この世界には、私とあなたの2人だけ
「この世界には私とあなたの2人だけ」
漆黒の薔薇で埋め尽くされた部屋で、向かい合う2人の男女。青年は娘に、かつて彼女が愛用していた刀を握らせて命じる。
「死んでください」
「はい!ご主人様♪」
娘は可愛らしく満面の笑みを浮かべると、躊躇う事なく刀を首に当て下に引く。しかし皮膚が裂かれる寸前で、青年が刀を弾き飛ばして止める。広い部屋のどこかに、刺さった音がした。
娘の方はと言うと、全く動じる様子もなく、行き場のなくした両手を身体の前で重ねた。笑顔のまま、青年の瞳をまっすぐ見つめている。
「ふふ、冗談ですよ。貴女がどこまで出来るか試しました。きちんと命令を聞けていい子ですね。クレスティア」
クレスティアと呼ばれた娘はスカートをつまみ、腰を少し落として「お褒めに預かり光栄です♪」そう、主人に敬意を示した。
「貴女は本当に可愛らしい人だ。ご褒美に、今日はたっぷり可愛がってあげますよ」
きゃあ♪と喜ぶクレスティアを軽々と抱き上げ、ソファーへ移動する。向かい合うように彼女を膝に乗せて、首元のリボンを解き、フリルブラウスのボタンを外していく。
そうして露になった首筋に、唇を密着させ吸い上げると、白い肌に薄紅色の花びらが残る。男は一箇所では足りないと、服を脱がしながら一つまた一つと、いくつもの愛と欲の証を咲かせていく。
されるがまま、熱い吐息と嬌声を漏らすクレスティアの耳に、青年は甘く囁いた。
「ああ…やっと俺の世界に堕ちてきてくれましたね。愛していますよ。クレスティア」
俺の事だけ見て、俺の声だけ聞いて、俺の事だけ感じて、俺の事だけ考えて、俺の事だけ愛してくれる。そんな唯一無二の従順なお人形が漸く完成した。
とろりと血のように紅い瞳を細め、青年は満足気に微笑むのだった。
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