なぜワイヤレス給電において無効電力の活用がカギとなるのか
ワイヤレス給電は、電磁誘導(磁界結合)や静電誘導(電界結合)を利用して、交流電力を非接触で給電します。この交流電力を適切に扱うためには、「有効電力」と「無効電力」の概念が重要です。
有効電力と無効電力の概念
交流回路の電力には有効電力(Active Power)と無効電力(Reactive Power)があります。
有効電力は、実際に仕事をする電力であり、照明を点灯させたりモーターを回転させたりする、実際に利用される電力です。
無効電力は、直接的には仕事はしませんが、有効電力が仕事をするのを助けます。電力系統では電圧の維持に利用されています。
例えると、有効電力は試合に出場する選手、無効電力は選手をサポートするマネージャーのような役割を果たします。
共振コンデンサと進相コンデンサ
ワイヤレス給電では、コイル間距離が離れた場合でも、共振を利用することで電力伝送が維持できます。
具体的には、送受電コイル(L)にコンデンサ(C)を接続してLC共振回路を構成し、共振によって受電電圧を上昇させることで、コイル間距離が離れても電力伝送を維持することができます。
コンデンサを共振用だと考えれば以上のような動作として理解できますが、
一方で、このコンデンサを電力系統で利用される力率を改善するための進相コンデンサと考えることもできます。
進相コンデンサは進みの無効電力を供給し、遅れ力率を改善しながら受電電圧を上昇させます。(この進みの無効電力による電圧上昇をフェランチ効果と呼びます)
つまり、コイルにコンデンサを接続すると受電電圧が上昇するという現象を「共振コンデンサ」と「進相コンデンサ」の2つの視点から理解できるわけですが、ワイヤレス給電に無効電力を利用するためには「進相コンデンサ」という視点で捉える必要があります。
磁界生成と無効電力
ワイヤレス給電では、コイルに交流電流を流して磁界を生成し、この磁界を複数のコイルが共有することで空間が結合されます。
磁界を生成するエネルギーを励磁エネルギーと言いますが、この励磁エネルギーは、空間に蓄えられるだけで仕事をしません。
つまり、磁界は無効電力によって生成されるということです。そして、コイルにコンデンサを接続すると受電電圧が上昇するのは、コンデンサから無効電力を供給することで磁界を強めているためです。
結論
以上のように、ワイヤレス給電を緻密に制御するには、無効電力を自在に調整する機能が不可欠です。
もし、コンデンサを共振コンデンサという視点のみで考えていたとしたら、まずは交流回路の進相コンデンサという視点で捉え直してみてください。
無効電力制御の実現方法については別途解説しますので、ご質問などあればコメントください。
参考①
無効電力を使ったワイヤレス給電を解説しているYouTube動画
「双方向ワイヤレス充放電システムと電磁気回路理論」
※コンデンサに関する解説は14:33頃から
参考②
(公社)日本電気技術者協会の「音声付き電気技術解説講座」
・ 電力系統の電圧・無効電力制御
・ 無効電力と無効電力制御の効果
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