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同性パートナーシップ制度をどう使う?(後編) ーある企業からの相談事例ー

「当社には転居を伴う異動があります。そこである社員から、同性パートナーと暮らすのに、単身向け者宅ではなく家族向けの社宅を使えないか、と相談がありました」

ある企業の人事部の方からこんなお話を伺いました。なるほど、転勤のある企業では社宅の利用は重要なポイントですよね。

「今のところ、同性パートナーシップ制度を利用してパートナーシップ証明書を発行してもらい、会社に提出してくれたら許可しようかと考えています。しかし初めてのケースでして、パートナーシップを解消したらどうするか、パートナーシップ制度のない自治体ではどうするかなど、課題が山積みです。注意点などがあれば教えていただけますか?」

できる限り社員の希望に沿いたい、という思いでご相談くださいました。まずは整理整頓から始めましょう。

1.パートナーシップ制度で把握できないことは?

「自治体同士で連携して、パートナーシップ証明書が引き継げるようにしているところもあります。また一般社団法人Famiee(リンク)は、民間でパートナーシップ証明書を発行している団体なので、こちらを利用されている企業もありますね」
「ただ、パートナーシップを解消した場合、自己申告でしか把握できないと思うのですが、それはどう対応されているのでしょうか?」
「現在、異性カップルで法律婚をしている人には、離婚した場合に何か書類の提出を求めていますか?」
「いえ、基本的に自己申告です。ただ扶養控除の関係があるので、年に1回、税務処理のために家族状況をシステムで回答するようになっています」
「なるほど、同性カップルは法律上の扶養関係にないため、そこでは回答しないから把握できない、ということですね」
「そうなんです。人によっては離婚したことを職場で言い出しにくくて、システムでの回答で初めて会社に伝える人もいます」

うーん、離婚ってそんなに言いにくいことなのか。結婚式に上司や同僚を呼んでいたら、ましてやスピーチや余興なんかを頼んでいたら、気まずい思いをするのかも知れません。そこで私からは他企業の事例をお話しました。

2.社員の状況をどう把握する?

「ある企業では、婚姻の状況に関わらず、その人のキャリアプランを知るために、上司との面談で定期的に家族の状況を聞いています。例えばお子さんが現在10歳で、中学からは私立の学校に行かせたいからこの期間は転勤が難しいとか、今は親御さんの介護中だけど、施設に入居予定があってその後なら転勤できるとかですね。その一環で、もともと会社が家族の状況を聞いてもおかしくない面談の設計をすることもあり得ますね」
「なるほど、そういう機会に自然に聞くのはいいですね」

3.異動に伴う単身赴任はどうする?

「異動先の自治体にパートナーシップ制度がなくても、現在居住している地域のパートナーシップ制度を利用して証明書を発行してもらい、それを根拠に社員を単身赴任扱いにしている企業もあります。社員が単身赴任先から帰る、あるいは社員の同性パートナーが単身赴任先に行くとき、月に2回までは交通費を支給しているそうです」
「既に実現されている企業があるんですね。それは参考になります」

4.事実婚の異性カップルはどうする?

「ちなみに、事実婚している異性のカップルにはどのように対応されているのでしょうか?」
「それも悩みどころでして。社内では同性カップルのみ利用可能にしようと考えているのですが、他社はどうされているんでしょうか?」

他企業の事例って気になりますよね。社内での説明にも重要な根拠になりますもんね。

「同性パートナーシップ制度とお話していますが、自治体によっては『ファミリーシップ制度』として、家族であることを証明している場合もあります」と前置きして、私からは次のようにお話しました。

「ある企業では、事実婚している異性のカップルは該当しない、としています。担当者の方は『同性カップルは法律婚できないから会社が一定の支援を行うが、事実婚の異性カップルは法律婚できるのにあえてしていないのだから、会社がサポートする必要はない』と仰っていました。
ただ、いろんな事情のある社員が等しく働きやすく働きやすい会社を目指すのであれば、特定のライフスタイルを採る人だけサポートし、別のライフスタイルを採った人を切り捨てるような方針は適切でないと私は考えています。
事実婚を選ぶ人にもいろんな事情があります。そもそも結婚制度に反対する人、パートナーシップという個人的で情緒的な関係を国に認めてもらう必要はないと考える人、親御さんや親戚に反対されている人などです。
またある人のケースでは、お互いに以前のパートナーと死別した後に出会い、それぞれお子さんがいてそれなりに財産があるため、法律婚すると遺産相続の際に問題が起こるだろうから事実婚している、という方もいます。
そういったさまざまな人やさまざまな事情への想像力があれば、社員がより働きやすく働きやすい制度設計を考えることができるのではないでしょうか?」

このように私が申し上げると、ご相談くださった方は深く頷いていらっしゃいました。

人事制度設計をする方は、基本的に社員のためになるように尽力されています。その思いがあれば、自ずと制度の方向は決まっていくと思います。皆さまの会社ではいかがでしょうか? 参考になれば嬉しく思います。

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