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スヴェルト

CAはかつてインフルエンサーだった。

そんな時期があった。

クリスチャンディオールのスヴェルトというのをご存知だろうか?
「ぬると痩せる!」というのはNGワードなので「ぬると引き締め効果がある!」などと言われた、楽して痩せる(はずないと分かっちゃいるのに・・・)アイテムのひとつで、バブル後期(という言い方はあるのかな?)に年ごろの女性(に紛れてそうじゃない女性も)がこぞって欲しがったクリームである。

デパートでは行列ができていたり、品切れ表示があったり、免税店でも品切れ表示をよく見かけた。

なぜあのクリームはあんなに人気だったのだろう?スヴェルトで劇的に痩身ボディになった人はいるのだろうか?そしてそのボディは今いかに・・・。

かつてCAがお勧めと言ったものは雑誌やテレビなどでも紹介され、一躍ヒット商品になったものはいろいろある。私もその商品情報に乗じてよく考えもせずに買っていた時期がある。スヴェルトに限らず「だまされたと思って買って試してごらん」と先輩に言われて本当に騙されたと思ったことはゼロではないがたいてい騙されてでも買ってよかった!!と思うことが多い。それだけCAは“小市民バイヤー”的存在だったのだと思う。今なら立派にバイヤーという職業の方々が活躍しているし、ネットで情報は簡単に得られるし、個人輸入もできなくはない。

さて、スヴェルトの話に戻る。

スヴェルトがはやっていたころ、そして入手困難だったころ、CAの間ではどの都市のどの店ではいくらで何本買えるらしいという情報が飛び交っていた。あくまでも噂レベルで。それに乗じて私も買ったことがある。当時もそんなに痩せたいと思っていたわけではない。そんなに簡単に痩せるはずない。でもより美しくなりたいとはいつも思う。だから、あんなよくわからないクリームを買ってしまった。

友人に頼まれて複数個買って、自分が使ったことないというのはなんか恥ずかしい気がしたのだ。今思えばそこに手間賃上乗せして商売すればよかったのか。そんな商魂は皆無だった。

さて、スヴェルトの効果であるが、私はこう思う。スヴェルトを塗るにはお風呂あがり、水分をよく拭いたら裸の状態で塗る必要がある。そのために鏡の前に自分の姿をさらすことになる。誰が見ていなくても自分の身体を自分で凝視する。その現実をうけいれたくなくてありのままの自分が少しでも良くなるように、あの薬草臭いクリームを塗る。その一連の行為に意味があったのではないだろうか?全く非科学的、非医学的だとは思う。でもありのままの自分の裸体を受け入れるには自分が哀れになるからせめてスヴェルトを塗る時間空間を持つことで、未来のより美しいワタシを想像することに効果があったのではないだろうか?

しかも、外国の化粧品にありがちなのだが、スヴェルト、最後まで使いきれないのである。逆さにおいてなんとか出しやすくしたり、温めてみたりと苦心するのだが終わりが分からない。結局よくわからないまま容器を捨てる。海外のブランド化粧品というだけでいったい原価はいくらだったんだろう。

スヴェルト・・・今いずこ。

To be continued・・・



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