地方という名のガラパゴス諸島
「海外旅行が趣味で」
有名企業のインターンシップに参加すると、
そんな言葉が容易に飛び交う。
かつて社会学者ブルデューは、
当人が意識しないうちに身につけた言葉遣いや考え方、センスや振る舞いといった心的傾向を「ハビトゥス」と名付けた。
まさしくそれを感じた。
身なり、経験、趣味、余裕。
探るほどに経済的な差が浮き彫りになる。
生活財源としてではなく、
自身のキャリア形成のためにアルバイトの職種を選択できる階級におられる。
彼ら彼女らと何が違うのか。
ふつ気づいた最も大きな差は、
「時間の使い方」なのかもしれない。
有効な時間には余裕のある基盤が不可欠。
もしも基盤がしっかりしていなければ、
まずその確保に頭がいっぱいになる。
もしも基盤が万全であれば、
その富の使い方に頭を回す。
経済的余裕によって生み出される最も大きな恩恵は、物理的な富ではなかった。
精神的な余裕である。
その場で感じたのは、
彼ら彼女らとのギャップに対する恨みつらみや嫉妬の感情ではなく、
基盤の不安定さからくる無力感であった。
こうやって文化は再生産されていく。
親と子が似るのは血によるものではなく、
文化によるものなのだと、
改めて思い知らされる。
もしも大革命があるのだとすれば、
それを成した人々は、
自身の文化革命に成功した者たちだろう。
『社会学用語図鑑』著:田中正人、香月孝史 -プレジデント社