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トランスジェンダーの日は存在しない?(前半)~男女二元論を考える~

こんにちは、プリンセススクゥエアーLGBTs担当のワカクサです。先週の記事「バレンタインデーに思う、企業のダイバーシティ推進への向き合い方」(こちら)を読まれた方から「ワカクサさんはどんな日があるといいですか?」とご質問をいただきました。

ワカクサが考える理想のイベントを語るに当たり、まずは「トランスジェンダーの日」についてお話しさせていただきます。

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明日、3月3日は雛祭り。時期的に桃の節句とも言われ、女児の健やかな成長を願う日です。その対になるかのように、5月5日端午の節句(たんごのせっく)である子どもの日で、一般的に男児の健やかな成長を願う日です。

その合間に当たる4月4日は「トランスジェンダーの日」、トランスジェンダーへの理解推進の日である、というネット記事を未だに見かけます。この真偽のほどはいかに?

私がLGBTsの当事者会に参加し始めた1990年代、「女子の日と男子の日の間がトランスジェンダーの日だ」という話は内輪のジョークとして語られていました。「トランスジェンダーには厄年が2倍ある」とも。女性の厄年は19歳、33歳、37歳。男性の厄年は25歳、42歳、61歳。「トランスジェンダーは苦難の多い人生を生きている。だから厄年がシスジェンダーの2倍あってもおかしくない」と笑いあったものです。

だから1999年、「TSとTGを支える人々の会」が一般社団法人日本記念日協会(こちら)に4月4日をトランスジェンダーの日として登録申請したとき、仲間内では「えっ、冗談だったのに!?」とちょっとしたざわめきが起きました。なぜなら、私が参加していた当事者会は「トランスジェンダーは女性の男性の間の存在ではない」という共通認識があったからです。

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LGBT研修などで、こんな図をご覧になったことがある方もいらっしゃるかも知れません。

そしてこんな例が掲載されているのも見たことがあるかも知れません。


①と②の人は、生まれたときに割り当てられた性別は女性、性自認=自分が思う自分の性別も女性なので、シスジェンダー女性であることは同じです。この二人は好きになる相手の性別が異なることから、ヘテロセクシュアル女性/レズビアン女性と表現されます。

そして③をご覧ください。この人は生まれたときに割り当てられた性別は男性ですが、性自認=自分が思う自分の性別は女性です。ここに乖離があるからトランスジェンダー女性と表現されます。

ここでご留意いただきたい点があります。①、②と同じく、③の人にも男性と女性の間にマルはありません。なので「トランスジェンダーは女性と男性の間の存在」と語るのは不適切です。

私が参加していた当事者会ではこの認識がはっきり共有されていました。だからこそ「トランスジェンダーは女性の男性の間の存在」という話題はあくまで内輪のネタだったのです。トランスジェンダー当事者に「あなたは女性でも男性でもない、中途半端な存在だ」と言ったら、その人の実感も尊厳も傷付けることでしょう。

そして、当時20代前半だった私はこんなふうにマルを付けました。

メンバーA「クエスチョンマークなの? しかも男女のライン上じゃないの?」
ワカクサ「いやね、仮に男性と女性の間とすると、例えば男性70%、女性30%だとしたら、それっていずれにせよ男性成分と女性成分で構成されてるじゃない? 自分は男性でも女性でもないと思ったとき、この図だと表現できないのよ。だって男性成分も女性成分もゼロなんだから」
メンバーB「好きになる相手は?」
ワカクサ「男性も女性も好きにならない、と言うか恋愛そのものに興味がない場合、どこにマルしたらいいと思う?」
メンバーC「あー、そういう人もいるよね。これだけど好きになる人は男性と女性しか想定してなくて、かつ恋愛が当たり前みたいに見えるよね」

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「性別は男女2つしかない」という考え方を「男女二元論」と言います。そして人間は恋愛に関心を持ち、恋愛感情は友情より上位である、という考え方を「恋愛至上主義」と言います。こうした考え方を前提に設計された社会の中で、息苦しい思いをする人がいます。そんな人もセクシュアルマイノリティ=性的少数者としてLGBTs当事者会に参加していましたし、現在も参加し続けています。

こうした経緯から、私は男女二元論と恋愛至上主義に拠らない言葉を探して「Xジェンダー」「Aセクシュアル」という言葉で自分を説明するようになりました。もしかしたら「クィア」「クエスチョニング」「ノンセクシュアル」「ノンバイナリー」「パンセクシュアル」「デミロマンテック」といった言葉の方がより実態に近いかも知れません。そして私がまだ知らない言葉もたくさんあることでしょう。

このように多様な私たちをより適切に説明する言葉が増える中で、相変わらず「トランスジェンダーは女性の男性の間の存在」と語り続けることは現実的ではありません。いつの間にか一般社団法人日本記念日協会の公式サイトから「4月4日:トランスジェンダーの日」が消えたことを知ったとき、ああ、知識も意識もちゃんとバージョンアップしないとなあ、と感慨深く思ったものです。

さて、この長い前置きを踏まえた上で、次回、ワカクサが考える理想のイベントについて書かせていただきますね!

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