオアシス再結成ライブのチケット争奪戦の考察でした。今回、チケットぴあの先着販売からどの程度転売ヤーにチケットが流れたのかはわかりませんが、「Ticketmaster」のような最新のシステムを導入できないのであれば、有名アーティストのチケットの先着販売はやめたほうがよいのかもしれません。
(以上、この記事で書いた内容については、個人の憶測と推測が多く含まれていますのでご容赦ください。)
それでは。