日本遺産 中芸ゆずと森林鉄道ガイド会/清岡荘司さん、岩佐戸津さん
2024年5月31日&6月7日放送
今回のお客様は「日本遺産中芸ゆずと森林鉄道ガイド会」の会長・清岡荘司さんと、事務局担当・岩佐戸津さんです!
高知県では唯一単独で日本遺産認定を受けた【中芸ゆずと森林鉄道】をご存知でしょうか?「その昔、中芸地域に魚梁瀬森林鉄道があったと聞いたことはあるけど、日本遺産って何?」という方が多いかもしれません。そんな方に是非知っていただきたい話をたくさん伺いました。地域の生活に密着していた「森林鉄道」(りんてつ)の姿に想いを馳せてみてください✨
▶ 森林鉄道の想い出!
豆腐屋の次男として馬路村に生まれた清岡さん。小学生の頃は野山を駆けずり回り、中学生になると野球一筋という生活を送ります。幼少期には木材の運搬に利用された【魚梁瀬森林鉄道】(1907年開始~1963年廃止)にも乗車したようですが、物心つく前のことであまり覚えていないそうです。
高校卒業後は水力発電所の建設・保守などを行う「電源開発株式会社」で40年余りにわたって勤務。北川村「二又発電所」を皮切りにほぼ2年ごとに転勤を繰り返し、四国を中心に約20回の転勤を経験しました。
会社を退職したあと、2017年に【中芸ゆずと森林鉄道】が日本遺産に認定されます。高知県では唯一単独で日本遺産認定を受けたことを誇らしく感じた清岡さんは、これを多くの人に知ってもらいたいとの思いからガイド会を設立!高知県内各地でガイド会に携わっている「NPO高知文化財研究所」の溝渕博彦さんを講師に迎えて講習会を開催し、これまで3度行った「ガイド養成講座」を経て現在19名のガイドが登録しています。
▶ 魚梁瀬森林鉄道とは?
スギの名木として名高い《魚梁瀬杉》を運搬することを目的に開業した「魚梁瀬森林鉄道」は1907年、馬路村から田野町貯木場までの約21kmに線路が敷設されました。これは「津軽森林鉄道」「木曽森林鉄道」に次ぐ国内3番目の開業でした。
当初はトロッコに直径1~2mの木材を3~4本載せて人力で下流まで運んでいたそうですが、これでは本数を運ぶには効率が悪いため、蒸気機関車が導入され、木材を載せたトロッコを数台繋ぐことができるようになりました。その後はディーゼル機関車、ガソリン機関車へと代わっていき、1936年には客車も繋がるようになって、これにより人々の移動も楽になると共に、生活物資が楽に手に入るようになりました。まさに地域の生活に密着し、地域の足となったわけですね。
一方で、年を追うごとに本線・支線が延伸。1942年には馬路村、安田町、田野町、奈半利町、北川村の中芸5町村をループする本線が約80km、山から本線まで木材を運ぶ支線が220km以上、総距離では300km以上にも及ぶ国内屈指の「りんてつ網」が完成しました。中芸地域の林業の隆盛を語るうえで、魚梁瀬森林鉄道は欠かすことのできない大切な存在なのです。
▶ りんてつの遺構を巡ろう!
魚梁瀬ダムの建設や、トラックなど新たな輸送手段の登場などによって、1963年に全面廃止となった「魚梁瀬森林鉄道」ですが、中芸地域には今尚、りんてつの面影が残っています。現在、りんてつの遺構は安田川沿いや奈半利川沿いに合計18カ所あります。
■ 隧道(トンネル)6カ所
■ 鉄橋などの橋8カ所
■ 桟道(崖などに沿って張り出した道)2カ所
■ 跨線橋(線路を跨ぐ橋)2カ所
これらの遺構のどれを見ても当時の技術力の高さに驚くと共に、りんてつが走っていた頃の繁栄を感じることができると思います。また山に分け入ると、当時の支線跡があちこちにあり、錆びたレールや枕木、場所によっては手動で切り替えするポイントを見ることもできます。
▶ りんてつの跡地がゆず畑に!
りんてつでが廃止になって以降、中芸地域では林業からゆず産業へと移行していきます。北川村では中岡慎太郎の影響もあって以前からゆず栽培に取り組んでいましたが、それ以外の地域ではなかなか苦労したそうです。
例えば馬路村では、りんてつが廃止になる以前から何軒かの農家がゆずを栽培しており、農協がこれに目をつけてゆずの栽培を奨励、今では一大事業になりました。他の地域もこれと同様で、りんてつが廃止になってからその周囲にゆず畑を作り、また或るところでは田んぼをゆず畑にしたり、山の斜面にもゆずを植えました。
このように、かつて魚梁瀬森林鉄道が走っていたルートは、今ではゆずの剪定や収穫に向かう軽トラック、またゆずの加工商品を運ぶトラックが走る「ゆずロード」になっています。中芸地域におけるゆずの栽培は、りんてつ無しには語れないのです。
【日本遺産】とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するもの。「魚梁瀬森林鉄道」と「ゆず」を巡る壮大な歴史ストーリーに想いを馳せてみてください♪
▶ おすすめモデルコース!
「日本遺産中芸ゆずと森林鉄道ガイド会」では、おすすめのモデルコースを9つ用意して皆様をご案内しています。この時間はガイド会の事務局担当で「中芸のゆずと森林鉄道日本遺産協議会」の岩佐戸津さんにもお入りいただいて、モデルコースについて教えていただきました。
《 清岡さんおすすめコース 》
■ ③魚梁瀬森林鉄道跡とゆずロードを訪ねて(一周編)
〔所要時間/約7時間、昼食付〕
馬路村、安田町、田野町、奈半利町、北川村をループする本線約80kmを、ぐるりと一周するコース。明神口橋、オオムカエ隧道、五味隧道、犬吠橋、二股橋、立岡二号桟道など、森林鉄道の遺構をたっぷりと堪能できます。
途中で「ゆずの森工場」も訪れるので、もしかしたら【ごっくん馬路村】が飲めるかも?中芸地区を満喫してください!
《 岩佐戸さんおすすめコース 》
■ ⑤Eバイクで行こう!魚梁瀬森林鉄道跡とゆずロード
〔所要時間/約5時間、昼食付〕
エヤ隧道、バンダ島隧道、オオムカエ隧道、明神口橋などを、Eバイク(電動自転車)で周る爽快なコース。勾配も比較的緩やかなので、お子様からご高齢の方まで楽しんでいただけます。もちろんガイドの方もEバイクで同行してくれますので、いろいろ教えてもらいましょう!
おすすめモデルコースを作るうえで、ガイド会の皆さんがこだわったのが昼食です。(注意:半日コースの⑦⑧⑨は昼食は付いていません)
せっかく中芸地域に来ていただいたのだから、地のもの・旬のものを召し上がっていただきたい!という思いで美味しいものをご用意しました。
メニューは季節によって異なりますが、馬路温泉のアメゴや、安田川・奈半利川のアユ、冬には安田町特産の自然薯など、中芸ならでは自慢のお料理でお迎えいたします。ぜひお楽しみに!
そのほか気軽に参加したい方には、土佐くろしお鉄道・ごめんなはり線の安田駅、田野駅、奈半利駅それぞれからスタートできる、所要時間2~3時間のまち歩きコースもありますし、鉄道好きな方には「魚梁瀬丸山公園」がおすすめです。こちらでは森林鉄道の機関車を復元していて、実物が見られるだけでなく、乗車したり、運転も出来ます。公園内には約400mの軌道がありますので、是非この車両にもご乗車ください。
▶ 森林鉄道の記憶を語り継ぐ!
「日本遺産中芸ゆずと森林鉄道ガイド会」では《ゆずとりんてつ》を多くの皆さんに知っていただくために様々な活動をしています。
■ 中芸地域の方々を対象にした無料ガイド
■ 地元の小中学生を対象にした教宣活動
■ 県内外の旅行会社等へのPR
■ 県内外のガイド団体との交流・研修会
■ 秋に開催する「ゆずFeS」等への参加
「中芸ゆずと森林鉄道日本遺産協議会」では、子どもたちにも分かりやすいようにマンガで綴った小冊子も配布しました。自分たちの地元に日本遺産があることを誇りに思ってもらいたいですね。
またもう一つ!ガイド会の重要なミッションが新たなガイドの育成です。
これまでは座学を中心としたガイド養成講座を実施してきましたが、今年は《ゆずとりんてつ》のストーリーを語るうえで欠かせない構成文化財を現地散策で学ぶ、新しいスタイルの養成講座を開催します。
全5回の講座のうち5回目を含む4回を受講していただいた方には修了証をお渡しいたします。歴史や文化に興味のある方、ガイドをしてみたい方のご参加をお待ちしております!
■ 令和6年度日本遺産ガイド養成講座
【主 催】中芸のゆずと森林鉄道日本遺産協議会
【開催日】6~10月 月一回土曜日 ※全5回
【受講料】無料
【講 師】溝渕博彦氏(高知文化財研究所代表)
【問合せ】☎ 0887-30-1865
▶ 最後に!
6月に入り、これからは梅雨を挟んで本格的な夏へと向かっていきます。清岡さんに中芸地域の夏の楽しみ方を教えていただきました。
最後に清岡さんの今後の夢を伺いました。
■ 高知県では唯一単独の日本遺産を知っていただくこと!
現時点では決して知名度が高いとは言えない日本遺産ですが、森林鉄道と中芸のゆずを巡るストーリーを地道に広報していくことで、日本遺産そのものを理解していただき、特に地元にお住まいの方々には中芸地域に日本遺産があることを誇りを持ってもらえるようにしていきたい。また日本遺産の基本は「魚梁瀬森林鉄道」の遺構なので、現地を訪れ、現物を見て、触って、遺構の素晴らしさを知っていただきたいと語っていただきました。
清岡会長をはじめとするガイド会の皆さんによるチャレンジはこれからも続いていきます。皆様も是非この夏、中芸地域を訪れ「日本遺産中芸ゆずと森林鉄道」の奥深いストーリーに触れてみてください♪