今更の映画鑑賞4「オデッセイ」
主人公と一緒に成功体験を積み重ねる映画。
■ビジュアルについて
火星を題材にした作品なので、やっぱり気になるのは火星の描き方。うーん。見事に何も無い。ただ、背景に必ずと言っていいほど岩山が入っているので、かなりお金をかけて作ってあるなと感じます。それに、NASAの公開している写真撮比べてみると、確かにこんな感じっていう納得感はあります。
良いなと思ったポイントは、地球の描き方。とにかく、人とモノが多い。
人間の生活圏がほんとそれらしく写っているものだから、誰もいない火星の様子がより鮮明になっていい感じです。
ビジュアル面でのお気に入りポイントは、宇宙関連の施設や装備の見た目がのっぺりしてないところ。他作品だと白ばかりで地味な感じにされがちなんだけど、本作ではそうなってない。意味のあるところ(意味ありげなところに)赤とか黄色が使われていて、それがワンポイントとして映えるし、ディテールアップに大きく寄与しているわけです。戦闘機に書いてある「CAUTION」とか「WARNING」とか、赤や黄色の三角形のマークにグッと来る人には、わかってもらえるんじゃないかと。
火星での作業用スーツも、そのディテールの細かさと色使い含めてgoodです。宇宙服みたいにがっちりって感じでもなく、上手い具合に動きを阻害しない塩梅と言いますか、実際に惑星有人探査のミッションがあれば、こんなの使いそうだなっていう妙な納得感があります。
■科学の扱い方
多くのSF作品における科学の役割といえば、物語に説得力を与えたり、リアリティを演出することでした。ちょっと棘のある言い方をすると、ファンタジーを補完するための方便とでも言いましょうか。要は、凝った設定を作るための道具として、科学が機能している印象がありました。
本作で一番嬉しいのは、課題を解決する道具としての科学があること。
ファンタジーに従属しない科学は、いきいきとして、すごく楽しげに見えます。大きな問題を前に、ブレイクダウンして、発想して、道筋を立てて、実践するっていう、課題解決のプロセスがしっかり描かれているのも良い。水を作るときの爆発みたいに、紙の上(理論上)では上手くできそうでも、実際にやってみると見落としがあって失敗するっていうのも凄くリアルです(実験系の研究室にいた人ならわかってもらえると思う)。科学考証の正誤なんて関係なく、この映画は科学をやってます。だから、本当に面白い。
時折失敗しながらも、少しずつ積み上げて目標を達成する、そんな主人公と達成感を共有できる映画でした。
■蛇足
同時期のインターステラーが、「文明の到達点のさらに先にある答えをもらって、人類種を存続させる話」であるなら、本作は、「人類の積み上げた知恵・知識・技術を結集して、一人の人を救う話」とも言えるでしょう。狙ったのかどうかわかりませんが、対比みたいになっていて少し面白いですね。
多くの人たちが積み上げてきたものの"力"を信じたい私からすると、本作オデッセイのほうが好みです。(インターステラーもいい映画ですよ。)